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ドイツフライブルクの旅④ フライブルクの森林業について学ぶ(後編)

ドイツフライブルクの旅④ フライブルクの森林業について学ぶ(後編)

前回のドイツフライブルクの旅③フライブルクの森林業について学ぶ(前編)では、ウェルネストホーム一行が、フライブルクの森を視察しながら森林・環境コンサルタントの池田憲昭さんに学んだ内容と、池田さんと早田の対談をお伝えしました。

第4弾となる今回は、前回に引き続き、池田さんと早田の対談をお届けします。
「林道の整備」というひとつのキーワードを軸に、森林の持続可能な活用について語り合いました。

池田憲昭さん
2002年にフライブルク大学大学森林環境学部を修了。ドイツ在住25年以上。森林・環境コンサルタント、日独通訳・翻訳家、文筆家として幅広く活動。

日本の豊かな森林が活用しきれていない理由とは

日本は、国土面積の約7割が森林という、世界有数の森林大国です。しかし、その豊かな森林を持続可能に利用できていないという現実があります。それはなぜなのでしょうか。

日本が有する豊かで広大な森林

早田 ウェルネストホームにとって、木は重要な構造材です。しかしながら、日本では木材の約6割が海外から輸入されています※1。日本にはこれだけ森林がありながら、国産材で賄われていないのは悲しいですね。

池田 日本は国土の約7割が森林です。森林の面積はドイツの約2.5倍あり、成長量も非常に高く、蓄積もあります。だから、理論的には日本の森だけで、日本国内の木材需要は十分に賄えるはず。成長量の範囲内で森から原木をとっていく、という持続可能な利用ができるはずなんです。

※1 令和4年木材自給率は40.7%、うち、建築用材等の自給率は49.5%(林野庁企画課:令和4年(2022年)木材需給表より。)

日本の森林活用に必要なものは

早田 ちょっと日本に不足していると思うのは林道の整備

池田 そう。計画的に原木を利用していくために一番必要なのは、しっかりとしたインフラです。
鉄道で例えると「新幹線」。「幹線」つまり「主要な道筋となる線」の前に「新」がついて「新幹線」。いいネーミングですよね。新幹線のように、性能のよいインフラがあれば、さまざまなことができます。

早田 森林業における「幹線」、つまり林道が、ドイツと日本では違いが大きなと思うんです。でも、実際に日本でもいくつかよい事例が出てきてますよね。2010年が北海道の鶴居村で、その後、岐阜の高山でしたね。

日本における林道整備の事例

ドイツに比べると、まだまだ整備が進んでいない日本の林道。そんな中でも、池田さんが携わり、林道の整備に成功したエリアがありました。

2010年 北海道 鶴居町

池田 2010年、「森林・林業再生プラン実践事業」の中で、ドイツの森林官やオーストリアの森林官らの助言の下、ドイツをモデルとした林道を北海道鶴居町につくりました。

日本では、林道の費用が非常に高いとか、つくっても壊れるというようなことが過去にありました。私たちが提案した林道の費用は、1mあたり15,000円~20,000円くらいです。日本の林道規格では構造物を入れたり、コンクリートをたくさん使ったりとかするから、50,000円~100,000円くらいに跳ね上がってしまいます。 別の方法で、しかもしっかりと水を制御する道づくりのやり方があるんです。

2012年 岐阜 飛騨高山

池田 鶴居町と同様に、2012年に岐阜の高山にも林道をつくりました。

早田 昨日はけっこう雨が降りましたけど、今日は靴がドロドロになることなく歩けますね。日本には急峻な崖が多いからこうした林道はできない、と言われることもあるけど、高山だって十分急峻ですよね。それでもできてます。

池田 しかも高山の降水量はドイツの2倍ありますし、1週間で400ミリの集中豪雨もあるところです。ゲリラ豪雨にも過去10年間で4回ほど遭っていますが全くの無傷。ほかの道は壊れているところもありますが、そこだけは無傷なんです。

インフラ整備のメリットとは

過大なコストをかけずとも、雨水を迅速に排水できる丈夫な林道が整備されれば、日本の豊かな森林はもっと有効に活用できるのではないでしょうか。

実は、林業の労災保険料率は非常に高く、厚生労働省が発表する労災保険料率を見ると、林業は60という数字なっています。これは、産業の中でも非常に高い数値で、林業が危険を伴うリスクが大きい産業であることを現しており、安全な作業環境が切望されているのです。

池田 森林作業というのは、労災保険料率が高いことからも、非常に危ない作業だとわかります。死亡事故率も建設業の3倍あるんです。危ない作業だからこそ、しっかりとした道、作業できる平らな場所があること、そうした安全な作業場が確保されることが必要なのです。
森林に安全な美しい道があれば、市民も森林に入ってきますよ。市民が森林に入ってこないのは、道が壊れてるとか壊れそうな道がいっぱいあって危ないから。だから安全で快適な道があって、サンダルでも歩けるような森林であれば、森林業にとっても、市民のレクリエーションにとってもメリットになります。また、それによって森が適切に管理され、森の国土保全機能も維持されて、どんどん向上していくでしょう。

次の世代に期待すること

早田 森が適切に管理されるようになれば、素敵なことがいっぱいあるんですよね。
今、日本では土砂崩れや山崩れが増えて、川の水は雨が降ったら濁るようなひどい状態です。日本の若い方に言いたいのは、「ホワイトカラーの仕事ばかりが社会の役に立つ仕事ではない」ということ。森に踏み込んで勉強してくれる若い人が増えるとうれしいですけどね。

池田 日本でもその勉強はできますが、ドイツの大学で勉強するというオプションもあります。ドイツでは、教育は国が負担するものという考えで、外国人に対してもほとんど学費を取っていません。だから僕はドイツ人の税金で勉強して、たまたまドイツに残って働き、ドイツに税金を納めているので、十分返したと思いますが(笑)。でも、自分が生まれた国、日本に対してもドイツで学んだことを生かしていけたらいいなと思っています。

早田 これからは若い人たちもフライブルクに来て、池田さんのレクチャーを受けてもらってね。

池田 森のことは、やっぱり森の中で話すのが一番いいし、理解するんですよね。今いろんな技術があるから、映像を見せながらという方法もありますが、森の中とは雰囲気も全然違いますし、五感を使って体験しながら交流もできますし、森の中で話すとみんな明るくなるんです。ふだん会議室で寝てる人でも。

早田 私たちウェルネストホームも引き続き頑張って、国産材100%でできるだけやろうとしているんです。ヨーロッパでせっかく学んだことを、日本でできることは積極的にやろうと思っています。これからはぜひ若者にもっともっとドイツに来てもらって、池田さんや現地の生の声を聞いて、日本が少しでもいい社会になれるよう力を貸してほしいと思っています。

まとめ

日本とドイツの森林業の違いは、林道にもあったのですね。持続可能な林業の実現と、人が集まる安全な森林にするためには、インフラ整備が必要だとわかりました。池田さんのお話を伺って、私たちが森にできることは何かを考えさせられました。

今回の記事の内容は、こちらの動画からもご覧いただけます。

次回は、フライブルクの古い建物や街区の様子をご紹介します。ぜひご覧ください。

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