中谷哲郎のドイツ・スイス視察「環境先進国の取り組みとは」#2
スイス・ホルフ村の「木造高層住宅 xユニット建築」
ウェルネストホームでは、定期的に環境先進国であるドイツやスイスでの視察を実施しています。
今回は、ウェルネストホーム代表取締役社長・中谷哲郎がスイス・ホルフ村で視察した建物についてご紹介します。
株式会社ウェルネストホーム
代表取締役社長 中谷哲郎
はじめに
私たちはこれまで、少しのエネルギーで快適に過ごすことや、電気を作り出すプロセスの中でCO₂を排出しない再生可能エネルギーを使用するなど、「継続して使う中での省エネ」に取り組んできました。
一方で、ドイツをはじめヨーロッパでは、さらに一歩進んだ取り組みが始まっています。それは、「建築時のエネルギー消費量をどう削減していくか」ということ。これは前回ご紹介したサーキュラー建築や、今回お伝えする13世帯の木造ZEB※1集合住宅でも感じた先駆性でした。
※1 Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称。消費する一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物。
無駄のない合理的な設計による集合住宅
私たちはスイス・ホルフ村の地上4階・地下1階建て木造集合住宅「ノイラウムホー」を訪れました。ここは、設計事務所シェアラウムのヴァルター・シェアさんが手掛けた集合住宅です。
設計事務所 シェアラウム ヴァルター・シェア社長
出典:設計事務所 シェアラウムHP
木造会社シェアホルツバウで社長を務めていたシェアさんは、これまでの設計には無駄が多いと感じていました。そこで彼は自身の会社を息子に譲り、自分がずっとやりたかった建築を手掛けていくのです。
まずシェアさんが決めたことは3.5m×3.5m、高さ3mのユニットをつくるということ。それを縦に横にとつなぎ合わせて集合住宅を構成します。このユニットをいくつ組み合わせるかでひと部屋の大きさが決まります。これらは合理的で無駄がないため、省資源化・省スペース化につながります。
平面図出典:設計事務所 シェアラウムHP
また、地中熱を回収して暖房に使う仕組みや、13世帯が使う1.5倍ものエネルギーを太陽光で生み出す仕組みなどにより、暖房・給湯費が気にならない賃貸住宅の提供を実現していました。
ウェルネストホームが誇るハイオシステム
環境先進国に感心していただけではありません。ここ数年の視察で、私たちがあこがれたドイツ・スイスに追いついて逆転したと感じたことがあります。それは私たちが開発したハイオシステム(Haiot System)です。
省エネ性能を躯体で極限まで高め、その中の設備を太陽光発電や蓄電池と連動させて自動制御するハイオシステムは、室内の快適性を担保しながら、限りなく家のエネルギーを買わずに済みます。このようなシステムは、環境先進国でもここまで進化しているものはありません。
ハイオシステムについてもう少しくわしく説明しましょう。これは、株式会社Haiotが独自開発したHEMS3.0(HEMSのバージョン)です。
HEMS(ヘムス)とは、「Home Energy Management System(ホームエネルギーマネージメントシステム)」のこと。家庭内の電気機器をつないでエネルギーを見える化し、その稼働を自動的にコントロールすることでエネルギーのムダ遣いを防ぎながら、快適な室内環境を保ちます。
ウェルネストホームでは2023年の秋より、設計する全ての住宅・建物にハイオシステムを搭載しています。ハイオシステムについては、こちらでくわしくご紹介していますのでぜひご覧ください。
日本と環境先進国の違い
もちろん私たちがこれから目指すべきところはまだまだあって、例えば木造の高層建築は、消防法の関係でなかなか難しい部分あります。ホルフ村で見た木造ZEB集合住宅も、ユニット建築自体は日本でも見ないことはないですが、木造の高層住宅や、高性能な賃貸住宅の普及率を見ると、口惜しい思いを抱きます。
戸建ての持ち家に関しては、ご自身が一生住まわれる家なので、性能を求める方が増えてきましたし、業界も変わってきたと感じます。
一方で、賃貸住宅は建てる人と住む人が違うので、建てる人は利益を優先しがちです。なるべく安く建てて、なるべく高く貸す。ルールがない以上、どうしても利益重視に流れてしまうのです。
環境先進国では、暖かい住宅に住むことが基本的人権とされており、これを守らなければ建て主は訴えられてしまう、利益だけを追及できない社会です。
まとめ
日本も少しずつ変わっているとはいえ、私たちが目指す社会にはまだまだ程遠いのが現状です。ウェルネストホームはこれからもオーナー様に応援のお力添えをいただき、理想の未来を切り開いていきたいと考えています。