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【新築予定の方必見】太陽光発電の義務化はむしろチャンスです【プロが徹底解説】

【新築予定の方必見】太陽光発電の義務化はむしろチャンスです【プロが徹底解説】

ここ数年でよく聞かれるようになった『省エネ住宅』や『高機能住宅』という言葉。 これから住宅を新築しようと考えている方には、とても興味深い言葉ですよね。

省エネや高機能な住宅はどのようにして実現できるのでしょうか。 代表的なものとして知られているのが『太陽光発電』。住宅の屋根などに発電用のパネルを置いている住宅は年々増加しています。

この太陽光発電が義務化されるかもしれないというニュースが飛び込んできました。

一方で太陽光発電といえば、家庭で作った電力を売る際の価格(売電価格)が年々下がっています。

「太陽光発電が義務化になったら、家を建てる際に高額な設備費用がかかるのではないか・・・。」 「採算が取れず、結果的に損してしまうのではないか・・・」 と感じている方もいらっしゃると思います。

しかし、実際それは大きな誤解です!

実は、売電価格が下がる一方、太陽光発電の経済合理性は年々高まっています。

本日は太陽光発電のメリットを詳細にお伝えしつつ、なかなか普及しない理由も解説します。

みなさんの誤解を解くためにも、かなり詳しく、そして具体的なシュミレーションを示しながらお伝えします。

また、家を建築する前に知っておきたい、月々のランニングコストを抑える方法もご紹介します。

太陽光発電の義務化については、私のYoutubeチャンネル「高性能な家づくりチャンネル」でもご紹介しておりますので、そちらも併せてご覧いただけると幸いです。

『住宅ストックエネルギー』の削減目標が一気に引き上げ!

初めに「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」という重要な国の審議会での、前真之(まえ・まさゆき)東京大学大学院准教授が太陽光発電の義務化について言及した部分をご紹介します。

 

前准教授は「太陽光発電が採用されないのは、誤解と説明不足が大きな原因と推測される。国民の生活を守るためにも、太陽光発電の設置や※ZEHの早期適合義務化が望ましい」と話しています。

※ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス=高い断熱性能や太陽光発電などによって創られるエネルギー(創エネ)を組み合わせて、年間一次エネルギー消費量をおおむねゼロにした家(使うエネルギー≦創るエネルギー)。消費を減らし創る分を増やすことで、創るエネルギーが消費エネルギーを上回ることを目指した住宅のこと。

菅政権が掲げた「カーボンニュートラル政策」

現在の政府が温暖化対策として新たに掲げたのが、2050年までのカーボンニュートラル政策です。

これは2050年までに現在の温室効果ガスの排出量をゼロにし、脱炭素社会の実現を目指すことです。

その一環として、国土交通省が住宅政策を展開する上で基盤となる「住生活基本法」が閣議決定され、その中に「ZEH」という言葉や、成果指標では「※住宅ストックエネルギー消費量の削減量」が明記されたことは、新たな住環境を進めるうえで画期的な出来事です。

 

※国交省の資料より ・住宅ストックのエネルギー消費量の削減率(平成25年度比)※3%(平成30)→18%(令和12) ※この指標は地球温暖化対策計画(平成28年5月13日閣議決定)における目標に基づき設定したものであり、地球温暖化対策計画に変更があった場合には、この目標も同様に変更されたものとみなす。なお、2050年カーボンニュートラルの実現目標からのバックキャスティングの感が方に基づき、地球温暖化対策計画及びエネルギー基本計画の見直しにあわせて、規制措置の強化やZEHの普及拡大、既存ストック対策の充実等対策の強化に関するロードマップを策定する。その検討を踏まえて住宅ストックにおける省エネルギー基準適合割合及びZEHの提供割合の目標を地球温暖化対策計画及びエネルギー基本計画に反映し、これらは住生活基本計画の成果指標に追加されたものとみなす。

※住宅ストックエネルギー消費量=既存の住宅で消費される、電気やガスなどのエネルギー量。高性能な住宅などにより、年々削減傾向にあります。

この住宅ストックエネルギー消費量について、平成25年から30年までの5年間で削減できた量はたったの3%でした。

ところが今回、菅政権は2030年までに46%もの大幅削減を実現すると表明しました。そこでメインターゲットとなったのが住宅の省エネルギー化です。

このような大きな政策変更がなされたことで、今後は「住宅の省エネルギー性能」向上、およびZEHもしくは太陽光発電の義務化ということが、いよいよ現実味を帯びてきたのです。

