【快適な温度とは?】温熱環境から考える後悔しない家づくり

温度が快適性に与える影響は非常に大きいと言われています。
夏に涼しく冬に暖かい家が理想ですが、
温熱環境における快適とは、暑さや寒さを感じない状態を指します。
何も感じない状態こそが理想的な熱的快適な状態なのです。
では、具体的に快適な温度とは何℃なのでしょうか?

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老若男女みんなにベストな温度は何℃?

「快適な温度が家造りに欠かせない。それは分かるけど、快適な室内環境っていったい何℃なの?」

残念ながらこの問いに正解はありません。それは、性別や年齢、体型によって快適な室内環境が大きく異なるからです。活動量や着衣量などを加味すると一概に何℃と言うことができません。

一般的に、基礎代謝の多い男性は暑がりで、少ない女性は寒がりの傾向があります。基礎代謝とは、生きる為に必要なエネルギーのことで、男性で約1,500~1700kcal、女性で約1,200~1300kcal前後が平均です。男女間では基礎代謝の段階で500kcal近くの差が発生しているので、同一環境であっても暑さ寒さを感じる度合いが変わってきます。同じく、太めの方と細めの方でも男女間と類似した基礎代謝の差が発生します。

また、下記の年齢ごとの平均基礎代謝のグラフをご覧頂くと分かるように、平均基礎代謝は成長とともに増加し、40歳を超えると徐々に低下します。特に60歳を過ぎると急激に基礎代謝量が落ち、低温環境における体温維持が難しくなります。

出典:平成26年度国民健康・栄養調査(基礎代謝量はハリス・ベネディクト方程式により計算)

年齢を重ねるほど、快適な室温をキープする重大性は増し、身体に負担をかけない温度範囲に温熱環境を整える必要があります。

※1)ハリス・ベネディクト方程式
男性: 13.397×体重kg+4.799×身長cm-5.677×年齢+88.362
女性: 9.247×体重kg+3.098×身長cm-4.33×年齢+447.593

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部屋は何℃にキープするのが正解?

では、身体に負担をかけない温度とは何℃なのでしょうか。
その答えを得るためには、私たちが快適さを感じるメカニズムを知ることが必要です。

私たちは体温を一定に維持するため、無意識に体温調整を行っています。寒さを感じると、震えることで筋肉から熱を生産したり、鳥肌をたてて熱を逃がさないようにしたりしています。反対に熱さを感じれば、発汗して汗を蒸発させ皮膚表面温度を下げています。

これらの体温調節は自律神経が周辺の温熱環境に応じて自動的に行っています。しかしながら、こういった自律神経による対応調節反応は、身体にとっては「余計な作業」であり、身体的ストレスの原因となります。

つまり、「快適な温度」とは、自律神経が体温を調整する必要が無い範囲と言えます。

具体的には、冬期で20~24℃(湿度40~60%)、夏期で25~27℃(湿度50~60%)が大半の方の満足度が得られる環境となります。

温度が快適な家造りに与える影響は非常に大きく、ウェルネストホームでは温度について様々な研究を行っています。その中で私たちは「PMV」という指標を使用して、最適な温熱環境を提供しています。

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快適性の指標PMVとは?

1967年にデンマーク工科大学のFanger教授が1,300名の被験者実験から快適方程式を編み出しました。PMV(Predicted Mean Vote予測温冷感申告)とは、この快適方程式に体の熱負荷(室内を一定の温湿度に保つために必要とする熱量・カロリー)と温冷感の概念を組み合わせ、快適性を数値で表せるようにした指標です。

このPMVで求められた環境において、何%の人がその環境に「暑い」や「寒い」などの不満を抱くかをパーセンテージで表現したものがPPD(Predicted Percentage of Dissatisfied予測不快者率) です。

PMVの値が0の状態が快適で、PMVがプラスになると暑く、マイナスになると寒くなります。以下の表を御覧頂くと分かる通り、PMVの値が0から遠ざかるほど、PPDの値も大きくなります。

つまり、暑すぎたり寒すぎたりすると、その環境を不満に思う人が多くなるということを表しています。

PMVとPPDは温熱環境を表す指標として、国際規格ISO7730(1994)となっています。

ISO7730では、推奨される快適な状態として、PMVが±0.5以内、PPD10%以下(10人いたら9人が快適)となるような温熱環境を推奨しています。

ウェルネストホームでは、一年を通して、家中がPMV±0.5以内、PPD10%以下となることを目指し、温熱環境を整える仕様・設計を行っています。そのため、家族のほとんどの方が快適と感じる住環境を実現しているのです。

