湿度を快適に維持する家づくり3つの条件
快適な家づくりの第一条件は、湿度管理です。そう申し上げても言い過ぎではありません。なぜならば、湿度を管理できない家は、不快なだけでなく、人間の健康や家の耐久性に悪影響を及ぼすからです。残念ながら、日本の家のほとんどは、湿度をコントロールできる力を持っていません。それでは、湿度を適切にコントロールし、健康で長持ちする家づくりの条件とは、いったい何でしょうか?
「WELLNEST HOME創業者 早田宏徳が語るシリーズ④-結露が怖い本当の理由|あなたの家の壁にひそむ恐怖の住人」にて、壁の中の結露を防止し、カビ・ダニの繁殖しない家づくりについて詳しく解説しています。こちらの記事と合わせてご覧いただけると、より理解が深まります。
※WELLNESTHOME創業者の早田が湿度と乾燥ついて解説している動画はこちら
contents
- 1 湿度とはなにか?絶対湿度と相対湿度について
- 2 なぜ結露ができるのか?湿度と結露の関係について
- 3 湿度管理ができない家は、カビが生えやすく長持ちしない
- 4 湿度管理ができない家は、ダニが発生しやすくアレルギーを引き起こす
- 5 湿度管理ができない家は、冬にインフルエンザにかかりやすい
- 6 夏に気温が低くても湿度が高いと熱中症になりやすい
- 7 窓を開けて風通しをよくするのは、湿度管理には逆効果!?
- 8 除湿機・加湿器が湿度管理に効果的でない理由
- 9 除湿して湿度を快適に保つならばエアコンがベストな選択か?
- 10 家の湿度管理ができない一番の原因は気密性の低さにあり
- 11 気密性が高くても材料選びを間違えると、室内で出た水蒸気を除湿できない
- 12 湿度を快適に維持する3つの条件
湿度とはなにか?絶対湿度と相対湿度について
皆さんは、湿度といえば%(パーセント)で表されるものをイメージしますよね?それは半分正解ですが、もう半分のこともしっかりと理解しておかなければなりません。
%(パーセント)で表されるのは相対湿度と呼ばれているものです。湿度には、もう一つ絶対湿度というものがあります。絶対湿度と相対湿度を理解することによって、皆さんは後述する「結露ができる原因」を圧倒的に理解しやすくなります。
相対湿度と絶対湿度はなにが違うのか?
まずは、皆さんがお馴染みの湿度の概念である相対湿度について説明していきます。相対湿度を説明するにあたり、「飽和水蒸気量」という概念について理解してもらう必要があります。いきなり難しそうな用語が出てきて、ビックリしていませんか?しっかりついてきてくださいね。
それでは、下のグラフをご覧ください。
引用元:山賀進氏のWebサイト
グラフの縦軸に示した飽和水蒸気量は、1㎥の空気中にどれくらいの水蒸気を含むことができるかを表します。グラフを見ていただければわかるように、温度が高くなるほど、飽和水蒸気量が大きくなります。つまり、よりたくさんの水蒸気を空気中に含むことができるのです。例えば、温度が20℃であれば空気中に最大17.3gの水蒸気を含むことができます。
これはあくまで水蒸気の最大キャパシティです。17.3gの水蒸気を、空気中に実際に含んでいるとは限りません。
もし気温が20℃のときに、空気中に8.65gの水分を実際に含んでいるとしたら、そのときの相対湿度は、8.65g/17.3g=50%となります。
