2020年省エネ基準(断熱基準)義務化が見送り!?

2020年省エネ基準(断熱基準)義務化が見送り!?

COP24採択、気候変動対策は最終局面に。

世界各国で異常気象による自然災害が年々増加しており、私たちの生活を脅かし始めています。この最大の要因は地球温暖化による気候変動である可能性はほぼ確実な状況です。

私たちの住む日本でも、今年の夏に代表される災害級の猛暑日の増加、毎年千年に一度の大雨が降るという異常さに代表される土砂崩れを誘発する集中豪雨や大雪の増加、台風の大型化や本州直撃頻度の増加、他にも森林や農作物などの生物の生態系の急変などなど、その悪影響は深刻かつ多岐にわたっています。

2018年12月2~15日(本来14日までのはずが一日延長)までポーランドCOP24(第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議、以下COP24)にて、気候変動の主要因とされる、世界の温室効果ガス排出量(二酸化炭素等)の削減に向けた「パリ協定実施ルール」の作成について詰めの協議が行われていました。

パリ協定とは、2020年以降の世界の気候変動対策に関する国際的な枠組みです。1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された「京都議定書(気候変動への国際的な取り組みを定めた条約、先進国の温室効果ガス排出量90年比5%減少)」の後継となるものです。その目標は

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
  • そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

今回のCOP24の目的は、2020年からスタートする『パリ協定』の実施ルールを決定すること。具体的には、パリ協定加盟国各々の温室効果ガスの削減目標の妥当性をどうやって評価検証するか、そして先進国から途上国への資金援助や技術支援の国別割り当てなどの合意でした。つまり、トランプ大統領は先進国から途上国への資金援助の枠組みである「緑の気候基金=GCF」への拠出も止めると宣言しているので、パリ協定加盟国全員が当てにしていたアメリカからの資金援助分が宙に浮いている状態での採択となっています。

11日の菅沼健一気候変動交渉担当大使の声明には、「すべての先進国は、2020年までに年間1,000億ドルを共同で拠出する、2020年の日本の拠出額は1.3兆円」とあります。日本が約115億ドルほどの負担であることを考えると、トランプ大統領がパリ協定から離脱しなければアメリカの拠出額は230憶ドル以上はあったのではないかと推察します。

この穴を埋められる先進国は存在しないため、パリ協定は次の米国大統領による復帰を前提としているのではないだろうか。

 

COP24で合意が成立!!

そして、日本時間12月16日未明に会期を1日延長してようやく全会一致にて合意に至った模様。今回決定した運用ルールでは、すべての国が、温室効果ガスの削減目標や達成の方法などを提出・説明する義務があり、2024年末までに、削減の実施状況に関する最初の報告書を提出するこが盛り込まれています。

つまり、離脱したアメリカ以外の全ての加盟国が共通ルールのもとに温室効果ガスの削減に取り組むことになったのです。

しかし、残念なことに各国が掲げる2030年までの削減目標をすべて達成しても、協定目標の2℃未満に抑えることができず、今世紀末には約3℃上昇してしまうことが、直近に仁川で開催された国際会議にて、気候変動に関する政府間パネル(以下:IPCC)2018年10月8日発表の「IPCC GlobalWarmingof1.5℃」によって報告されました。

例えば日本の2030年に26%削減(2013年比)では全然足りず、約2倍近くの45%削減(2010年比)が1.5℃未満に抑えるために必要とされています。そのため各国は2020年までに、現状の倍近くへと削減目標を更新する必要があります。(残念なことに、今回のCOP24ではこの新たな追加削減量については先送りされました。)

IPCC GlobalWarmingof1.5℃について詳しくはこちら
https://www.ipcc.ch/sr15/

日本語訳された要約版はこちら
https://www.env.go.jp/press/files/jp/110087.pdf

 

