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日本における電力需給実績の見える化にあたって

ジャーナリストで環境コンサルタントの村上敦氏の協力を得て、
日本の電力事業者の発表している需給実績を
グラフで見えるようにする仕組みを公開しました。

電力需給実績グラフをみる

ジャーナリスト村上敦より

日本において電力供給における情報公開が、アメリカ、欧州などからはずいぶん遅れて、かつ不足することも多々あるのですが、2016年4月1日から形の上では始まるようになりました。需給関連情報(需給実績)の公表がそれにあたります。

しかし、それぞれの大手電力(旧一般電気事業者)は最低限の数字の羅列(毎時ごとの発電源別の発電所から送電設備への送電量のデータ)を公表するのみで、一般の消費者にも分かりやすい形での見える化(グラフ化)は行っていません。

例えば市場取引が活性化され、同時に情報公開の進むドイツでは、以下のようなサイトで、電力需給について、それぞれの発電所の運転状況について、市場取引価格の推移についてなど、リアルタイムで推定値を表示しながら、過去の経緯についてもデータが公表され、同時に、再エネにかかわるステークホルダーが市民の使い勝手の良いように見える化を公表しています。

https://www.agora-energiewende.de/en/topics/-agothem-/Produkt/produkt/76/Agorameter/

Ehttps://www.energy-charts.de/power.htm

ジャーナリストである私は、こうした情報をもとに取材をしたり、記事を執筆しているため、日本でもそのような取り組みが始まるものだと心待ちにしていました。

しかし、日本の再エネ、あるいはエネルギー関連のステークホルダーにおいては、このような取り組みには興味がないようで、1年が経過した後も、ネット上に見やすい形でのグラフ化はされませんでした。

したがって、本ホームページを運営している「ウェルネストホーム」にお願いして、この見える化のページを作成していただいたというのがこれまでの経緯です。

「ウェルネストホーム」では、太陽光発電などの「創エネ」の前に、家庭内での「省エネ・抑エネ」できる家とは、どんな形なのか? というポイントについて真摯に議論し、追及をして、建物の断熱、気密について他のハウスメーカーでは実現されていない高いレベルを提供されています。トリプルガラスが標準装備という仕様で、日本のハウスメーカーでは唯一、厳しいドイツの省エネ規制を軽々とクリアされています。

日本では2012年からの再エネ電力の固定価格買取制度(FIT)の施行によって、全国各地でとりわけ大型の太陽光発電施設が大量に設置され、電力供給における再エネの割合も11%から16%へとわずか4年間で5%も上昇しています。

しかし、グラフで皆さまも確認できる通り、大型の太陽光だけ一方的に増加させることによってでは、年間における再エネの割合はそれほど大きくないタイミングで、すでに日射量が多い日には電力の需要と供給のバランスを取ることが困難になり続けている状況がはっきりと読み取れます。

ここに、出力変動において柔軟性のない原子力発電がさらに加わったり、同時にFIT認定をすでに取っている太陽光発電が追加で建設されるようになると、ますます電力システムは煮詰まってゆくはずです。

例えば、一部離島ではすでに太陽光発電への出力抑制がかかり始めた九州電力のGW中の2016年5月4日のグラフをご覧ください。こうしたリアルなデータを見える化し、この情報を念頭に置けば、

  1. 日本政府が目標としている2030年までに再エネ22~24%、および原子力20~22%という電力供給は、かなり厳しいものになる(矛盾している)ことが予測されます。変動性再エネ(太陽光発電+風力発電)と柔軟性のない原子力発電とは、油と水の関係にあります。
  2. 日射量の多い快晴時/日中/夏場には風は弱く、日射量の少ない荒天時/夜間/冬季には風が強く吹くため、風力発電と太陽光発電は、お互いに補完し合う関係にあります。太陽光発電だけを推進することよりも、両者をバランスよく推進することの重要性が日本では究極的に高まりつつあります。
  3. FIT制度における賦課金という形で支援している再エネ電源のうち、柔軟な運用が可能な発電源はバイオマス発電のみです。それをFITという形で推進してしまうと、年間の最大発電量の確保を優先する運用(つまり原子力とおなじベースロード的な発電方式)になってしまうため、変動性再エネを受け止めるための柔軟な機能を持つことはありません。すでに一定量の太陽光発電が推進されてしまった今の2017年の時点で、こうした硬直的な運用を行うバイオマス発電のために賦課金を支払うことは合理性がないように思われます。
  4. より強化される系統連携、および、より柔軟な揚水水力の運用を行うことで、かなりの量の変動性再エネを電力システムに組み込むことは可能なように思われます。

などなど…

せっかく電力事業者からデータが開示されるようになったのに、「それでは、その次のエネルギー政策はどのように進むべきなのか?」について客観的なデータを用いた議論が日本においては進められていません。それゆえ、いちハウスメーカーである「ウェルネストホーム」にご協力をいただき、このようなページを準備させていただきました。

多種多様な用途で、このデータの見える化が活用されることを願うとともに、「創エネの前に省エネ」という「ウェルネストホーム」が掲げている理念、大原則が社会に広く認識されることを願っています。

2017年7月 村上 敦

電力需給実績グラフをみる

村上敦
村上 敦
ジャーナリスト、環境コンサルタント。1971年生まれ。土木工学を学ぶ。日本で大手建設会社勤務を経て、1997年にドイツ・フライブルクに。フライブルク地方市役所(Breisgau-Hochschwarzwald)・建設局に勤務の後、2002年から独立し、フリーライターとしてドイツの環境・都市計画施策を日本に紹介する。

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