少し話が飛んでしまいましたが、相対湿度の定義を改めて説明します。
相対湿度とは、ある温度の飽和水蒸気量に対し、実際に空気中に含まれている水分量の割合のことです。仮に気温20℃において空気中に17.3gの水分が含まれているならば、相対湿度は100%となります。実際に含んでいる水蒸気が、その半分の8.65gならば、相対湿度は50%です。
ここまでが相対湿度の話となります。皆さんが普段目に触れている湿度(%)というものが、少しは理解していただけたのではないでしょうか?皆さんがすでにご理解されているように、相対湿度が高かったからといって、空気中にたくさんの湿気を含んでいるわけではありません。ならならば、相対湿度は温度によってコロコロと変わるものだからです。
そこで登場するのが、絶対湿度という概念です。絶対湿度とは、空気中に含まれている水蒸気のグラム数(またはキログラム)のことです。先ほど話にあがった17.3gとか8.65gといった数値が絶対湿度そのものです。空気中に8.65gの水蒸気が含まれているならば、気温が25℃であろうと15℃であろうと、8.65gの水蒸気が含まれているという事実に変わりはないのです。
話が少し難しすぎたでしょうか?そう思われた方のために、相対湿度と絶対湿度の関係を、もう少し簡略化して説明しましょう。
空気というものを、座席(=飽和水蒸気量)が決まっている部屋でたとえてみます。ちなみに、水色の可愛いキャラクターを「水玉ちゃん」と名付けました。
気温36℃で相対湿度が40%(座席10席に対して、4人の水玉ちゃんが座っている状態)とします。しかし、気温が下がれば座席は減ります。そうなると、水玉ちゃんの人数(=絶対湿度)は変わっていないのに、座席はほぼ満席の状態となります。
座席がもう2席減れば結露します。
後述しますが、結露は住宅の耐久性や人体の健康の面で最大の敵となります。
冬や梅雨の朝、目覚めると窓とサッシに水滴がビッシリで、カーテンがカビて困ったという経験はありませんか? 結露が発生すると、同時にカビも繁殖し始めます。実は結露によるカビ被害はカーテンや床だけではありません。家全体に広がり、住人への健康被害を及ぼしている可能性があります。 一生 ...
湿り空気線図:絶対湿度・相対湿度と温度の関係性について
絶対湿度と相対湿度の関係を一目で分かるように示したのが、下に示した「湿り空気線図」という曲線です。
湿り空気線図では、横軸に乾球温度、縦軸に絶対湿度がきます。乾球温度とは、皆さんが普段目にしている「気温」のことです。右肩上がりの曲線が何本も引かれていますが、これが相対湿度です。
察しの良い方ならばお分かりかと思いますが、皆さんが普段目にされている気温と湿度(相対湿度)さえ分かってしまえば、空気中にどれくらいの水蒸気を含んでいるか(絶対湿度)が一目で分かるのです。
例えば、気温25℃・湿度50%のときの絶対湿度がいくつかお分かりでしょうか?いちど、詳しく説明していきましょう。
まず、相対湿度50%の曲線を見てください。
次に、気温です。横軸が気温でしたよね?
25℃のところから、上にぐいっと直線を引っ張ってください。
すると、相対湿度50%の曲線と交わった点があります。
そこから右方向へ線を引っ張ってみてください。
さて、この線はちょうど「10」の数字のところにぶつかりました。
それでは質問です。相対湿度50%、気温25℃のときの絶対湿度はいくつでしょうか?
