ドイツ・フライブルク市に誕生した木造8階建て「ブッキンガーストラーゼ52」は何がすごいのか?

ドイツ・フライブルク市に誕生した
木造8階建て「ブッキンガーストラーゼ52」は何がすごいのか?

環境配慮型の木造建築が多いドイツでも、これは珍しいと話題になっている建物があります。それが2021年夏に完成した「ブッキンガーストラーゼ52」という名称の建物。フライブルク市の社会福祉住宅地区、ワインガルテンに建っています。

この「ブッキンガーストラーゼ52」の設計を担当したのがヴァイセンリーダー設計事務所。社長であるヴァイセンリーダー氏にお話を伺いました。

ヴァイセンリーダー設計事務所 社長 ヴァイセンリーダー氏

ヴァイセンリーダー設計事務所
社長 ヴァイセンリーダー氏

「ブッキンガーストラーゼ52」の用途は?

「ブッキンガーストラーゼ52」は、地下1階、地上8階建て。1階にスーパーマーケットが入居し、2階に保育園、3階〜8階が福祉系の賃貸住宅という複合施設です。

立面図(西)

©Weissenrieder Architekten BDA

立面図(南)

©Weissenrieder Architekten BDA

よくある複合施設と思いますよね? 何が珍しいのでしょうか。
それは、なんと構造が、R C+木造混構造になっているという点です。
1階と地下がRC造で、2階から8階が木造なのです。

木造建築における防火性能の維持

2階から8階が木造となると、なんといっても気になるのは防火性能ではないでしょうか。

日本で木造住宅というと、2階建てが主流で、木造の高層住宅にはなじみがありません。
ところが、日本でも「耐火構造」にすれば、高さの制限はないとされています。

2019年6月25日施行の建築基準法改正により、「建築基準法21条」が大幅に緩和され、
「木造建築物等で、耐火建築物としなくてもよい建物の規模」が以下のように変わりました。

  • 「高さ16mを超える木造建築物または、階数4以上の木造建築物において、木材をそのまま見せる「あらわし」の実現が可能となる。
  • 高さ13m以下かつ軒高9m以下であった規制が、「高さ16m以下かつ3階以下」や「延焼防止上有効な空地の確保」などにより、耐火構造等としなくてよい木造建築物の範囲が拡大される。

ただ、実際のところ、日本で木造の8階建て住宅が建てられたというニュースは聞いたことがありません。

ヴァイセンリーダー氏によると、木造でありながら「耐火性能」を維持するという点にはやはり苦労され、防火認定を取得するのに1年半もの歳月を要したそうです。

木造高層建築は階段室、エレベーターシャフトはRC造であるのが基本。しかし、22m以下は必ずRCにするという法的制限もまた存在しなかったのです。規定も前例もない中で、最終的な建築許可が下りたのは、基礎工事が始まってから数カ月後のことだったそう。
いかに前例のない挑戦だったかが伺えますね。

ヴァイセンリーダー氏は、1年半という交渉期間を費やしましたが、徹底して木造にこだわりました。

「ブッキンガーストラーゼ52」の耐火構造

外壁の断面図

©Weissenrieder Architekten BDA

壁構造は、図の左側が外側になります。外側から順に、木サイディング、グーテックス社製の木質断熱材、石膏ボード、ロックウール、石膏ボード、ロックウール、石膏ボードとなります。室内側はロックウールを石膏で挟み、防火性を高めています。

実のところ、外壁パネルの充填断熱には、当初、フライブルク市・グーテックス社の木質繊維断熱材を充填するつもりでしたが、防火耐火規定により政府から許可が下りず、ロックウールを使用せざるを得なかったのだそうです。

外壁以外にも防火耐火対策はしています。
前述した階段室は木造ですが、階段自体はRCにしています。また、階間には金属系の延焼防止処理が施されました。

壁と天井の断面模型
©Weissenrieder Architekten BDA

先ほど、外壁は木サイディングと紹介しましたが、保育園側に面する外壁のみ、消防車が届きにくい場所にあるため、金属を使用しています。室内の仕上げについては、木質系の使用は35%未満に抑える工夫がなされているのです。

