ドイツ フライブルクの旅⑦
20年以上前から続くドイツの高性能住宅作りの取り組みを紹介します!
前回のドイツフライブルクの旅⑥遂にヴォーバン住宅地に到着!では、
ウェルネストホームの原点ともいえる「ヴォーバン住宅地」を視察し、環境意識への高さがうかがえる持続可能な取り組みをご紹介しました。
第7回となる今回は、1997年に建てられた高性能住宅の機能や、ソーラー住宅・オフィスに見られる工夫などをご紹介します。
エネルギーの自給率を高める取り組み
高性能賃貸住宅の仕組みと電気代
ウェルネストホーム一行は、前回の記事でご紹介した、1997年に建てられたパッシブハウスレベルの賃貸住宅の地下にやってまいりました。
この建物は20戸の集合住宅で、うち4戸にオフィスが入っています。
地下室には、業務用の換気システムが設置されています。
このシステムは、1000W(1kW)の消費電力に対し、10倍(10kW)もの熱回収ができるんだそうで、とても効率がいいですね。
この換気システムの仕組みは、ウェルネストホームが標準採用している、熱交換型の換気システム、ヴェントサンと同じ仕組みです。
平均的に、住宅では1年で1平米あたり30kWhの熱が必要となるそうですが、この地下にあるシステムだけでその半分に相当する熱が回収できるというから驚きですよね。
残りの半分は日射取得や生活によって出る排熱で十分にまかなえる状況となっています。
ドイツは冬が長く、全館全室に暖房が設置されているのが基本です。地下室に設置されている2000リットル容量の巨大な太陽熱温水器と、コージェネレーションシステム(以下、コジェネ)という機械で発電し、熱を供給しています。
コジェネは天然ガスを使ってエンジンを動かし、7.5kWhの電気を生み出し、23kWhの熱になるそう。これらの仕組みで、給湯と暖房をまかなっているんです。そして電気が余った時には売電しています。
以前この住宅に家族と暮らしていたエネルギーエンジニアのビゼリさんによると、大人2人、子供2人の4人暮らしで、1年あたりの高熱費は250ユーロ程度だったそうです。
取材時のユーロ価格を日本円に換算すると、3万〜3万7500円程度。日本と比べて、電気代が格段に安いのが分かります。賃貸住宅の設備を整えれば、ここまで料金を抑えられるんですね。
屋根と住宅で所有者が違う住宅
続いては、ヴォーバン住宅地の中でもソーラー住宅が建ち並ぶエリアにやってまいりました。
こちらの住宅は、1998年に建てられたものです。
屋根には太陽光パネルが設置されていて、屋根の下にはパワーコンディショナーという、太陽光パネルで発電した電力を家庭で使用できる電力に変換する装置が取り付けられています。
実はこの周辺の住宅は、屋根と住宅の所有者が違う場合が多いんだそうです。
というのも、建てられた当時は太陽光パネルが非常に高価だったため、市民が資金を出し合って組合で太陽光パネルを購入・所有し、買電の収入を分けていたからです。
こういった市民の一人ひとりの意識が高いところにも、日本との違いを感じます。
ドイツでは一般的に、住宅に地下室を作ります。しかし、2000年前後は、費用を抑えるために地下室の代わりに家の外に小屋を建てる住宅が流行しました。小屋と言っても、どの小屋のファザードもしっかり断熱設計となっている点はさすがです。
当時のフライブルグは、1平米8ユーロ程度。現在は人気が上がり、現在は1平米12〜13ユーロ程度で取り引きされています。20年前と比べて、価値が倍に上がっているんですね。
工夫の詰まったソーラーオフィス
こちらはソーラーオフィスです。屋根にはもちろん大きな太陽光パネルが取り付けられています。
外付けブラインドの形状をご覧ください。ブラインドの上部と下部で形状が異なっていて、上部からは日光が入るものの、直射しないように設計されています。
緑色や黄色などのカラフルなパネルが見えますが、その裏にも、工夫が施されているんです。
夏、日中は35℃を超えることもあるフライブルクですが、屋外に多くの緑があるおかげで、日が暮れると気温が大幅に下がります。このパネルは、その涼しい外気を取り入れることができる機構になっています。
職員が退館する際に、パネルの内側の窓を開けて帰ると、パネルの穴から外気を室内へ取り入れることができます。ただ窓を開けるだけでは防犯上心配ですが、これなら安心ですね。
翌朝にはオフィスに涼しい空気が取り入れられているので、エアコンの使用を抑えることができるのです。
まとめ
ヴォーバンの住宅やオフィスを視察して、多くの人で賑わうフライブルク中心部へと戻ってきました。
日本もいつかこのフライブルクのような街になるよう、ウェルネストホームは持続可能な社会の実現に向けた取り組みを続けてまいります!
今回の記事の内容は、こちらの動画からもご覧いただけます。
次回の「ドイツ フライブルクの旅」はドイツ視察最終日の様子と、視察後に行った対談の内容をお届けします。対談では、環境ジャーナリストの村上敦さん、株式会社ラクジュの本橋哲幸さん、早田の3人が、フライブルクでの視察を通して感じたこと、見えてきた日本の現状などについて語り合いました。ぜひご覧ください。