そうです。正解は10g/kgです。
このような形で、気温と相対湿度を把握できれば、空気中にどれくらい水蒸気が含まれているか(絶対湿度)が必然と分かるのです。これとは逆に、絶対湿度と気温が分かれば、そこから相対湿度がいくつかが分かります。
湿り空気線図を読み解けるようになると、家の中で結露ができる原因も簡単に理解できるようになります。湿度と結露の関係について、次から詳しく説明していきます。
なぜ結露ができるのか?湿度と結露の関係について
湿り空気線図において、相対湿度・絶対湿度・気温の関係が一目で理解できましたね。今度は、湿り空気線図から「湿度と結露の関係」を紐解いていきたいと思います。
厄介な冬の結露はこうして発生する
冬の朝早く起きたとき、窓ガラスいっぱいに結露が発生しているのを、誰もが目にしたことがあるはずです。冬場に室内で結露が発生するメカニズムを、湿り空気線図で説明していきます。
冬といえば、加湿器を室内に取り入れている家庭も多いと思います。後述しますが、空気の乾燥はインフルエンザウィルスの蔓延にもつながるくらい怖いものです。しかし、加湿器の取り扱いも、一歩間違えれば結露につながりかねません。
例えば、冬の夜の室内は、加湿も加温もしなければ気温5℃、湿度50%くらいです。
さすがにこの気温ですと、寒すぎて家の中で過ごせないですよね?そこでエアコンで室内を暖めて気温を23℃まで上げたとします。空気中の水蒸気量は変わらないので、相対湿度は15%まで下がりました。
ちなみに、昔は暖房によって過乾燥になるようなことはほとんどありませんでした。何故ならば、使用していた暖房器具がそもそも違うからです。昔はストーブ、ファンヒーターが主流でした。ストーブやファンヒーターは、灯油を燃やすことによって熱風を出し、室内を温めています。灯油を燃やすと、灯油の水分はどこに行ってしまうのでしょうか?そうです、灯油の水分は燃焼することによって水蒸気となって空気中に散っていきます。ですから、昔の住宅では知らず知らずのうちに暖房によって快適な湿度を保っていたのです。
しかし、いまの住宅はどうでしょうか?最近はストーブやファンヒーターの使用が減り、オール電化(エアコン、床暖房)が一般的となりました。そのため、室内で水蒸気を出すことがなくなりました。したがって、いまの日本の冬は、ストーブやファンヒーターを使っていた昔に比べて過乾燥な状態なのです。
さて、話を戻したいと思います。エアコンで部屋の中を温めたのは良いのですが、部屋の中は乾燥したままです。
こんな低い湿度では、インフルエンザウイルスの蔓延を煽るだけです。後述しますが、乾燥している状態、つまり湿度が低い状態の方が、湿っている状態よりもインフルエンザウイルスの生存率が圧倒的に高くなります。
そこで、加湿器の出番です。加湿器を炊くことによって、気温23℃のままで室内の湿度が上がりました。ここまでくれば、室内で快適に過ごすことができます。
しかし、問題はここからです。寝るときは布団を被るので、皆さんは暖房を消してから就寝しますよね?暖房を消してしまうと、窓際や北側にある浴室、玄関などの気温が真っ先に下がり、水蒸気が凝縮することによって結露が発生します。
浴室やキッチンは、ただでさえ水をたくさん使って湿気が溜まりやすいのですから、なおさら結露ができやすいですよね。
気温と相対湿度、絶対湿度の関係を理解すれば、朝起きたときに窓がびっしり結露している理由が、容易にお分りいただけましたでしょう。
夏の結露に要注意!結露が怖いのは冬よりも夏である
結露といえば冬を連想される方がほとんどだと思います。しかし、結露に本当に注意すべきなのは、冬よりもむしろ夏です。
夏に結露ができるなんて想像できないですよね?しかし、皆さんの家の中でも、確実に夏に結露が発生しています。
それでは、具体的に夏に結露が発生するメカニズムを、先ほどと同様に湿り空気線図から解き明かしていきましょう。
夏の蒸し暑さは、誰もが不快感を感じることです。快適な湿度を保つのに、もはやエアコンは欠かせない存在です。しかし、今の日本の住宅では、一歩間違えればエアコンが室内で結露を出す最大の要因になり得るのです。具体的に説明していきましょう。
例えば、昼間の気温が38℃で相対湿度が50%だったとします。
このとき、空気1kgあたり21gの水蒸気を含んでいます。余談ですが、本来ならば21gもの水蒸気を含むなど、日本ではめったにありませんでした。最近は温暖化の影響もあるので、このように水蒸気を空気中にたっぷりと含んだ環境でもまったく驚かなくなりました。
さて、話を戻しますね。空気1kgあたり21gの含んだ状態で、夜になって気温が28℃まで下がったとします。そうなると、水蒸気の量は変わらないので、相対湿度だけが変わって80%まで上がります。
ここからちょっとでも気温が下がったならば、相対湿度が一気に100%をこえて結露します。
実際に、北側に位置する部屋やキッチン、押入れの中などは、リビングよりも気温が低いはずです。そういった気温の低い場所から優先的に結露ができるのです。
先ほども申し上げましたが、相対湿度100%とは空気中にパンパンに水蒸気を含んだ状態です。相対湿度100%を越えると、水は空気中で水蒸気としていられなくなり、結露として現れます。
エアコンを使う場合も要注意です。エアコンを使えば室内を除湿してくれますし、快適な気温・湿度を保ってくれます。しかし、寝るときにエアコンを切るご家庭も多くありませんか?仮にエアコンで冷え切った室内に、外からの湿った空気が入ってきたらどうなるでしょうか?