PMV調査時の様子

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PMVの6要素の詳細

PMVを計算するにあたって必要なパラメータは、温熱環境要素として「①温度(室温)」「②平均放射温度」「③相対湿度」「平均気流(平均風速)」の4つの物理的要素、そして「⑤着衣量」「⑥作業量」の2つの対象者の状態、合わせて6要素によって導き出されます。

温度(室温)
「暑さ」「寒さ」を感じるのは、気温の影響は大きいのですが、必ずしも気温だけで決まりません。例えば同じ気温であっても、湿度が多いと暑く感じたり、気流が強いと寒く感じたりします。ウェルネストホームでは、最大公約数が快適と感じる温度として、夏期は27℃前後、冬期は23℃前後を標準としています。

②平均放射温度
放射とは物体から物体へ熱が赤外線として伝わる現象を指します。赤外線は目には見えませんが、私たちの周りでは常に赤外線が飛び交うことで絶えず熱の移動が行われています。そのため、気温が快適な範囲内であっても、近くにある床や壁、天井などの温度が極端に高かったり低かったりすると、放射熱の影響で暑かったり、寒かったりします。
ウェルネストホームでは、最も体に近く、放射温度に影響する床温度を24℃前後に調整することで、より快適な温熱環境を実現させています。

③相対湿度
人は汗をかくことによって皮膚の温度を下げる(汗が蒸発するときに皮膚の熱を奪って温度を下げる)ことが出来ます。お風呂上りにタオルで水気を切らないと寒いのは気化熱で温度が下がるからです。また、空気は温度が高くなるほどによく水を蒸発させることが出来るので、温度が高く乾燥している状態では、汗をかくことで体温を効率よく下げることが出来ます。反対に湿度が高い状態では、汗をかいても汗が蒸発しづらい為、皮膚温度を十分に下げることが出来なくなってしまいます。そのため、湿度が高いと蒸し暑く不快に感じてしまいます。ウェルネストホームでは、最大公約数が快適と感じる為、夏期冬期ともに50%を目指して湿度を標準としています。特に夏に温度27℃、湿度を50%とすることで暑がりの男性と寒がりの女性の合意点が導き出しやすくなります。

④平均気流(平均風速)
気流(風)が吹けば涼しく感じるのは皆さんご存知の通りです。代表例としては、扇風機を回すと、室温は同じでも涼しく感じます。これは、気流が増えるほどに体に触れる空気の量が増えることによって、空気に多くの熱が奪われるためです。
室内の温熱環境においては、夏は気流が大きいほど涼しく感じ、冬は気流が大きいほどに寒さを感じるようになります。
ウェルネストホームでは超高気密・超高断熱にすることで、冬期に室内の平均気流を0.1m/s未満の体感できないレベルまで抑え込むことが出来ます。

⑤着衣量
服の着衣量を表す数値としてクロ値(clo値)というものがあります。アメリカのASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)では、「気温21.2℃、湿度50%、風速0.1m/sの室内で、椅子に腰かけて安静にしている白人標準男子(産熱量 50kcal/m2h)被服者が、平均皮膚温33℃の快適な状態を継続できるのに必要な被服値を1cloとする」と定義しています。

⑥活動量(met)
活動量は、「Met(Metabolic Equivalent)」という運動強度で表します。座って何もしない状態を1.0Mets、外での歩行は3Mets、ジョギングは7Metsといったように、就寝時の運動量を基準として色々な運動を活動量として数値化しています。

室内における着衣量Clo値と気温、そしてMets値ごとの快適範囲をグラフ化しましたので、これを参考に求める住環境の目安とすることが出来ます。

ウェルネストホームでは、住宅内部における活動量の大半を占める1.0~2.0Metsの範囲において、家全体で快適性の確保されたPMV±0.5の範囲に収まるように、温熱設計しています。(グラフの緑色の領域をウェルネストゾーンと名付けました。)

年間を通じて快適性の高い環境を安定的に提供するために、ウェルネストホームは日々住宅の温熱環境について研究しています。私たちは快適な空間創造のため、日々努力を重ね続けています。

なお、標準的なMetsの一覧表と概算式は以下の通りです。
METs = 1.05 × 消費カロリー(Kcal) × 時間1(h) × 体重(kg)

活動内容 Mets
着座静止 1.0
着座読書 1.3
足をソワソワ 1.8
ゆっくり移動 2.0
外での移動 3.0
自転車で移動 7.5
家事 3.0
炊事 3.3
掃除 3.5
荷物の運搬 5.0

出典:国立健康・栄養研究所「身体活動のメッツ表」

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この記事を書いた人

今泉太爾
一般社団法人 日本エネルギーパス協会 代表理事 / 住宅の省エネ・快適性などに関する専門家。その他住宅に関する幅広い知見を持つ。国土交通省や長野県など、中央官庁や地方自治体の環境・住宅政策の専門委員を歴任。

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