2階リビングと1階リビングの特徴。住宅設計のプロが教える5つの選び方。
間取りの初期段階で考えるのがリビングの配置ではないでしょうか。2階建ての住宅を計画している方であれば「リビングは1Fか2Fか」どちらの階に配置したら良いかとても悩むところです。
この答えはそれぞれの住宅によって違います。敷地の条件や周辺環境などその土地のポテンシャルを把握することとそこに住まわれる方が何を大事に考えているかがとても重要です。このコラムを読んでいただければ自ずと回答は出るはずです。では「リビングは1Fか2Fか」の5つのノウハウを見ていきましょう。
※WELLNESTHOME創業者の早田がyoutubeチャンネルでリビングについて解説している動画
「リビングは1階よりも2階にあったほうがいい!?家づくりノウハウ Q&Aシリーズ」はこちら
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リビングは1Fか2Fか / リビングと陽当たり
リビングを1F/2Fどちらの階にするかを決める時の最も大切な要素は、「家族が集まる空間=リビング」に太陽光を届ける計画をすることです。リビングの配置を決める前にやるべき大事なことが2つあります。
1つ目は、住宅を計画する土地に対して周辺建物の日射の影響を調査することです。環境計画にとって大切なことは太陽の恵みをきちんと活かすことなので、Wellnest Homeの設計では周辺建物の調査をして、計画地に年間通してどのように影ができるのか、あるいは太陽光が降り注いでいるのかをシミュレートします。
2つ目は、そのシミュレーションを基に建物の配置を決定することです。建物の規模を想定しながら最も効率よく建物を配置をします。上の内観パースは宮城仙台モデルハウス2を計画した時の太陽光の影響をシミュレーションした参考例です。夏の光を遮り、冬の光は部屋の奥まで届くように取り込んでいます。(通常の計画ではSketchup により外観のシミュレーションしています)
配置計画におけるワンポイントアドバイスです。上の配置図をご覧ください。通常の計画では敷地のどこかの辺に合わせて建物の配置を決めますが、太陽光を活かすためには、南北軸の方位に合わせることが最も効率良い配置となります。Wellnest Homeの設計では敷地に余裕がある場合には、周辺状況を判断しながら南北軸に合わせて配置する場合があります。あらゆる計画に対してきちんと理由を説明できるのがWellnest Homeの設計です。住宅の計画は意外と慣例的に決まっていることが多いようです。ぜひ素朴な疑問を投げかけてください。一つ一つクリアにしながら計画を進めて行きます。上の配置図は赤点線の建物の向きを少し回転させて南北軸に合わせて建物を配置した例です。これで「家族が集まる空間=リビング」に効率良く太陽光を取込むことができました。
上の写真は建物の南面に設置した外付けブラインドを内外から見た写真です。太陽光を取り込むのは冬季間と中間期の寒い日です。太陽光は無尽蔵な恵みですがまさに諸刃の剣ですので、夏季はきちんと遮断する必要があります。日本の住宅にとって断熱と気密の大切さはようやく広まってきたように感じていますが、夏季にしっかりと太陽光を遮っている住宅はまだ少ないような気がします。太陽光における計画は「取得と遮断」をセットで計画しなければなりません。この外部ブラインドの設置は、興味がある方達だけが設置するような任意な選択では十分ではないと考えています。周知の事実となっていますが夏季に太陽光を外部で遮断しなければ高気密・高断熱の住宅では、室内がオーバーヒートを起こすことがあります。
※WELLNESTHOME創業者の早田がyoutubeチャンネルでリビングについて解説している動画はこちら
それぞれのリビングの特徴 / 1Fがリビング
まずは1Fがリビングの場合を見てみましょう。1Fのリビングの特徴はなんと言っても庭とつながりを持つことです。温熱環境を区分するためにきちんと内外の領域を区分する必要がありますが、開口部の配置や床高さを揃えたテラスを計画することで、開放的な空間の豊かさのために視覚的な外部とのつながりを意識した計画をします。
1Fがリビングであると日常の買い物のストックがしやすいとか、間取りの観点からこどもの帰宅時の様子がリビングアクセスだとわかりやすい等のメリットもありますが、最も大事な1Fリビングのメリットは、季節の移り変わりを庭と共に楽しむことができることだと思います。
このプランニングではリビングの幅いっぱいにテラスを設けてその先に庭を確保しています。
こどもの興味を室内のゲームや玩具だけでなくリビングのその先の「外部空間=庭」に向けるチャンスがいつもあることは大事な要素だと考えています。こども達は土に触れることが大好きです。石ころや葉っぱといった庭には興味あるもので溢れています。庭で遊ぶことで土を手で掴み木の香りや葉のかすれ合う音といった5感で自然と触れ合いながら日々の生活を楽しむことができるのも、1Fリビングの特徴です。季節の移ろいと共にお暮らしください。家庭の文字はまさに「家」と「庭」から成り立っています。
それぞれのリビングの特徴 / 2Fがリビング
上の写真は2Fに設けたリビングとその前面のデッキテラスです。2Fリビングの場合は、できるだけ大きなテラスを設けて庭の代わりに活用することをお勧めします。多くの幅でリビングと接しながらも、ある適度奥行きのあるテラスです。この奥行きを確保することがテラスを生活に取り込む上で大事なポイントとなります。一般のテラスですと奥行きがあまり確保されていないことが多く、洗濯干しの用途だけに使われていることがあるようです。小さくてもテーブルと椅子がセットできると良いでしょう。緑のプランターなどを隅に配置するだけで庭のようになります。またテラスにこの写真のように木製デッキを敷き込めば、こども達がリビングから裸足のまま出られる「もう一つの遊び場=アウトドアリビング」に早変わりします。