そうですね。その湿った空気は一気に冷やされて結露します。迂闊に窓を開けようものならば、外からの湿気は入り放題ですから、最悪のケースですね。窓を開けずとも、日本の住宅はただでさえ気密性が低いですから、窓を締め切っていても湿気は入ってきます。
厄介なことに、こういった結露は皆さんの目に触れることがありません。お風呂や洗面所は、ほかの場所に比べてジメッとした感じがしませんか?または、押入れの中で何ともいえないモワッとした空気感を感じませんか?そういった場所では、水蒸気をたくさん含んだ空気が存在し、結露のリスクに晒されているのです。
このように、気温と絶対湿度の移動状態が分かれば、結露がなぜ発生するのかは簡単に理解できるのです。
湿度管理ができない家は、カビが生えやすく長持ちしない
先ほど申し上げた通り、家の中で湿度管理ができないと、家中で結露ができ放題です。結露の中で一番怖いのが、「内部結露」と呼ばれる壁の内側で発生する結露です。
内部結露が発生する状態が長引くと、カビや腐朽菌が繁殖して木材が腐りやすくなります。
カビは気温20〜30℃、相対湿度60%を超えてくると増殖しやすくなります。とくに木材の腐れを促進する腐朽菌は、湿度が70%を超えてくると増殖します。
冬や梅雨の朝、目覚めると窓とサッシに水滴がビッシリで、カーテンがカビて困ったという経験はありませんか? 結露が発生すると、同時にカビも繁殖し始めます。実は結露によるカビ被害はカーテンや床だけではありません。家全体に広がり、住人への健康被害を及ぼしている可能性があります。 一生 ...
家の構造上で大事な土台や柱、床などが腐ると、住宅の寿命が著しく縮まってしまいます。日本の家の寿命はわずか30年であり、欧米諸国の住宅に比べて長持ちしないというのが現状です。日本の住宅が長持ちしない背景には、結露という強敵が潜んでいるのです。
引用:国土交通省
湿度管理ができない家は、ダニが発生しやすくアレルギーを引き起こす
湿度管理ができない家は、家のいたるところで結露が発生しやすくなります。結露がカビ発生の原因になることは、先ほどご説明した通りですね。カビが増えると、カビを栄養源にするダニも増殖しやすくなります。
相対湿度が94%の環境下においては、2時間が経過すると、わら5gあたり400匹近くものダニが増殖するのです。(「建築設計資料集成・1・環境」(日本建築学会編・丸善刊)より)
ダニそのものよりも、ダニの死骸やフンが原因となって人体のあらゆる器官でアレルギー症状を引き起こします。
引用:日革研究所
湿度管理ができない家は、冬にインフルエンザにかかりやすい
冬にもう一つ注意しなければならないのは、インフルエンザの存在です。
乾燥しているよりも湿度が高い方がインフルエンザにかかりにくいのは、誰もが直感的に感じていることだと思います。皆さんが直感的に感じられている通り、相対湿度・気温とインフルエンザウィルスへの感染の度合いには相関関係があるのです。
上の表でいうと、右上のブルーのゾーンですと1時間以内にインフルエンザウイルスは死滅します。しかし、レッドゾーンになるとインフルエンザウイルスが蔓延します。
どの辺りが最適な湿度、気温かと言いますと、ちょうどイエローとブルーの境界線くらいの領域になります。相対湿度50〜60%、気温20〜24℃あたりですね。
もう少し厳密に言うと、インフルエンザウィルスの生存率は絶対湿度に反比例することが、医学分野の論文から明らかになっているのです。
『ホントは安いエコハウス』(松尾和也著)の記述内容を元に、弊社でグラフを作成
上のグラフは、絶対湿度ごとのインフルエンザウイルスの6時間後の生存率を表しています。グラフから分かるように、絶対湿度1.5g/kgの環境下ではインフルエンザウイルスは63%も生存していることになります。絶対湿度が11g/kg以上まで下がると、1時間でほぼ死滅します。
弊社が設計・施工した住宅に住まれているお客様からは、「今年はまったく風邪を引きませんでした」と言われることもあります。快適な湿度、気温を維持することが、健康面でも重要であることが、ご理解いただけたでしょうか?