国際会議で住宅の省エネ化を環境大臣が宣言

さて、ここからが本題です。今回のポーランドで開催されたCOP24にて原田芳明環境大臣の声明が発表されております。
https://unfccc.int/sites/default/files/resource/JAPAN_cop24cmp14cma1-3.pdf

特に注目されるのは、世界への貢献項目の7個目と8個目にある以下のくだりです。

〇According to the latest figures of 2017, Japan has been reducing GHG emissions for recent consecutive 4 years. Japan is steadily implementing measures to achieve 26% GHG emissions reduction by 2030, and aims to achieve 80% reduction of GHGs by 2050 as a long term target while pursuing both the promotion of climate change actions and economic growth. Japan will formulate a long-term low GHG emission development strategy as a growth strategy.
最近の2017年の数値によれば、日本は最近4年間連続してGHG排出量を削減してきた。 我が国は、2030年までに26%の温室効果ガス削減を達成するための施策を着実に実施しており、2050年までに温室効果ガスを80%削減することを目標としつつも、 我が国は成長戦略として長期的な低GHG排出削減戦略を策定する。

〇Japan will promote innovations and green finance, and mainstream ESG finance for decarbonization across all sectors, including vehicles, houses and buildings. We are also looking at establishing a hydrogen society, and making renewable energy the major power source.
日本はイノベーションとグリーン投資を推進し、車両、住宅、建物などすべての部門で脱炭素化のためのESG投資を主流にしていきます。 また、水素社会を確立し、再生可能エネルギーを主要な動力源とします。

とあります。つまり、日本のパリ協定におけるCO2削減活動は着実に進んでおり、代表例として車両、住宅、ビルディング(非住宅)を示して脱炭素化のためのESG投資を主流にしていくことをCOP24の国際会議にて環境大臣が宣言しています。直前に発表された「IPCC GlobalWarmingof1.5℃」を受け、さらなる削減量の追加が必要とされる状態です。着実な削減活動の実施は必要不可欠であり、削減量の積み増しができる状態との宣言とも受け取れます。頼もしいですね。

日本の住宅部門における気候変動(温暖化)対策の推移

さて、日本の住宅部門の対策の流れを見てみましょう。

最新の気候変動対策はパリ協定を踏まえて作成された、

「日本の約束草案」平成27年7月17日
http://www.env.go.jp/press/101241.html
「地球温暖化対策計画」平成28年5月13日閣議決定
https://www.env.go.jp/press/files/jp/102816.pdf

上記の内容に沿って進められています。地球温暖化対策計画P28~P31に家庭部門の取り組み内容として以下の対策が挙げられています。(別表1-49~53には具体的な削減量)

新築住宅の省エネ化に絞って文章を抜粋すると以下の通りです。

(b) 住宅の省エネ化

○新築住宅における省エネ基準適合の推進
規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、2020年までに新築住 宅について段階的に省エネルギー基準への適合を義務化する。これに向けて、中 小工務店・大工の施工技術向上や伝統的木造住宅の位置付け等に十分配慮しつつ、 円滑な実施のための環境整備に取り組む。具体的には、省エネルギー対策の一層 の普及、住宅や建材・機器等の省エネルギー化に資する新技術・新サービス・工法の開発支援等を実施する。

○省エネ・省CO2のモデル的な住宅への支援
より高い性能の住宅の建築を促進するため、ネット・ゼロ・エネルギー・ ハウス(ZEH)、ライフサイクルカーボンマイナス住宅(LCCM)、低 炭素認定住宅などの省エネルギー・省CO2のモデル的な住宅への支援を行 う。これにより、2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の 半数以上をZEHにすることを目指す。

因みに、「新築住宅における省エネ基準適合の推進」にて削減されるエネルギーは冷暖房のみです。そのため、省エネ基準=断熱基準と読み替えても差し支えありません。(地球温暖化対策にかかわる中期ロードマップでは住宅断熱化と明記。太陽光発電(再エネ)や、給湯器やLED照明などは別項目となっているため、一次エネルギー基準ではなく外皮基準による空調エネルギーの削減限定となる。)

