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日本における電力需給実績の見える化にあたって

ジャーナリストで環境コンサルタントの村上敦氏の協力を得て、
日本の電力事業者の発表している需給実績を
グラフで見えるようにする仕組みを公開しました。

電力需給実績グラフをみる

  • アップデート時の修正/機能追加について(2017.10.9更新)
  • 2017年4月〜6月分の電力需給実績データの追加(2017.10.9更新)

ジャーナリスト村上敦より

日本において電力供給における情報公開が、アメリカ、欧州などからはずいぶん遅れて、かつ不足することも多々あるのですが、2016年4月1日から形の上では始まるようになりました。需給関連情報(需給実績)の公表がそれにあたります。

しかし、それぞれの大手電力(旧一般電気事業者)は最低限の数字の羅列(毎時ごとの発電源別の発電所から送電設備への送電量のデータ)を公表するのみで、一般の消費者にも分かりやすい形での見える化(グラフ化)は行っていません。

例えば市場取引が活性化され、同時に情報公開の進むドイツでは、以下のようなサイトで、電力需給について、それぞれの発電所の運転状況について、市場取引価格の推移についてなど、リアルタイムで推定値を表示しながら、過去の経緯についてもデータが公表され、同時に、再エネにかかわるステークホルダーが市民の使い勝手の良いように見える化を公表しています。

https://www.agora-energiewende.de/en/topics/-agothem-/Produkt/produkt/76/Agorameter/

https://www.energy-charts.de/power.htm

ジャーナリストである私は、こうした情報をもとに取材をしたり、記事を執筆しているため、日本でもそのような取り組みが始まるものだと心待ちにしていました。

しかし、日本の再エネ、あるいはエネルギー関連のステークホルダーにおいては、このような取り組みには興味がないようで、1年が経過した後も、ネット上に見やすい形でのグラフ化はされませんでした。

したがって、本ホームページを運営している「ウェルネストホーム」にお願いして、この見える化のページを作成していただいたというのがこれまでの経緯です。

「ウェルネストホーム」では、太陽光発電などの「創エネ」の前に、家庭内での「省エネ・抑エネ」できる家とは、どんな形なのか? というポイントについて真摯に議論し、追及をして、建物の断熱、気密について他のハウスメーカーでは実現されていない高いレベルを提供されています。トリプルガラスが標準装備という仕様で、日本のハウスメーカーでは唯一、厳しいドイツの省エネ規制を軽々とクリアされています。

日本では2012年からの再エネ電力の固定価格買取制度(FIT)の施行によって、全国各地でとりわけ大型の太陽光発電施設が大量に設置され、電力供給における再エネの割合も11%から16%へとわずか4年間で5%も上昇しています。

しかし、グラフで皆さまも確認できる通り、大型の太陽光だけ一方的に増加させることによってでは、年間における再エネの割合はそれほど大きくないタイミングで、すでに日射量が多い日には電力の需要と供給のバランスを取ることが困難になり続けている状況がはっきりと読み取れます。

ここに、出力変動において柔軟性のない原子力発電がさらに加わったり、同時にFIT認定をすでに取っている太陽光発電が追加で建設されるようになると、ますます電力システムは煮詰まってゆくはずです。

例えば、一部離島ではすでに太陽光発電への出力抑制がかかり始めた九州電力のGW中の2016年5月4日のグラフをご覧ください。こうしたリアルなデータを見える化し、この情報を念頭に置けば、

日本政府が目標としている2030年までに再エネ22~24%、および原子力20~22%という電力供給は、かなり厳しいものになる(矛盾している)ことが予測されます。変動性再エネ(太陽光発電+風力発電)と柔軟性のない原子力発電とは、油と水の関係にあります。
日射量の多い快晴時/日中/夏場には風は弱く、日射量の少ない荒天時/夜間/冬季には風が強く吹くため、風力発電と太陽光発電は、お互いに補完し合う関係にあります。太陽光発電だけを推進することよりも、両者をバランスよく推進することの重要性が日本では究極的に高まりつつあります。
FIT制度における賦課金という形で支援している再エネ電源のうち、柔軟な運用が可能な発電源はバイオマス発電のみです。それをFITという形で推進してしまうと、年間の最大発電量の確保を優先する運用(つまり原子力とおなじベースロード的な発電方式)になってしまうため、変動性再エネを受け止めるための柔軟な機能を持つことはありません。すでに一定量の太陽光発電が推進されてしまった今の2017年の時点で、こうした硬直的な運用を行うバイオマス発電のために賦課金を支払うことは合理性がないように思われます。
より強化される系統連携、および、より柔軟な揚水水力の運用を行うことで、かなりの量の変動性再エネを電力システムに組み込むことは可能なように思われます。
などなど…