夏に気温が低くても湿度が高いと熱中症になりやすい
意外に思われるかも知れませんが、夏場で仮に気温が低かったとしても、熱中症にかかる恐れはあります(どこまでを「気温が低い」と定義するかにもよりますが)。
熱中症とは、体温の上昇によって身体のバランスが崩れ、けいれんやめまい、頭痛などの様々な症状を引き起こすことです。気温が高くても、体温がしっかりと調節できれば良いのです。人間は、体温が上がると汗をかいて体温を調節しようとします。汗が気化することによって身体の熱を奪っていくので、体温は下がります。しかし、湿度が高いと、汗は気化しにくくなるので、体温も下がりません。
アメリカでは、ヒートインデックスという指標が用いられており、湿度と温度の関係から人体の健康が損なわれる領域がどこかを示しています。
ヒートインデックスを見ていただくと分かるように、気温28℃において湿度が85%を越えると危険な領域になります。
同様の見方をすると、気温30℃、湿度60%でも危険です。しかし、このような気温・湿度は、日本のほとんどの住宅環境で体感できるはずです。特に、日本の古いアパートなどでは気密性が低いところがほとんどです。エアコンを付けると電気代がかかるという誤解があるため、我慢してエアコンを付けないで過ごされる方も多いです。その影響なのか、最近お年寄りが家の中で熱中症で倒れて死亡するという話を耳にするようになりました。
察しのよい方ならばお分かりかも知れませんが、湿度が高いと体感温度も高くなります。例えば、気温29℃、湿度40%における体感温度は27℃ですが、それよりも低い25℃でも湿度が80%まで上がると体感温度は28℃と高くなるのです。7〜8月の真夏の炎天下よりも6月の梅雨の時期の方が蒸し暑さを感じるのは、まさに湿度の高さが原因です。
窓を開けて風通しをよくするのは、湿度管理には逆効果!?
夏の高温多湿な環境の中で窓を開けて換気をすることは、湿度管理の点では逆効果となります。確かに、室内にこもった空気を、窓を開けて綺麗にしたいという気持ちはよくわかります。
では、なぜ窓を開けることは湿度管理には逆効果なのでしょうか?