結論として、日本の温暖化対策(気候変動対策)における新築住宅の省エネ基準(断熱基準)義務化および、ZEHなどの推奨基準住宅の標準化は、家庭部門の約3割を担う、中心的な気候変動対策となっています。

上記の理由から、政府の各期決定やエネルギー基本計画などでは2012年から一貫して、「2020年までに新築住宅は段階的に省エネルギー基準への適合を義務化する」という方針を明示してきました。「省エネルギー基準への適合義務化」とは、最低限度の省エネ基準(平成28年基準)以上の断熱性能を有していない住宅は、新築することが出来なくなる制度です。つまり、2020年以降は平成28年基準を下回る断熱性能の住宅は市場から排除される予定だったのです。

国交省が独断で国際的な約束を秒で破る?(縦割り行政の弊害か?)

ところが、COP24にて環境大臣が、代表例として示した「住宅の脱炭素のためのESG投資促進」とは真逆の政策立案が国土交通省から2018年12月3日に提示されたことに、驚きを禁じえません。

2018年12月3日に国土交通省にて開催された社会資本整備審議会 建築分科会 建築環境部会(以下:審議会)において、平成28年5月13日に閣議決定されているパリ協定を踏まえた地球温暖化対策計画により、2020年から義務化が予定されていた「住宅の断熱性能の最低基準の義務化」を事実上白紙化する案が提示、審議会にて了承されたからです。

今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について(第二次報告案)

http://www.mlit.go.jp/common/001263809.pdf

要約はこちら

http://www.mlit.go.jp/common/001263808.pdf

オブラートに包んで回りくどく書いてますが、はっきり言えば予定していた「住宅の省エネ基準義務化は止めます」という意味です。

しかも、その理由が、ザックリ言えば、

  1. 「建築主に効率性の低い投資を強いることになる」
  2. 「適合率が低いままで義務化すると市場の混乱を引き起こす(消費増税と重なるし)」
  3. 「省エネ基準などに習熟していない事業者が相当程度いる」
  4. 「申請者、審査者ともに必要な体制が整わない」
  5. 「住まい方でエネルギー消費量は変わるから」
  6. 「デザインに制限かかかると一部のデザイン建築家がやりにくい」

だそうです。これって、ぶっちゃけ①⑤以外は作り手側(行政側)の都合(怠慢)ですよね・・・。①だって、国土交通省の試算例が特異で市場価格では費用対効果は費用対効果は逆に会うのですが・・・。

世界の緊急かつ最大の課題である気候変動対策を全く踏まえておらず(要約資料1-2のはじめには「パリ協定を踏まえた・・・」と書いてあるのに全く踏まえず)、日本としての国際会議で締結された条約より、ごく一部の事業者(少数派)の怠慢(自らの怠慢が社会全体に及ぼす多大な影響を理解していないのでは?)を優先させるというのが本当に政策として正しいのでしょうか?

私には到底理解できません。

この報告書にかかわった方(面倒くさがって義務化に反対したごく一部の工務店、変化を恐れて挑戦しようとしない設計士の方々)には、1992年のリオサミットでの、伝説のスピーチをみてほしいと思います。(もし、まだ見てない方は絶対一度は見ておいてください!自分たちの不甲斐なさに泣けてきます・・・)

そもそも省エネ基準適合義務化とは?

