家づくりを考え始めたとき、多くの方がまず気にするのは建築費です。一生に一度の大きな買い物ですから「なるべく安く抑えたい」という気持ちは当然といえます。
しかし、住宅は建てた瞬間がゴールではありません。建築費という「イニシャルコスト」だけでなく、住んでからかかり続けるお金「ランニングコスト」にも目を向けることが、家づくりを考えるうえで重要な視点なのです。

このイニシャルコストとランニングコストを合わせた総額を、住宅分野では「ライフサイクルコスト」と呼びます。
家の経済性を考える際には、建築時の金額だけでなく、住み続ける期間全体でどれくらいの費用がかかるのかを把握することが大切です。
住宅のランニングコスト
家を建てた後は、光熱費や設備の更新、修繕費など、生活するうえで必要な費用が発生します。
一つひとつは小さな金額に見えても、30年、40年という長期で見ると、その合計は決して小さくありません。
例えば、月々の光熱費が5,000円違うだけでも、1年で60,000円。30年では1,800,000円もの差が出ることになるのです。
「光熱費」は、住まい手の暮らし方や、使用している設備よっても異なりますが、住宅の断熱性能に大きく左右されます。
光熱費と住宅の断熱性能
断熱性能が低い住宅は、外気温の影響を受けやすくなります。室内の温度を快適に保つために冷暖房機器をフル稼働させることとなり、その結果エネルギーをたくさん消費し光熱費が高くなる傾向にあります。
反対に、断熱性能が高い住宅では、外気温の影響を受けにくくなります。外気温が暑かろうが寒かろうが、室内には影響しにくいため、冷暖房に消費するエネルギーが少なく済み、光熱費を抑えることができます。
住宅の断熱性能を知る指標のひとつが、断熱等級です。
断熱等級とは、住宅の断熱性能を示す国の基準で、屋根・壁・床・窓など建物全体からどれだけ熱が逃げやすいかを、UA値(外皮平均熱貫流率)という数値で評価し、その水準に応じて等級が定められています。
UA値は、数値が小さいほど熱が逃げにくい、つまり断熱性能が高いことを表します。断熱等級が高いほど、冷暖房に頼りすぎない暮らしにつながり、結果的に光熱費が抑えられるということです。

等級7相当の住宅は、等級4相当に比べて、暖房エネルギーを40〜55%削減できるとされ、 電気代も抑えられると推定されています。(参考:一般社団法人20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会「省エネルギーとG1~G3」)
そうなると、最高等級である「等級7」を選びたいところですが、等級が上がれば上がるほどイニシャルコストは高くなるので、「イニシャルコスト」と「ランニングコスト」をどう考えるかがポイントになります。
上昇傾向が続く光熱費
近年、電気やガスといったエネルギー価格は、世界情勢や社会構造の影響を大きく受け、上昇傾向が続いています。
電気料金平均単価の推移

2022年度の電気料金の平均単価は、家庭用で34円/kWh。2010年度比で約59%上昇しています。この単価差を月に800 kWh使用した場合で換算すると、月約10,000円、年間約120,000円、12年間で約1,400,000円上昇したことになるのです。
2023年1月からは、エネルギー価格高騰に対応するための時限的な措置として、日本政府による光熱費(電気・ガス料金)補助が断続的に実施されてきました。
今後も政府による補助が続くとは限らず、さまざまなコストが値上がりしている状況では、光熱費が下がる要素は今のところ見当たりません。だからこそ、エネルギー価格の変動に左右されにくい住まい方を考えることが現実的と言えるでしょう。
修繕費にも影響する住宅性能
住宅性能の違いは、光熱費だけでなく修繕費にも影響します。
断熱性や気密性が低い住宅では、室内外の温度差によって結露が発生しやすくなります。結露はカビを発生させ、建材の劣化を引き起こす原因となり得るのです。
性能が高く、丈夫で長持ちする住宅は、修繕にかかる費用も抑えやすくなります。
まとめ
住宅の経済性は、建築費だけで判断できるものではありません。
「初期費用が高く見える住宅でも、光熱費や修繕費を含めた生涯コストで考えると、結果的に負担が抑えられる」というのがウェルネストホームのライフサイクルコスト(LCC)の考え方です。

性能にどれだけこだわるかは、家族構成や価値観によって異なるでしょう。
しかし、「住んでから何にどれだけお金がかかるのか」という視点を持つことは、家づくりにおいて、重要な判断材料のひとつではないでしょうか。







