高気密・高断熱住宅のレンジフードはこれだ!!
循環型レンジフードとは?
キッチンのレンジフードといえば、フードがあって、ファンがあって、ダクトを通して汚れた空気を屋外に排出するもの、と思いますよね。
しかし、ウェルネストホームは、快適な温度・湿度に調整された室内の空気をそのまま外に捨ててしまうのは、エネルギーのロスが大きいと考えます。
また、捨てた空気と同じ量の空気が外から入ってくると、例えば冬なら寒くて乾燥した空気、夏なら暑くてジメジメした空気、春なら花粉を含んだ空気を室内に取り込んでしまいます。
そして、室温を元に戻そうとエアコンがフル稼働することになるのです。
では、ウェルネストホームではどんなレンジフードを採用しているのでしょうか。
今回は、ウェルネストホームのレンジフードについて、ご紹介します!
contents
ウェルネストホームが採用しているレンジフードとは
ウェルネストホームが標準採用しているのは、内気循環型※1のレンジフードです。
換気型のレンジフードは、調理時の汚れた空気を屋外に排出するものですが、循環型のレンジフードは、汚れた空気をフィルターでろ過して、臭いと汚れ取ってきれいになった空気を室内に戻します。
屋外に排出するためのダクトが必要ないので、レイアウトの自由度が高くなるという利点もあります。
※1 「内気循環型レンジフード」はウェルネストホームでの呼称です。
ただし、循環型レンジフードは、IHクッキングヒーターやラジエントヒーター専用です。前述したように、排気(換気)を行わないので、ガスコンロなど、燃焼機器には使えません。燃焼機器を使う場合は、必ず別途換気を行ってくださいね。
ウェルネストホームが採用しているのが、富士工業株式会社の「IHクッキングヒーター専用 室内循環フード」です。
富士工業株式会社(以下、富士工業)は創業1941年。1973年からレンジフードの開発・製造を開始し、現在ではレンジフードで日本トップのシェア※2を誇る企業です。
※2 富士工業グループは、一般家庭用レンジフード供給台数国内シェア No.1。(2021 年 4 月東京商工リサーチ調べ ODM 生産品を含む)
富士工業が循環型のレンジフードの販売を開始したのは2010年。その開発が始まったのは、2000年頃のことでした。開発から販売開始まで、10年近くかかったことになります。
循環型レンジフード開発のきっかけ
ガスコンロなどの燃焼機器は、火をつければ燃焼廃ガスとして二酸化炭素などが発生するため、建築基準法では屋外への換気量が定められています。しかし、2000年あたりから急速に普及しはじめたIHクッキングヒーターは燃焼廃ガスを出しません。そのためIHクッキングヒーターはガスコンロと違い、建築基準法での換気の規制は受けないだろうと、同社は考えたのです。つまり、調理で出る油と臭い、煙をきちんと処理できれば、必ずしも換気は必要ないのではないかと。そして、循環型レンジフードの開発が始まりました。
ちなみに、レンジフードは廃ガス捕集の観点から、ガスコンロ等の調理器から1メートル以下の高さで設置し、なおかつ、レンジフードの大きさは、その調理器を覆うものでなくてはいけません。また、消防法では防火の観点から、ガスコンロ等の表面から80cm以上の高さに設置されているのが一般的です。
脱臭フィルターの開発
循環型レンジフード開発において、最初の課題は「臭い」でした。
屋外に排出できないのだから、脱臭性能は限りなく高めたい!
そのためには、脱臭性能が高く、通気抵抗が低い、高性能なフィルターでなければなりません。そして選択したのは、活性炭を主材料としたハニカム形状の脱臭フィルターでした。
しかし、活性炭を主材料とした脱臭フィルターは、脱臭性能と通気抵抗は良いのですが、油での目詰まりが発生することがわかり、寿命の観点で課題がありました。
この課題を解決するために、その前段側に微細な油煙を効率よく吸着し、かつ、油での目詰まりが発生しにくい、同社独自のハニカムセラミックフィルターを設置。長期間の使用でも目詰まりが発生することなく、脱臭性能と長寿命の両立を実現しました。
ここに至るまでには、ひたすら実験と改善を繰り返しました。ニンニクを炒めたり、焼肉を焼いたり、からあげやカレーを作っては脱臭性能を評価し、フィルターの材料や形状変更する。そうしてフィルターの性能改善を重ね、臭いと耐久性の課題を解決したのです。
次なる課題は煙です。
ロースタ―は脱煙機能が搭載されたIHクッキングヒーターを想定していますが、フライパンなどで調理した場合でも、高温になると煙が発生します。この煙除去のニーズに対する対策が求められて、脱煙フィルターを設置することになりました。
このフィルター素材も、煙が捕集できるほど目が細かく、しかも通気抵抗が低いフィルター材料や形状を選択しなければならず、開発にはかなりの苦労がありました。
「万一、火を吸っても」を証明するまで
そして、最後の課題が、性能を求めて選択した脱臭フィルター等が不燃材料でないこと。
油吸着フィルター以外の3つのフィルターは不燃材料ではありません。IHクッキングヒーターは、火は使いませんが、てんぷら火災のリスクは少なからず内在します。天ぷら油は、およそ360℃以上で火種がなくとも発火するからです。
レンジフードは、万が一、てんぷら火災等が発生した場合においても、レンジフードが火災を助長させないよう、風路は金属等の不燃材料でなければなりません。
従って、循環型レンジフードを使用したときにてんぷら火災が発生しても、内部のフィルターに延焼せず、レンジフードが火災を助長させないことを証明しなくてはなりません。
そこで、循環型レンジフードは、てんぷら火災が発生した場合において、レンジフードに搭載した熱センサーが反応すると、ファンの動作を自動停止し、さらに脱臭フィルター部に通ずる風路を金属性シャッターが閉鎖することで、内部への延焼を防止する安全機構を搭載しています。
この安全性を証明するために、てんぷら火災を模擬的につくり上げ、何度も火災試験を実施しては、構造を変更し、現在の構造に至りました。
こうして得たさまざまな知見や試験データを持って日本各地の消防局を行脚し、それぞれ設置許可を取ってきました。
当時は排気ダクト式のレンジフードしかなく、循環式のレンジフードに対する取り扱いが存在しませんから、この許可取りには実に5年を要しました。
循環型レンジフードのメリット
循環型レンジフードは、屋外に排気しないので、当然ダクトがありません。ダクト配管に影響されないキッチンのレイアウトが可能になりました。隣家に臭いで迷惑をかけることもありません。換気型のレンジフードでは、稼働中は部屋の中が負圧になり、ドアが開けづらくなることがありますが、循環型であればその心配は無用です。
何よりも、室内の快適な空気を外に捨てないので、エネルギーのロスが少なく済みます。
まとめ
気密性の高い住宅は、徹底的にすきまを作らない住宅です。ダクトのために壁に穴を開けるデメリットは非常に大きくなりますから、ウェルネストホームの住宅は、この循環型のレンジフードがなくては成立しないといっても過言ではないでしょう。
快適な温度・湿度に整えた室内の空気を大切に使い、熱のロスを最小限におさえる「室内循環フード」が気になった方は、富士工業のHPをぜひご覧ください。
内気循環型レンジフードを紹介したこちらの動画もぜひご覧ください。
取材協力:富士工業株式会社 テクノベーション本部テクノロジー推進部 越智貴志さん