・・・あまりにも衝撃的だったので、直接担当の住宅生産課に直接確認したところ、現段階では期限を定めない見送り、つまり省エネ基準の最低限度の義務化は事実上の撤回となる予定のようです。閣議決定までされている内容を国交省が独断で撤回することが本当に可能なのでしょうか?(ちゃんと省庁間で折衝し、閣議決定を事実上撤回するだけの根拠漬けと根回しをしているとはとても思えませんが。)

気候変動対策で必要不可欠とされてきた住宅の省エネ基準(断熱性能)の義務化を白紙化するなんて、トランプ大統領のアメリカのパリ協定離脱レベルの暴挙に見えるのは、私だけでしょうか。

なお、前期の通りパリ協定を踏まえて提示された現在の削減目標では1.5℃未満に抑えられないばかりか、最低目標の2未満にも遠く及ばず、3℃以上温暖化してしまうというのが「IPCC GlobalWarmingof1.5℃」による最新情報です。つまり、最低でも以前に決めた削減目標以上に積み増すことが必須となっている状態です。にもかかわらず、以前に決めた内容を後退させるような政策を打ち出すという、気候変動対策について認知があれば、絶対にありない政策立案がなされようとしています。

しつこいようですが、これまでの政府の試算では一貫して、家庭部門の主力気候変動対策として、2030年までに、真水の削減量として20%省エネの実現が必達目標。そのためには、少なくとも2020年までに最低限新築される住宅に関しては平成28年基準以上にしておくことが必要不可欠と試算されていました。

これら住宅に省エネ基準を義務化する流れは、1999年の京都議定書を踏まえた温暖化対策から始まっています。2010 年 6 月に経済産業省,国土交通省,環境省 が共同で「低炭素社会に向けた住まいと住まい 方推進会議」を設置し,2012年4月の第4回目の会議では,省エネ基準の義務化に向けた工程 表案が示されました。2012年7月に閣議決定された「新成長戦略」、にてグリーン成長戦略として「新築住宅における省エネ基準達成率2015年70%、2020年100%」が明確に打ち出されました。

つまり、住宅の断熱性能の義務化の流れは、京都議定書をスタートとした、CO2排出量等削減による気候変動対策から始まっていることが分かります。その後、パリ協定を踏まえてさらに追加の省エネ対策が必要になっているのが現状であることは、前記の通りですのであり、住宅の省エネ基準の義務化は、パリ協定と連動して慎重に検討しなければならない国際条約案件であることは明白です。

ところが、12月3日の審議会では今までの見解を覆して、住宅の断熱性能の義務化を白紙化してしまいました。また、一説によると、削減目標を達成できる見通しが立っていることにも言及しているようです。資料にはどこにもそんなこと書いてないのですが、口頭で説明しているようで、その根拠は12月3日審議会では全く示さず、2019年1月18日に開催予定の審議会で明らかにする予定だそうです。

(審議会の翌日12月4日に自然エネルギー社会実現議連にて、住宅生産課に対面で直接確認させていただいたところ、まだ計算していないので、これから計算しますとおっしゃってましたが・・・私の利き方が悪かったのでしょうか?)

今回義務化を白紙化した場合、
今後の気候変動対策にどういった影響が出るのか?

社会資本整備審議会の議事録を見ると、毎回パリ協定を踏まえた削減計画についての言及がありますが、事務局の国土交通省からは「エネルギーの長期見通し」や「地球温暖化対策計画」などの概要が示されるのみで、具体的に今回の政策変更に伴ってどのように数値が変化するのかは、全く示されてきませんでした。

そこで、過去の温暖化対策やエネルギーの長期見通しなどの様々な資料から、数値を精緻に確認していくことで、フェルミ推定(足りない要素を推察して行うザックリとした概算)によるシミュレーションにより、実際にどのような変化が起こるのかを試算してみようと思います。

そもそも、住宅の省エネ基準とは?