例えば、エアコンをつけて室内を気温27℃、湿度50%に調節していたとしましょう。室内は涼しくて快適な一方で、家の外はあったかくて湿った空気となっています。仮に外の絶対湿度が23g/kgだったとしましょう。窓を開けた途端に、家の外の湿った空気が一気に室内に入り込んできます。その湿った空気が、室内で冷やさせることによって、家の中で結露が発生します。
結露は目に見えにくいものなので、もう少しわかりやすい例を挙げてみましょう。
夏場でガンガンにエアコンの効いた喫茶店において、窓ガラスの外側に結露が大量に発生しているのを目にしたことはないでしょうか?これは、逆転結露といわれる現象です。このような逆転結露は、ガラスが単板ガラスの場合に発生しやすくなります。通常ならば、エアコンによってガラスの室内側が冷やされるのですが、断熱性の低い単板ガラスですと外側まで冷やされてしまいます。冷えたガラスの表面に、外の湿った空気が当たることによって、ガラスの表面で結露が発生するのです。
夏場においては、外の空気は湿っていることを忘れてはいけません。外の湿った空気が室内の空気で冷やされることによって、結露が発生するのです。したがって、夏場に窓を開けて風通しをよくすることは、弊社としては絶対におすすめできません。
もちろん、外が25〜27℃で湿度が40%であれば、当然ならが通風をしても問題ありません。しかし、現在の日本の都市部において、6月〜9月いっぱいまでは、通風をしてもよいような気温・湿度になることはほぼないでしょう。
除湿機・加湿器が湿度管理に効果的でない理由
快適な湿度を保つために、夏に除湿機を利用されている方もいらっしゃると思います。けれども、ちょっと待ってください。除湿機を利用することは、湿度管理のための根本的な対策にはなりません。
ほとんどの家庭で使われている除湿機は、コンプレッサー型のものです。コンプレッサー型の除湿機は、エアコンや冷蔵庫と同じ仕組みで室内の除湿を行います。
引用:三菱電機サイトより
除湿機の中には冷媒があり、圧縮機によって圧力を変えることによって、冷媒を気体と液体間で状態変化を起こさせます(冷媒にはフロンが使われることが多いです)。圧力を下げることによって冷媒は液体から気体に変化しますが、このとき周りから熱を奪うため、冷媒の周りは冷やされるのです。この原理を利用し、室内の湿った空気を除湿機に集め、冷やして結露させるのが除湿機の仕組みになっています。
気体状態の冷媒は、圧縮することによって再び液体に戻りますが、液体に変化する際に熱を外に放出します。冷蔵庫の裏側を触ってみると、生暖かさを感じますが、これはまさに冷媒が液化した際に熱を放出しているからです。
つまり、除湿機によって室内を除湿すると同時に、室内を温めているのです。エアコンの場合には、室外機を通して外に暖かい空気を捨てていますが、除湿機の場合には熱を家の中に捨てているだけです。
除湿機の種類として、多孔質のゼオライトに水分を吸収させる「デシカント式」というものがありますが、コンプレッサー型の除湿機に比べれば除湿性能は圧倒的に低いです。
次に、加湿器について見ていきましょう。加湿器において懸念すべき点としては、理想の湿度を保つのにエネルギーを大量に消費することです。仮に、市販の加湿器で快適な湿度環境を維持しようとするならば、5〜10台もの加湿器を設置しなければなりません。
また、リビングだけは暖かいが浴室やトイレなど他の部屋が寒い状態ならば、そういった場所で水蒸気が冷やされて、結露の原因になります。
後ほど詳しく話しますが、家を快適な湿度にするならば、高断熱・高気密な家づくりを行うのが根本的な対策であり、除湿機や加湿器はあくまで補助的な役割に過ぎません。
除湿して湿度を快適に保つならばエアコンがベストな選択か?
家の中を除湿して快適な湿度を保とうとするならば、除湿機よりもエアコンの方が圧倒的に効率は良いです。除湿機とエアコンの除湿量を比較すると、以下の通りとなります。
装置名 | 除湿量(g/h) | 消費電力(W) | 除湿量/消費電力(g/W) |
---|---|---|---|
除湿機(コンプレッサー式) | 416 | 290 | 14.3 |
除湿機(デシカント式) | 145 | 285 | 0.51 |
除湿機(ハイブリッド式) | 383 | 535 | 0.71 |
エアコン(ドライ運転) | 1296 | 450 | 2.88 |
引用:『ホントは安いエコハウス』(松尾和也著、日経BP社)より
除湿機として、コンプレッサー式、デシカント式、ハイブリッド式(コンプレッサー式とデシカント式の両方の機能を組み合わせたタイプ)の3種類と、エアコンのドライ運転で比べてみましたが、エアコンの方が消費電力あたりの除湿量は圧倒的に高いことがわかっています。
除湿機の方が除湿の性能が高いという誤解が、日本の多くの家庭で広まっているのが現状です。
とはいえ、エアコンで除湿すれば全てが解決するわけではありません。このあと説明しますが、家の気密性が確保できていなければ、外の湿った空気が次から次へと室内に入ってくるので、エアコンは常に除湿を続けなければならないのです。
家の湿度管理ができない一番の原因は気密性の低さにあり
さて、ここからようやく、家の湿度管理をするための根本的な対策をお伝えしていきます。
皆さんは、湿度管理のために一番大切なことは何だと思いますか?
