中谷哲郎のドイツ・スイス視察「環境先進国の取り組みとは」#1スイス・バーゼルの「サーキュラー建築」

中谷哲郎のドイツ・スイス視察「環境先進国の取り組みとは」#1
スイス・バーゼルの「サーキュラー建築」

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ウェルネストホームでは、定期的にドイツやスイスでの視察を実施しています。

今回は、ウェルネストホーム代表取締役社長・中谷哲郎がスイスで視察した建物についてご紹介します。

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株式会社ウェルネストホーム
代表取締役社長 中谷哲郎

キーワードはリユース

2024年4月、私たちはスイスのバーゼルに降り立ちました。もともと食品倉庫だった建物をオフィスに改修した建物「ELYS(エリス)」を視察するためです。

ELYSは、建材のCO₂削減を目指す最先端の取り組み、「サーキュラー建築」の考えに基づき、2016年に完成しました。既存の建物を壊して新しい建物を建てると、非常に多くのCO₂を排出します。ELYSは限りある資源を最大限に有効活用するというサーキュラーエコノミーの考えのもと、使用した資材は解体現場などから“拾ってきた”石灰砂岩のブロックの瓦礫や、火事になった木造倉庫の解体時に出た材料です。いわばゴミになるはずだった建材でできた建築物なのです。

窓については既存の製品では性能が悪く、廃材からの回収はできなかったため、10件の窓販売会社に問い合わせると、捨てられる予定だった新品の不良在庫があることが判明。200枚もの窓をわずか1週間で集めたそうです。形状は異なるものの、性能の良い窓が手に入りました。ELYSが窓を廃棄から救ったとも言えるでしょう。

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 それぞれ形状・大きさの異なる窓

断熱材は、建材流通会社を回り、余ったものをもらったそうです。しかし、ELYSに必要な断熱材は、15万㎥と膨大な量。周辺の解体現場だけで集めるのは不可能でした。そこで、フルムロックというスイスのロックウールメーカーに「リサイクル用の商品があればリユースしたい」とお願いしたところ、その考えに賛同した同社から、わずか2週間で必要な分のロックウールが送られてきたそうです。

リユース建築で肝心なのは、どんな建材をどれくらいの量、そして適切なタイミングで入手できるかどうかです。2000㎡に及ぶELYSの壁には、外壁材だけでなく屋根材なども活用しました。全ての面を同じ建材で揃えることは難しかったため、よく見ると外壁の一部が別の色になっているということもありますが、これも含めてサーキュラー建築の特徴と言えるでしょう。

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各地から運び込まれた建材

CO₂を排出しない建物

CO₂排出をどれくらい削減できたかは、建材ごとに公開されています。ELYSでは、リユースした外壁だけで91トンのCO₂を削減しました。そもそも、解体せずに3万5000㎡の建物を使い続けることで1700トンのCO₂削減に成功しています。ブナの木1本が、CO₂を1トン吸収するのに80年かかると考えたら、どれくらい環境に優しい建築物であるかを理解してもらえると思います。

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外壁だけで91トンのCO₂を削減

サーキュラー建築の問題点

いいことづくしに見えるサーキュラー建築ですが、実は課題も山積みです。ELYSでリユース建築のプロジェクトが始まった時、もっとも大変だったのは施主への説明でした。特に困難を極めたのは保証のことです。廃棄予定の建材は、当然提供する側は責任を取りません。万一建材に不具合が起きたら、全て施主の責任となります。この点においては、2024年現在も明確なルールがない状況です。環境先進国ドイツであっても、今まさに、法律と建築の専門家の間でルール作りが検討されている真っ只中なのです。

 

中でも懸念されたのは窓の保証です。そこでELYSでは、使用する窓200枚のうち10%は不良品が出ると想定。交換費用として、1枚1000スイスフラン、合計2万スイスフランを保証金額として計上し、施主の理解を得ました。価格面では、窓は新品よりは節約できましたが、木材、金属については新築と同じ程度の価格。断熱材においては新築より高くなったそうです。

「新品と同じ価格なのになぜリユース建材を使うのか?」。当然、このような問いが突きつけられました。しかし、CO₂を削減できるエコロジカルな建物であるという付加価値が加えられることを説明し、合意を得ました。

まとめ

以上が、スイス・バーゼルで目の当たりにした取り組みです。

日本での建築における脱炭素の取り組みは、建築物が完成してからいかにエネルギーを使わないようにするかが主ですが、環境先進国の「建てる時」からの取り組みは非常に刺激的で学びの多いものでした。

ウェルネストホームは、環境先進国での視察を通して学んだことを、住宅づくりやまちづくりに生かしてまいります。

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