まずは、住宅の省エネ基準の定義と省エネ性能の実力を定義しないと試算できないので、まずは日本の省エネ基準についておさらいです。

日本の住宅の省エネ基準は、昭和50年代のオイルショックを受け、1979年から施行された「エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下:省エネ法)」内にて1980年に住宅で推奨される省エネ判断基準は「旧省エネ基準(昭和55年基準)」として初めて制定されました。その後省エネ法の改正に伴って1992年(は「新省エネ基準(平成4年基準)」に強化され、1999年の改正は「次世代省エネ基準(平成11年基準)」と強化されてきました。

東日本大震災後のエネルギー不足から、日本のエネルギー自給率が低いリスクが顕在化され、2013年に省エネ法の改正によって新たに平成25年基準が設けられました。(断熱性能は次世代省エネ基準と同じ)その後2015年に省エネ法の一部であった住宅の省エネ関連法が独立した法律として、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下:建築物省エネ法)」が制定され、「平成28年省エネルギー基準」(以下:省エネ基準)が制定され、現在に至ります。なお、この平成28年基準の断熱性能は次世代省エネ基準と同じ内容です。

つまり20年近く前の古い基準のままであり、地球温暖化による気候変動を食い止めようとする流れができる前の、国際的にみても著しく低い、化石のような省エネ性能となっています。

http://www.ibec.or.jp/GBF/doc/sem_13th_17.pdf

まずは各省エネ基準のストック量を定義。

土台となる世帯数は最新の『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2018(平成30)年推計)を使用します。内閣府の温暖化対策案でも、環境省の中期ロードマップでも、本資料を基に試算しています。2013年の同資料は5年スパンで作成されるため、2013年の世帯数がありませんが、2010年と2015年の値差を年数案分して2013年を5,274万世帯として、試算します。

なお、環境省の中期ロードマップや現在の内閣府の地球温暖化対策案は、いずれも世帯数の推計のベースに2015年度の本調査を使用しておりますが、2030年の世帯数が2013年版では5,123万世帯でしたが、最新の2018年版では5,348万世帯と4.3%増加しています。この将来推計の世帯数増加の影響は大きいのではないかと思います。(この件は後ほど取り上げます。)

http://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2018/t-page.asp

次に、各省エネ基準ごとのストック数はちょうどよい資料がありました。
国土交通省による推計では、2013年のストックの割合は以下の通りとなっています。

http://www.j-reform.com/event/symposium_pdf/symposiumH28.pdf

これを上記の世帯数に掛けることで、2013年のスタート時点における各基準のストック数を定義します。

ここから毎年の新築着工数が平成4年、平成28年、ZEHのいずれかで新築され、世帯数の増減を超えるストック増加分は、除却又は空き家として未利用となる形式で試算します。

各省エネ基準別のエネルギー消費量を定義

内閣府の温暖化対策資料や国土交通省の審議会資料を見ると、消費エネルギー量の定義や削減量の根拠資料として、EDMCエネルギー・経済統計を使用しています。そこで、最新の2018年版を基にエネルギー消費量を定義してみることとする。

エネルギー・経済統計要覧2018によると、2013年の世帯当たり用途別エネルギー消費量は、冷房=216千kcal、暖房2,328千kcal合計2,544千kcal(11.46GJ)とあります。(上記エネルギー量は、戸建てからマンション、アパートまで含めた平均となっているため、斬種類合わせた総数で試算するには最適な値といえます。)

次に、各省エネ基準ごとの消費エネルギー比率の数値としては、環境省の中長期ロードマップ小委員会(第19回)参考資料1中長期ロードマップを受けた温室効果ガス排出量の試算の対策導入量等の根拠資料にちょうど良いものがありました。

https://www.env.go.jp/council/06earth/y0611-19.html

以下資料より抜粋

・住宅の断熱化による効果: 国交省資料(2007)より、旧基準以前の住宅のおける冷暖房のエネルギー消費量を1とした時、各 省エネ基準における冷暖房によるエネルギー消費量を以下のとおりとした。なお、他の対策との重 複を排除するため、給湯、照明、動力他に関する効果は見込んでいない。 旧基準;0.761、新基準;0.578、義務化基準(次世代基準);0.394、推奨基準;0.315 推奨基準については、各省エネ基準間のエネルギー消費削減効果が 24~32%に相当すること、最新 の次世代基準の制定から 10 年以上の時間が経つこと及び、中央環境審議会(2009)や各種住宅メーカ ー資料等より現行の先端技術の水準が既に次世代基準を上回っていること等から、次世代基準に比 べたエネルギー消費削減効果を 2 割と想定。旧基準以前を1とした場合は 0.315 に相当。