先ほど申し上げましたように、除湿機を使って家の中を除湿することは、快適な湿度を保つための根本的な対策には繋がりません。
一番大事なのは、家の中の気密性を確保することです。気密性が低い家ですと、せっかくエアコンや除湿機で除湿を行ったとしても、すぐさま外の湿気が隙間を通して家の中に入ってきてしまいます。
エアコンで冷え冷えの状態の室内に、外からのあったかくて湿った空気が入ってきたらどうなるでしょうか?先ほどの湿り空気線図をイメージしてください。
外からの湿った空気は、室内に入ったときに冷やされて結露してしまいます。この結露が、健康や家の耐久性に与える影響は、先ほどお話しした通りですね。
気密性は、「C値(隙間相当面積)」という指標で表すことができます。C値とは、家の中の隙間を集めた隙間面積(㎠)を延べ床面積(㎡)で割ったものであり、C値の単位は㎠/㎡となります。つまり、家の気密性が低い(隙間が大きい)ほど、C値は大きくなるのです。
では、日本の住宅におけるC値はどれくらいでしょうか?
残念ながら、日本の住宅においてはC値の基準が存在しません。平成14年以前には、北海道のような寒冷地ではC値2.0㎠/㎡以下、それ以外の地域ではC値5.0㎠/㎡以下という基準がありました。とはいえ、C値2.0㎠/㎡以下であったとしても十分な気密性とは決して言えません。
仮に床面積が100㎡の家の場合、C値2.0㎠/㎡がどれくらいの隙間かと言いますと、ハガキ1.3枚相当もの隙間になります。C値5.0㎠/㎡にいたっては、ハガキ3.4枚相当の隙間です。これだけの隙間があるのに、どのように家の湿度管理をしろというのでしょうか?
いまはC値の基準すらなく、一般的な住宅ではC値が8㎠/㎡というのが普通です。仮にC値が10㎠/㎡だとしたら、およそ32cm四方の穴が空いているに等しいのです。こうなると、もはや議論の余地すらありません。
気密が悪い住宅は、どんどん勝手に空気が入れ替わります。温度も湿度も一定になるように移動を繰り返すので、気密が悪いと温度・湿度の変化も大きくなります。
ウェルネストホームにおいては、全棟でC値0.2㎠/㎡を平均基準としています。これは、北海道の気密性の水準の10分の1しか隙間がないことを意味します。100㎡の住宅であれば、わずか消しゴム2個分の隙間しかありません。これだけの気密性を確保するには、職人による高精度の施工が求められます。
もしC値が0.3㎠/㎡を下回った場合には、気密工事を中断して全棟で気密工事のやり直しを行なっています。
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気密性が高くても材料選びを間違えると、室内で出た水蒸気を除湿できない
家の気密性を高めることが、湿度管理を行う上で大事な要素であることがお分かりいただけたと思います。気密性を高めることで、外からの湿った空気を家の中に入れることを防ぐことができ、室内を一定の快適な湿度に保つことができるのです。
しかし、忘れてはならないことが1つだけあります。それは、湿気は外からだけでなく家の中でも発生するということです。
人間は当たり前のように呼吸をしたり汗をかいたりしますが、このような活動だけで人体からたくさんの水蒸気を出しているのです。1日に室内で出す水蒸気の量は、15〜20リットルにも及びます。
いくら気密性を高めて外から湿気が入ってこないようにしても、家の中から発生する湿気は防ぎようがないですよね。
そこで大事になってくるのが、家の中に水蒸気を吸ったり吐き出したりしてくれる材料をいかに取り入れるかです。例えば、「木材選び」も重要な要素になります。
木は立ち木の状態ですと、木そのものの重量の倍以上の水を吸っています。木を建築材料として使用するには、8〜9割の水を乾燥させなければなりません。そして、木を乾燥させる方法によって、建築材料として使用したときに、空気中の湿気を吸ってくれるかそうでないかが全く違ってくるのです。