ZEHや太陽光発電によるエネルギーの削減が急務に

今回の政府の46%削減という政策変更に対してもっとも省エネ性能を上げ、もしくは温暖化対策に寄与するものがZEHです。 ZEHにするとCO2の排出量をゼロにすることが可能なので、政策を実現するためにも義務化が必要ではないかと考えられます。

その中で重要なポイントが太陽光発電です。しかし現状は、大手ハウスメーカーで約50%、一般の中小工務店になると12軒建てた中の1軒と、導入率が非常に低いのが現実です。

 

太陽光発電の普及がなかなか進まない現状

太陽光発電が普及しない理由には、採算が取れないのではないかなど、経済性に不安を感じている方が多いということが分かっています。

しかし、それこそが最大の誤解です。

実は太陽光発電は非常に経済性が高く、しかも年々それが高まっているのが現状です。そのことがあまり知られていないために、初期投資にかかるコストを気にして、導入をためらうケースが多くなっています。

その理由として『※FIT制度』の本来の目的を勘違いされている方が、あまりにも多すぎるということが考えられます。

※FIT制度=フィードイン・タリフ。固定価格買取制度。自然エネルギーから作った電力の買取価格を法律で定める方式の助成制度。

ZEHや太陽光発電を導入する際の電力の買取価格の考え方

太陽光発電は設備自体が非常に高額で、それこそ採算に合わないという理由から、取り付けるのは太陽光発電に興味のある人や地球温暖化に強い懸念を持つ人、環境意識の非常に高い人などに限定され、なかなか数が増えていきませんでした。

太陽光発電のような再生可能エネルギーの技術自体は将来的に主力電源にしていかなくてはならない、というのは世界共通の認識ですが、一方で、この高額な設備費用をいかにして低価格化して一般の方に買ってもらえるようにするかが、最大の命題となっていました。

そこで2012年に導入されたのがFIT制度です。

FIT制度をしっかりと理解しよう

 

FIT制度の本来の目的は、多くの人が太陽光発電を導入することにより設備のコストダウンを図り、最終的には補助金なども一切なくとも、みなさんが当たり前に購入できる状態にすることです。

さらに、太陽光発電を導入した方が、電力会社から電気を購入するよりも、経済性が高い状態を実現させることです。

《補助金について》

  • 高い時に買った人に出している補助金
  • 補助金の原資は日本全国の方の電気料金に按分したもの
電力の買取価格と設備導入コストの両方が下がる仕組み

【ポイントは3%前後の内部収益率】

 

《FITによる電力の買取価格》 ※10kW未満

  • 2012年 ➡ 42円
  • 2021年 ➡ 19円 45%↓

《設備の初期費用》

  • 2012年 ➡ 43.1万円
  • 2021年 ➡ 27.5万円 36%↓

この2つをくらべると、買取価格の方が下落率は大きく、やはり利回りが悪いのではないかと見えますが、これを細かく見ていくと、逆に経済性が高いことが分かってきます。

シュミレーションしてみよう

 

上記の表は設備の購入コストに維持経費、メンテナンス費用などを含めても、使用期間20年間としておよそ3.2%の内部収益率となる計算を表したものです。

《2012年の場合》 ▲売電価格 42円 ▲設備コスト 50.1万円 内訳 ①設備コスト 43.1万円 ②点検作業費用 2.8万円/回 ③パワーコンディショナー交換費用 20.9万円(5kW) ④②と③をkW単価に置き換えると年間約7万円/kWのメンテナンスコスト ①+④=50.1万円 △10年間=42円で売電 △11年目以降=9円で市場売電 ※売電量は約70% ※30%は自家消費 約19.6万円相当 ▼トータル 60万円強のリターン ➡ 内部収益率3.2% ▼ほぼ130%前後のトータルリターンが得られる設計

このようにFIT制度を活用すると、電力の買取価格も設備のコストも、どちらも年々下がっていき、かつ設備購入者には毎年3.2%の利回りが実現するようになっているのです。