この全世帯平均が11.46GJとなるように各ストックごとの消費エネルギー量を定義してみると、以下の通りとなりました。この消費エネルギー量とストック数を掛けて消費エネルギー量を年ごとに算出していきます。

年間着工件数を定義してみる。

必要なパラメーターの最後は新築の着工件数です。

これこそ神のみぞ知る未来の出来事ですが、大胆にもザックリと定義してみようと思います。最もよさそうなものが2018年6月に野村総研が出した予測結果を基に考えてみます。

①中期的な予想88万戸と、②賃貸の積極提供は落ち着きつつも緩やかに継続した場合=93万戸に対して、2018年10月段階での実際の着工件数779,793戸、前年の11月12月で161,454戸建設されているので、同程度だったとすると2018年度は94万戸になる可能性が高いです。となると、近いのは後者の賃貸ソフトランディング案なのだが、2019年以降の予測がありません。ということで93-88の差5万を中期予想に追加した数値を採用することとします。

 

新築と入れ替わる昭和55年以前と昭和55年基準の割合を定義

当初ザックリ7割ぐらいかなーとして試算していたのですが、友人から最適な資料があると提案いただきましたので国交省の建築物ストック統計2018年を見てみましょう。

平成30年と平成29年を比較してみると昭和55年以前が80%、昭和55年~平成4年が20%、一年さかのぼって平成29年と平成28年を比較しても同じく昭和55年以前が80%、昭和55年~平成4年が20%となりました。

住宅の省エネ性能は義務化されていないので、本来は分類できないのですが(築年数が昭和55年以降でも無断熱で作られていた住宅は多数あり、現状も平成11年基準の達成率が6割しかないため)参考値としては機能するように思います。

 

では、条件がそろいましたので、試算してみよう

2030年までの住宅省エネ基準の変動に対する、原油換算省エネ達成量をフェルミ推定にて試算してみます。

なお、怠慢から断熱義務化に反対している一部の建築家や、わずかながらのコストアップを嫌がる大手マンションデベロッパーの大規模RCマンションなどは、義務化しない限り継続的な未達成となる可能性が高いことを考慮し、平成28年基準の達成率は70%を上限として固定で試算します。同じくZEH外皮基準の導入に関しても、現状の年間1%程度の増加が継続したものとして試算します。

さて結果は予想通りさんざんたる状態で、2030年度の必達目標314.2万kLに対して、達成量が231万kLと83万kLもの未達成削減量が発生してしまいました。

真水の削減量で83万kLもの省エネ量を担保してくれるほど余裕のある分野を探す必要があります。でないと、ポーランドで締結されたばかりのパリ協定における日本の削減目標が、早速破綻する可能性は高いと考えられます。ましては、IPCCの求めるさらなる削減案は、到底実現不可能な状態とみてよいでしょう。

予定通り2020年から義務化をした場合は?

では、予定通り2020年から義務化が行われ、2030年までにはZEH外皮基準も義務化された場合はどうだったのか?これもついでに計算してみましょう。

実は2020年に平成28年基準を予定通り義務化し、2030年までにZEH外皮基準を義務化したとしても、全然達成できません。削減量全く足りてませんね・・・。

もし、義務化見送りでも達成できるとしたら・・・。

しかしながら、この状態でよく義務化を見送ったなと不思議でなりません。そこで、頭の体操として「今回の義務化見送りでも達成できる」とする国土交通省の達成シナリオを勝手に考えてみたいと思います。