木材は、木を乾燥させる方法によって「KD材(人工乾燥材)」と「AD材(天然乾燥材)」に分類されます。AD材の方が圧倒的に調湿性能に優れています。KD材は、湿気を全く吸ってくれません。何故ならば、木を乾燥させる際に、「導管」と呼ばれる細かな隙間がすべて潰れてしまうからです。
顕微鏡などを使って、木材のつくりを細かくみてみることにします。すると、下の画像のように、木材には導管という小さな隙間が無数に存在することが分かります。導管の中に湿気を取り込むことによって、木材は調湿効果を発揮することができるのです。
導管を生かしたまま天然乾燥させたのがAD材です。一方で、強制乾燥によって導管表面が潰れてしまい湿気を吸えなくなったのがKD材です。
ウェルネストホームでは木材以外にも、ビニールクロスを使わずに壁紙と漆喰と量を使用したり、断熱材にセルロースファイバーを採用するなど、調湿性能の高い材料を使用しています。また、床材もすべて無垢のフローリングを使用しています。
私たちは、どの材料を使用することによって、どれくらいの量の水蒸気を吸ってくれるかを計算の上で、住宅の設計・施工を行なっているのです。
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湿度を快適に維持する3つの条件
さて、今まで話してきたことの総括として、湿度を快適に維持するための家づくりの3つの条件をまとめました。
3つの条件とは、
- 家の気密性を高める
- 調湿性能の高い材料を使用する
- エアコンで室内を除湿する
となります。①→②→③の順番に対策していくことがポイントです。
湿度を快適に維持する条件①:家の気密性を高める
一番はじめにやるべきなのが、家の気密性を高めることです。気密性を高めなければ、家の隙間から外からの湿った空気が家の中に入りたい放題の状態です。気密性の低い状態でどれだけ除湿を行おうとも意味がありません。
先ほど、気密性能の指標としてC値(隙間相当面積)の話をしましたね。日本の住宅においては、残念ながらC値の基準はなく、隙間だらけの家が多いという現状です。
ウェルネストホームの住宅は、C値の平均が全棟で0.2㎠/㎡であり、寒冷地である北海道で規定されていた気密性能の基準の10倍にも及びます。
快適な住宅をつくるため、断熱性能とセットで欠かせないのが「気密性」です。 気密性とは、「どれだけ隙間のない家か」ということ。 「風通しの良い家の方が良いんじゃない?」とお考えの方もいらっしゃると思いますが、 すき間のある家は、温まりにくく、底冷えし、花粉や有害な科学物質が入 ...
湿度を快適に維持する条件②:調湿性能の高い材料を使用する
気密性能を高めたとしても、家の中では日常的に水蒸気が発生するということも話しました。そういった家の中で発生した水蒸気を除湿するには、調湿性能の高い建築材料を使用するしかありません。
木材としてKD材を使用していたり、壁紙にビニールクロスを使用している住宅では、残念ながら湿度管理は難しいでしょう。AD材(天然乾燥材)や漆喰、セルロースファイバー、無垢フローリングのような調湿性能の高い材料を使用することが、家の中の調湿につながるのです。
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湿度を快適に維持する条件③:エアコンで室内を除湿する
この段階までくれば、あとはエアコンを使用して室内の除湿を行うだけです。除湿性能は、除湿機に比べてエアコンの方が圧倒的に高いことを、皆さんも学ばれたはずです。
除湿といえば除湿機を思い浮かべていたと思いますが、それは大きな勘違いです。本当に室内の湿度を快適な状態に保つならば、まずは家の性能を上げることが大事なのです。
また、エアコンの正しい使用方法をご存知でない方も多いと思いますので、後日改めて解説していきたいと思います。