シックハウス症候群の不安を解消する家さがし3つのポイント
最近、実家がリフォームをしたばかりだが、帰省するといつも頭が痛くなる。
新築の家を買った友人が、いつも体調不良を訴えている。
よくわからないけど、家にいると何だか体調が悪い。
皆さんが抱えていらっしゃるこんなお悩みは、もしかしたらシックハウス症候群かもしれません。
- シックハウス症候群になった場合に出る症状
- シックハウス症候群の診断方法
- 高気密な家はシックハウス症候群になりやすいのか?
- シックハウスの不安のない家探しのポイント
この記事にて、上記の内容を中心にお話ししていきます。
皆さんがこれから住宅の購入を検討する段階ならば、皆さんの家族が健康の面で不安のない家探しの指針にしていただけることは間違いありません。
※WELLNESTHOME創業者の早田がyoutubeチャンネルでシックハウスについて解説している動画はこちら
contents
シックハウス症候群とはなにか?
シックハウス症候群は、家の中にある汚染物質が原因で起こるさまざまな症状のことです。
- 化学物質(ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなど)
- ダニ、カビなどのアレルゲン
汚染物質としては上記のようなものがありますが、この記事の中ではあくまで化学物質由来のシックハウス症候群に焦点を当てて説明していきたいと思います。
とはいえ、カビ、ダニの存在も無視はできませんので、こちらは家づくりラボの記事カビの生えない家の条件|カビと湿度の不都合な真実にて、詳細をお譲りしたいと思います。
こんな症状はもしかしたらシックハウス症候群かも
シックハウス症候群を単なる健康障害として片付けてはなりません。シックハウス症候群には、医療関係者がまとめてくれた診断項目があるのです。その一つとして、北里研究所病院環境医学センターがまとめたシックハウス症候群と化学物質過敏症に対するチェックリストがあります。
こちらのチェックリストを参考にしてみて、ご自身の症状がシックハウス症候群に当てはまるかどうかを参考にしてみてください。あくまで参考ですよ。もし医学的にはっきりさせるならば、次の章でご紹介する医療機関にかかってみてくださいね。
ちなみに、化学物質過敏症の場合には、こういった症状は発生源から遠ざかれば症状は軽くなるのですが、シックハウス症候群の場合には発生源から離れても慢性的に症状が現れるので厄介です。
(以下の診断項目は、『月刊建築技術2019年1月号』に掲載された内容から抜粋したものです)
主症状として現れるもの
- 持続あるいは反復する頭痛
- 筋肉痛あるいは筋肉の不快感
- 持続する倦怠感、強度の疲労感
- 関節痛
- アレルギー性皮膚疾患
副症状として現れるもの
- 咽頭痛
- 微熱
- 腹痛、下痢または便秘の繰り返し
- まぶしい、目のかすみ、ぼけなど
- 集中力、思考力、記憶力の低下
- 感覚異常、嗅覚・味覚異常、臭気による幻覚、手足末端のしびれ
- 精神症状(ときに興奮状態、うつ状態、精神的不安定、不眠)
- 皮膚の疾患(アトピー、蕁麻疹、湿疹などの皮膚の炎症、アフター、全身のかゆみ)
- 月経過多、生理痛時疼痛など
シックハウス症候群は医療機関で診断してもらえるのか?
こういった症状は、皆さんにも心当たりがあるのではないでしょうか?
とはいえ、シックハウス症候群でなくとも、こういった症状は出てもおかしくありません。「本当に自分はシックハウス症候群なの?」って思っても、多くの医療機関で行なっているのは問診くらいのものでして、正しくシックハウス症候群を診断してくれる医療機関が少ないのが実態です。
その中でも、シックハウス症候群と化学物質過敏症をエビデンスに基づいて診断してくれる医療機関が、北里研究所病院です。当院は、化学物質過敏症とシックハウス症候群の判定方法を独自で開発し、これらの症状を世の中に広く認知させた医療機関でもあります。前章に挙げた診断チェックリストは、北里研究所病院さんが使用しているものです。
当院では、シックハウス症候群と化学物質過敏症を診断するのに採血や神経学的眼科検査を行います。また、本当にシックハウスによるかの裏を取るために、事前に室内の空気環境の測定も必要になります。
結構めんどくさいなと感じるかもしれませんが、もし皆さんが「シックハウス症候群の診断を正確にやってもらわなければ困る」という話ならば、ぜひ診断されてみてはいかがでしょうか?