せっかく電力事業者からデータが開示されるようになったのに、「それでは、その次のエネルギー政策はどのように進むべきなのか?」について客観的なデータを用いた議論が日本においては進められていません。それゆえ、いちハウスメーカーである「ウェルネストホーム」にご協力をいただき、このようなページを準備させていただきました。

多種多様な用途で、このデータの見える化が活用されることを願うとともに、「創エネの前に省エネ」という「ウェルネストホーム」が掲げている理念、大原則が社会に広く認識されることを願っています。

2017年7月 村上 敦

電力需給実績グラフをみる

アップデート時の修正/機能追加について

2017年7月20日にサービスを開始した電力需給の見える化。おかげさまで数多くの方にご利用いただいているようでうれしく思います。

この度は旧一般電気事業者(電力大手10社)の2017年4月~6月のデータがようやくそろって公開されましたので、ここにアップデートを実施しました。とりわけ今回のアップデート範囲となるGW期間中は、電力需要が低下し、太陽光発電の発電量が上昇します。2016年と2017年でどのような変化が生じたのか、興味深いポイントでもありますので、十分に比較、ご覧ください。

さて、この電力需給情報の見える化をスタートした際に、私のところには数多くのご意見・ご批判が寄せられました。その中には、「風力や太陽光発電がグラフの一番上に表示されると、あたかも再エネが余計な発電をしているように見えてしまう。このような見える化の際には原子力を一番上に持ってくるべきだ」という趣旨のご意見も頂戴しました。

見える化(グラフ)の積み上げの順番に正解はあるのでしょうか?

基本的には積み上げの順番に正解はないでしょう。本来の「見える化」の意図に照らすと、いかに「見やすいか」を追求したものが好ましく、(何らかの意図をもって)どのように見せるか、というバイアスを可能な限りかけないようにしたいと考えています。

ただし、「どのように見せるか」については、一方のステークホルダーからの観点だけでなく(旧一般電気事業者)、他方のステークホルダーの観点からも表示した方が公平だろうとも思います。

したがって、以下の2種類の表示方式から選択できるようにアップデートしました。

積み上げ式:設備利用率の高いもの、あるいは運用実績が長く使い慣れているものを下から積み上げる。電力大手10社は、傾向としてほぼ似通ったデータの発表方式を採用しています。公表データ列の左から(見える化のグラフでは下から)原子力、火力、水力、地熱、バイオマス、太陽光、風力、揚水という順です(いくつかの電力大手は異なる方式で公表していますが、私たちはもっとも平均的なものを使用しました)。マイナス側は上から揚水、系統連系。
残余需要方式:再エネ統合型で、電力システムの柔軟化対策も配慮した積み上げ方です。見える化のグラフは下から、地熱、バイオマス、水力、風力、太陽光(ここまで再エネにおける一般的な運用で設備利用率の高いものから順に)、そして原子力、火力、揚水(ここまで既存エネにおける設備利用率の高いものから)という順です。マイナス側は上から揚水、系統連系。
「残余需要とは何か」については以下のブログに記しました。変動性再エネ(VRE)を基幹電源に据え、電力システムの柔軟化対策を進めるなら、本来はVREが一番下に、FITでのバイオマスや地熱、そして原子力発電は、柔軟性に優れないので、もっとも上に来るはずです(電力システムから追い出すべき硬い電源)。 しかし、そうするとグラフが非常にわかりにくくなります(現状では火力や揚水水力で最終的には需給調整してるわけなので、調整用電源がやはり一番上に来るべきでしょう)。

http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/52006605.html

ということで、ドイツの連邦ネットワーク庁の公表でも採用されているこの方式を「残余需要方式」として追加しました。

https://www.smard.de/blueprint/servlet/page/home/46

どちらの表示にしろ、私たちがこの見える化のサイトで提供したいのは、第一義に「情報公開されている情報を分かりやすい形で、できる限り多くの方にお届けする」です。両者の表示を比較されて、情報がより理解されやすい方を選んでご利用いただけますと幸いです。

2017年10月 村上 敦

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