着工件数94万戸固定シナリオ

まず、目標達成のために省エネ量を割り増しするのは、さすがにモロバレになるので考えづらいところ。そこで、例えば着工件数を2018年の95万戸で固定して回転率を高めるシナリオを考えてみました。将来の着工件数を現状維持の希望的数値で試算するのは、着工件数を経済指標にしている日本では十分にあり得ると考えます。(人口減少かつ空き家が増えすぎて問題になっているのにこのような住宅政策がまかり通るのは、世界広しといえども日本だけでしょう。)

予想通り、かなり将来の削減量をかさ上げ出来ますね。とはいえ、まだ4万kL不足しています。ただし、この程度であれば新築のリプレースにて除却・空き家化するストックを平成55年基準以前のものに寄せていけば十分賄えそうです。

除却量の83%以上が昭和55年以前のもとすることで、314.2万kLの削減量が見事達成となりました。

世帯数推計で最新のH30年ものを使わない(H25年ものを採用)シナリオ

次に、2030年の世帯数将来推計を最新の平成30年の5,348万世帯ではなく、平成25年度の2030年=5,123万世帯を継続使用するシナリオです。このシナリオのポイントは、平成30年度の最新の推計が出るまでは、将来世帯数の減少による自然減の省エネに期待していた可能性が高いからです。基準年の2030年には2013年比4.3%の世帯が自然減少します。その減少分をこれまた、昭和55年以前の住宅を中心に評価すればかなり楽になります。

論より証拠、実際に試算してみましょう。

NRIの着工数が減少するシナリオでも、昭和55年以前の比率を95%以上とすれば達成できます。

そして次に、着工件数を現状維持の94万戸で固定したシナリオでは、現状維持で楽々達成してしまいました。しかも23万kLもの余剰削減分まで出ます。私見では、今回国土交通省はこれに近い案を採用しているのではないかと思われます。だから現状維持でも達成できると踏んでいるのではないかと。

なお、トップランナー制度が建売限定から、注文住宅に広がることになりますが、トップランナー基準で求めているBEI=0.85で削減量が積み増されるという考え方があるとのうわさがありますが、住宅の省エネ基準の義務化で想定している削減は空調エネルギー限定であり、給湯器やLED照明などの削減量は別途見積もられています。

つまり、トップランナー制度によって平成28年基準の達成率が上がることはあっても、ZEH外皮基準などのような高性能外皮が増えるかというと、そのようにはならないと考えられます。

(LEDや高効率給湯器などによる削減のほうがBEIを下げるのに効果的であるから。これは、給湯器のベース性能が悪すぎること、また白熱灯ベースにて照明エネルギー量の基準が定められているからです。今時なかなか売ってませんけど・・・。)

まとめ

12月3日の社会資本整備審議会にて、国土交通省は達成できる見通しがあることに言及しているようなので、審議会に提出される根拠資料を拝見しないと何とも言えませんが、最新の統計では核家族化が進む想定が加速しているので、非常に厳しい状況と考えて差し支えない状況です。

今回、資料をにらめながら様々なシナリオにて試算したところ、どの数値を採用するのかによって結果が大きく変わることが分かりました。国土交通省に是非ともお願いしたいのは、社会資本整備審議会に提出する資料は、第三者でも検証可能な様に、出典や計算方法などを明示して提出してほしいといです。(結果だけ示して、目標達成可能とするのだけは止めてください・・・)

世界が一つになって取り組んでいる、気候変動対策は、これからの10年が最も重要とされています。この大切な10年を間違った政策運営でつぶさないためにも、精緻な資料作りの上で、審議会にて正しい検討がなされることを切に願います。

未来の子供たちのためにも!

パブリックコメントをぜひお願いします。

2018年12月7日~2019年1月5日までパブリックコメントを募集しています。

気候変動対策をこれ以上後退させてはならい!とお考えの方は、ぜひパブリックコメントにて「気候変動対策を後退させることはあってはならないので、予定通り義務化すべき」等のコメントをお願いします!

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155180734&Mode=0

 

 

 

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