この点から見ても、太陽光発電は買取価格が下がったので、採算があわないのではないかという話は完全な誤解だということがお分かりいただけたかと思います。

賦課金について

現在私たちはどの電力会社から電力を買っても、1kWあたり3.36円プラスされた料金で購入しています。 これがFIT制度によって発生する『賦課金』です。

 

賦課金はこれまで上がり続けてきましたが、今後もしばらくは上昇し6円近くまで達すると考えられます。

 

また2020年では電力の買取価格の総額が約3.8兆円。 その中の他の発電所の燃料代や設備代といった「回避可能費用」を除いた残りの部分が賦課金となり、そこをみんなで負担するということになっています。

上図の左の表を見ていただくと分かる通り、この10年間で劇的に増加した再生可能エネルギーは、ほぼ太陽光発電です。

この賦課金のおかげもあり、太陽光発電の設備費用は40%ほども下がり、今後は国民の負担増加はなくなっていきます。

ですから、みなさんで数十兆円の投資をすることにより、設備費用をここまで下げることができたと言えます。

風力発電の導入を推進する必要性

再生可能エネルギーでは、太陽光発電以外の普及がまだまだ伸びていません。 特に2050年の脱炭素社会を目指すのであれば、現在稼働している風力発電約400万kWの出力を、今後は約7000万kWまで急ピッチで導入する必要があります。

 

直近の電力の買取価格を見ていただくと、下図のようになります。

 

風力発電は太陽光に比べて、買取価格が圧倒的に高いことが分かります。特に洋上風力発電が飛びぬけて高いです。

今後風力発電を大量に導入していくためには、この価格では高すぎます。 ここに大量に作ることでコストダウンを図るFIT制度を活用することで、買取価格も下げていくことが可能になります。

つまり太陽光発電と同様に、今後10年間ほどで風力発電に対して国民全体で投資をして、徐々に設備費用と買取価格両方のコストダウンを実現していく。

自然エネルギー財団では、賦課金が今後どれくらい積みあがっていくかを試算しています。

 

最終的には5兆円ほどまで膨らみ、その後は太陽光発電の分が少なくなってくるので20年で落ちてきます。 やがて風力発電の分も落ちてくるので、2050年頃にはゼロに近づくような計算です。

せっかく今、太陽光発電の導入がうまく進んでいるので、2050年の脱炭素社会を目指すためには、FIT制度を活用して風力発電の導入を推進する必要があると思われます。

自家消費率を上げることが今後の重要課題

負担金(賦課金)が今後しばらくは上昇し続けていくことを考えると、一般家庭ではやはり太陽光発電による『自家消費率』を上げていくことで、その負担を減らすことが重要となります。

太陽光発電から自家消費する分には、賦課金はかからないことになっています。

ですから今後は、太陽光発電の自家消費率をどれだけ高められるかということを考えながら、家づくりを行っていくことが当たり前の社会になるのではないかと考えられます。

エコキュートと太陽光発電との連携について

自家消費率を上げるために、一番簡単な方法をご紹介します。 それは『エコキュートと太陽光の連携機能』です。

例えばコロナ社製の「ソーラーモードプラス」を見てみましょう。

   

エコキュートは本来、深夜電力を使ってお湯を沸かしますが、太陽光発電を利用して昼間にシフトしていく機能です。

コロナ社の製品では最大8割ほどは昼間に移動できるとのことなので、自家消費率は少なく見積もっても10%ほどは向上できる計算になります。

太陽光発電にしたことですでに自家消費率約が30%上昇しているので、エコキュートの10%と足すと、約40%もの自家消費率アップが可能となります。

金額にすると約27.7万円で、結果として138%リターンとなります。

 

おそらく今後は自家消費率が平均15%ほどまでは可能だと考えられますので、年間のリターン率は2021年143%、2022年には146%にまで上がります。

自家消費率が45%を実現できた場合には、2012年に42円で売電している人よりも、117%も経済合理性が高い状態で太陽光発電を設置できるということになります。

月々のランニングコストを抑える方法3選

太陽光発電の経済合理性についてご理解いただけたでしょうか。 次に、家を建築する前に知っておきたい、月々のランニングコストを抑える方法3選をご紹介します。

節電型・節水型の住宅設備を選ぶ

1つ目は「節電型・節水型の住宅設備を選ぶ」です。 ここでいう住宅設備とは、「キッチン、トイレ、お風呂や電化製品」を指します。 先程のエコキュートの話題とも繋がりますが、近年の住宅設備は技術革新により省エネルギーなものが非常に増えています。 欠点として販売価格が高い傾向にありますが、その後のランニングコストを考えると「節電・節水型の住宅設備」を選んだ方が経済的です。