地域産木材へのこだわり

この「ブッキンガーストラーゼ52」のすごいところは、まだあります。それは、使用した木材のすべてが、フライブルク市有林を中心とする地元産のFSC認証材を使用していることです。柱や梁、CLT、床・天井、窓枠、ファサード、木質外断熱材、これらすべてが地元産なのです。

例えば外壁パネルは地元工務店のブルノ・カイザー社が自社工場で生産したもの。床天井の複合集成木材パネルは、南シュヴァルツヴァルトのリグノトレンド社が製造したもの、木質断熱はフライブルク市のグーテックス社の製品、といった具合です。

地域産の認証材に限定することで、輸送エネルギーを削減できる上に、森林の保存にも貢献できます。

環境保護、経済性、社会性の実現

この建物の構造材がもしCLTのみだったと仮定すると、使用する木材の量は667㎡でした。しかし、実際は、木材の総使用量は377㎡。木材の使用量を44%削減しました。

※CLTとは「Cross Laminated Timber」の略で、日本語の名称は「直交集成板」。ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した木質系パネルのことです。

木造にこだわりながらも、RCも併用し、使用する木材はできるだけ少なく済むように工夫したのです。

また、3階~8階の賃貸住宅の家賃は光熱費別で、1㎡あたり12ユーロと、フライブルク市の平均を下回る価格に抑えられています。
地域貢献や環境保護に加えて、こうした家賃を実現できたのは、この建物のオーナーである、I Gクローステレという不動産運営会社によるところが大きいでしょう。同社代表のスッター氏は、古建築を経済的に改修し、社会福祉賃貸住宅や商業施設として使用する事業を長年行っている実業家です。

こうした建物を、政府や公共団体ではなく、民間の会社が建ててしまうのです。
ドイツの意識の高さに学ぶところは本当にたくさんありますね。

一風変わったハト対策

余談になりますが、ヴァイセンリーダー氏はこの建物を建築する際、ハト対策も行いました。
ありがちなハト対策用品で意匠性を損なうのを避けるため、ハトそのものが近づいてこないための対策を講じたのです。

それは隣接するビルと協力し、いったんそのビルにハトが産卵しやすい場所を作ります。
ハトはそこで産卵をしますが、卵が生まれるたびに、それを人間が除去。これを数カ月間かけて何度も繰り返していくうちに、ハトは卵を産むことを諦め、その場からも去っていったそうです。
ちょっと残酷にも聞こえる話ですが、これによりハト被害も免れることとなりました。

ちなみに、日本では、「鳥獣保護法」により、ハトの卵を勝手に駆除することはできません。

建物概要

設計ヴァイセンリーダー設計事務所
施主I Gクローステレ(不動産会社)
構造地下1階 地上8階 R C+木造混構造
敷地面積約1200㎡
延べ床面積5100㎡ 1545坪くらい
性能1㎡あたりの暖房負荷15kWh
用途1階スーパーマーケット 2階保育園 3階〜8階 賃貸住宅
建築費用1100万ユーロ(約14億5000万円) 1㎡あたり2156ユーロ(約28万円)
賃料12〜14ユーロ/㎡
1フロア間取り (5世帯)ワンルーム(30㎡)×2世帯 2L D K×1世帯 3L D K×1世帯 4L D K(80㎡)×1世帯

まとめ

ドイツ都市部の都市計画は、自然を奪って開発するのではなく、街の中でうまく隙間を活用して行われ、スーパーなど、日常生活に欠かせない施設を組み入れることも大事だとされています。
日常生活に不便がなく、用途として本当に必要とされる施設。建設の際にも地域貢献や環境保護を実現させ、実に模範的な事業だと思いました。

こうしたドイツで見たお手本は、ウェルネストホームが携わるまちづくりに生かしてまいります。

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