2Fリビングの特徴は開放性とプライバシーを同時に確保できることです。特に景観が良い場所であれば生活の中心となる心地良いリビングになるに違いありません。2Fリビングのもう一つの特徴は天井高さを自由にすることができることでしょう。もちろん地域や敷地の場所によって決められたルールがありますので制限はありますが、写真のように屋根勾配を活かした傾斜天井も2Fならではのデザインです。ロフトとのつながりも、縦空間を活かした豊かな空間を持つリビングにできる要素です。
「2Fリビングにした場合は1Fに比べて暑くならないですか」と尋ねられることがあります。一般的な住宅ではそのような温熱環境となってしまう場合があります。断熱や気密が一般的グレードによることがその原因の一つとされています。Wellnest Homeが設計する住宅では、屋根の断熱は300mm、壁の断熱は185mmのダブル断熱の超高断熱の住宅です。住宅内部のどこでもほとんど一定の温度で設備機器を使わずに、北側の部屋であれ、もちろん屋根の下のロフトであれ、快適な空間となっています。
リビングと間取り / リビングと諸室の関係
リビングと間取りの話題に移りましょう。まずはパブリック空間とプライベート空間の1Fと2Fのバランスを見てみましょう。温熱環境に配慮した計画では上下階の大きさを揃えた方が有効となりますので、空間のバランスに配慮することが必要です。
上の平面図で緑色がパブリック空間であるリビングとダイニングキッチンです。茶色がプライベート空間である個室です。諸室の大きさに配慮しながらも色々な形状で組み合わせてバランスを取っているのがわかります。さらにもう一つの工夫は、吹抜けをうまくバランスを取るために活用していることです。黄色にカラーリングした部分がリビングの上部の吹抜けです。吹抜けによって上下階の面積をバランス良く保っています。
次はリビングと水回りの関係を見てみましょう。
リビングを緑色に、トイレを除いた水回りを薄い青色に着色しました。左の平面図が1Fにリビングがある場合の実例。右の平面図が2Fがリビングの実例です。共にリビングと同じ階に水回りがあるのがわかります。もちろん個室とのバランスや敷地の条件によって変わってきますが、上下階のバランスを取りやすいプランニングです。またリビングと水回りを同じ階に配置することで、家族が触れ合うチャンスが増えるのではないかと考えています。お風呂上がりや洗面を使う時にちょっとした時間が生活にはあるものです。その時にリビングを水回りの近くに配置することで、その空間に立ち寄りやすくなりコミュニケーションを生むきっかけを作ります。
上の写真はどちらも1Fがリビングで階段がオープンに配置されたモデルハウスによる実例です。
こどもが2Fの個室へ上がる時にリビングアクセスが良いとの定説もあるようですが、それだけの理由で家族の関係に大きな影響を持つものではないと思いますので一長一短と言ったところでしょうか。リビングのオープン階段の特徴は、リビング空間に広がりを与えることではないでしょうか。上の2つの実例ではそれぞれインテリアの一部となるようにデザインされた階段が、リビング空間に彩を与える要素になっています。またリビングに面する階段にすることで基壇の部分を調整しやすくなり、将来的な老後生活にも配慮された登りやすい緩い勾配にすることが可能です。
リビングにはオリジナルの造作家具を設置することをお勧めします。左の写真は木製のカウンターをTV台用に設置した実例です。棚一枚の単純な家具ですがシンプルな暮らしを望むこのご家族にはぴったりのとても良い設えです。右の写真はスチールと木製の棚を組み合わせた壁面シェルフです。オープン棚にすることで機能的には本などをストックしたりオーディオ機器などを配置することで活用し、デザイン的には陶器や小物を飾る展示スペースとして活用されています。
リビングと吹抜け / 縦空間の繋がり
Wellnest Home の設計ではリビングは縦空間のつながりのために吹抜けを積極的に配置しています。上の写真はロフトと一体の空間になるように計画してリビングに高い天井高さを確保した実例です。大きい空間だと冬に寒いのではないかとご心配の方もいらっしゃるとは思いますが、前章でもご説明したようにWellnest Home の住宅では上下がつながった空間でもほとんど温度差がない空間となっています。
いずれの断面図も上部を吹き抜けでつないだ1Fがリビングの住宅です。左の図は一般的な住宅の断面図です。イラストのオレンジ色は暖かい空気を表し、ブルー色は冷たい空気を示しています。空調機は数台設置されていることも通常ですが、上下階で温度差があることがわかります。
右の図はWellnest Homeの断面図です。色の表現でもわかるようにほとんど一定な温度空間になっています。間取りの条件にもよりますが、超高断熱・超高気密住宅だからこそ通常の規模の住宅であれば空調機は一台で家全体を温めることが可能なのです。積極的に吹き抜けを活用して、縦空間がつながる豊かな空間を楽しんで生活していただけます。
知恵のまとめ / リビングは1階か2階か
- 周辺状況を調査して日射の影響をシミュレートする
- 1Fリビングの場合は、庭との関係を重視
- 2Fリビングの場合は、奥行きのあるテラスを設置
- リビングと水回りは同じ階だと家族が集りやすくなる
- 吹抜けでも温度差を気にせず縦空間のつながりを楽しむことができる
“Less is more.(より少ないことは、より豊かなこと)” それは20世紀を代表するモダニズム建築の巨匠、建築家ミース・ファン・デル・ローエが残した名言です。 あれこれと派手に飾り立てるより、 必要なものを絞って適切に配置する方が良質になる。 飾り立てるよりもシン ...