洗濯機を例に挙げて見てみましょう。

 

このようなAとBの洗濯機、どちらを購入しますか? 一見「A:ヒーター式」の価格が12万円と安いので、 「ヒーター式の方が8万円も安い!!ちょっとくらい電気代が高くても大した差はない。」 と感じて「A:ヒーター式」の洗濯機をご購入されるかもしれません。

しかし、6年分の電気代を考慮するとどうなるでしょうか。

驚くべきことに、6年経過した時点で両方の「導入コスト・ランニングコスト」の合計金額が同じになります。 6年間のランニングコストに、8万円もの差が生まれたのです。 加えて、その後はAがBのランニングコストをどんどん上回っていきます。

このように「節電・節水型の住宅設備を選ぶ」ことで、導入のコストはかかるものの、結果的に月々の水道・電気代を抑えることができます。

シンプルな間取りにする

2つ目は「シンプルな間取りにする」です。 なぜシンプルな間取りにすることが、ランニングコストの削減に繋がるのでしょうか。 理由として、「冷暖房効率が良くなる」ことが挙げられます。 これについては、次の「高気密高断熱にする」という節にも繋がります。

複雑な形状だと、外気温の影響を受けやすい傾向にあります。 また、部屋数が多いとその分だけ空調設備が必要になりますし、掃除の手間もかかります。

シンプルな間取りにする」ことで、冷暖房効率が向上し月々の光熱費が抑えることができるのです。

高気密高断熱にする

3つ目は「高気密高断熱にする」です。 高気密高断熱とは、「気密性と断熱性が高い」ということを表します。

 

気密性が高い家は、「家に隙間が少なく、外の空気が入ってきにくい」。 断熱性が高い家は、「夏は熱い空気を入れず冬は暖かい空気を逃さない」。

夏は涼しく、冬は暖かい。 このように、1年中快適な温度や湿度を保つことができるため、冷暖房効率が良くなるのです。

間取りをシンプルに、そして高気密高断熱にすることでさらに効率アップが見込めます。

高気密高断熱については、こちらの記事でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

https://wellnesthome.jp/661/

高気密高断熱にする」ことで、空調や暖房を使いすぎることがなくなり、月々の光熱費を抑えることができるのです。

まとめ

世界の動向とともに、日本国内でも脱炭素社会を目指す動きは年々高まっており、再生可能エネルギーへの転換の必要性は、みなさんも強く認識していると思います。

一方で現在一般家庭でもっともポピュラーな太陽光発電を導入しようと考えたときに、経済合理性から採算が合わないのではないかという懸念を持つ方も多いのが現状です。

しかし今日、私がもっとも言いたかったことは ・太陽光発電の経済合理性は年々高まっている ・太陽光発電は絶対に設置したほうがいい ・FIT制度をきちんと理解すると、とても素晴らしいことが分かる という、この3点です。

現在の社会情勢は、さまざまな課題が先送りされ、将来世代に持ち越していることが多々あるように感じられますが、このFITはその考え方とはまったく逆です。

FIT制度は将来の社会で生きる人たちが楽に暮らすことができるように、今現在のわれわれが少し負担しましょうという考え方です。

そしてFITの成果で単価がどんどん下がり、実際の利回りが年々上昇し、このまま行くと、あと数年でFIT制度が必要ではなくなる、というところまで来ているのが実情です。

さらに現在、FIT制度を活用したことで、太陽光発電を義務化しても問題ないレベルの経済合理性であることを、みなさんにはきちんと理解していただきたいと思います。

また、家を建築する際には、 ・節電型・節水型の住宅設備を選ぶ ・シンプルな間取りにする ・高気密高断熱にする

こちらの3つの方法で、月々のランニングコストを抑えることができます。

みなさまには正しい情報を得てもらい、初期費用だけでなく、月々のランニングコストを見据えた家づくりをしていただきたいと考えております。

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