詳しくは北里研究所病院さんのHPでご確認ください。
(弊社は、北里研究所病院さんとは一切の関連はありませんのでご注意ください)
実は化学物質まみれだった家の中
シックハウス症候群を診断してもらえるかどうかも大事だと思いますが、皆さんとしてはシックハウス症候群の不安から解放されたいという気持ちの方が強いのではないでしょうか?
シックハウス症候群を診断してもらったとしても、根本的な原因(家の中に存在する化学物質)が解決したわけではありません。そこで、まずは自分のご自宅に潜む化学物質の存在を知らなければなりません。
自分の住む家が、実は化学物質まみれだったとは、皆さんも想像だにしていないでしょう。しかし、実際には家の中にはありとあらゆる化学物質が使われているのです。
2003年に施行されてから、ホルムアルデヒドとクロルピリホスという2物質についての規制が設けられましたが、これは家に使われている化学物質の中でほんのわずかに過ぎません。
家の中でどのような化学物質が使われているのか、詳しく見ていきたいと思います。
家の中に潜む化学物質①:壁紙(ビニールクロス)
ビニールクロスという名前を、皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?ビニールクロスは、製造から施工の中で、ありとあらゆる化学物質が使われているのです。
ビニールクロスの原材料は、塩化ビニル(略して塩ビ)という物質です。塩ビは配管や継手として使われるくらい硬い材料です。これを壁紙として使えるように、可塑剤(硬い材料を柔らかくする添加剤)を加えて柔らかくします。
ほかにも、ビニールクロスを製造する過程で以下のような添加剤も加えられます。
- 安定剤
- 難燃剤
- 発泡剤
- 着色剤
- 防カビ剤
これらの化学物質が揮発することによって、人が吸い込んでしまうことだってあるのです。
さらに、ビニールクロスを壁に貼るときに使われる接着剤にはホルムアルデヒドが使われます。シックハウス法の施行から、どこのメーカーでもF☆☆☆☆(フォースター)というホルムアルデヒドを放出する量の少ない製品を出していますが、出る量が少ないというだけでホルムアルデヒドを出していることに変わりはありません。
ホルムアルデヒドについては、後半で詳しく説明したいと思います。
家の中に潜む化学物質②:接着剤
接着剤が使われるのはビニールクロスだけではありません。
家の中では、トータルで100kg以上もの接着剤が使われることがあるのです。
たとえば、フローリングにも接着剤が使われていることをご存知でしたか?
無垢フローリングになれば話は別ですが、それ以外のほとんどのフローリングで接着剤が使われます。
ご自宅で使われているフローリングをじっくり眺めてみてくださいね。板と板の継ぎ目がないでしょうか?この継ぎ目をつなぐのに接着剤が使われています。
また、フローリングの種類の1つである複層フローリングでも、接着剤が使われています。複層フローリングは、合板や木材繊維を固めてつくった基材の上に薄い板を貼ってつくられたものです。板同士の貼り合わせているのは接着剤です。重ね合わせる板の枚数が多いほど、そのぶん使われる接着剤も多くなります。
家の中に潜む化学物質③:断熱材
ヒートショックやZEH(ゼッチ)というキーワードが世の中に定着するようになり、家の断熱性能に興味を持たれるようになった方もいらっしゃることと思います。
しかし注意しなければならないのは、断熱材の中にも化学物質が使われているものがあるということです。(もちろん、全ての断熱材というわけではないのでご注意を)
たとえば、壁の中で施工されることの多いグラスウールという断熱材。ガラス繊維同士の接着のためにホルムアルデヒドが少量使われることがあります。
先ほども申し上げたように、シックハウス法の施行後には、各社ともF☆☆☆☆(フォースター)またはノンホルムアルデヒドの建築材料を使われるようになりました。しかし、F☆☆☆☆(フォースター)だからと言ってホルムアルデヒドが含まれていることに変わりはないし、ホルムアルデヒド以外の化学物質が含まれている可能性はあるのです。
余談になりますが、以前に断熱材の難燃性(燃えにくさ)を確かめるのに、セルロースファイバー、ロックウール、グラスウールを燃やす実験をやったことがあります。このときの動画が残っているので、ぜひご覧になってみてください。
(3分39秒から実験がスタートします)
動画の中では触れておりませんが、グラスウールを燃やしてみると、すごく不自然な匂いがするんですよ。何の匂いかは特定はできませんが、石油を燃やしたような匂いがするのが分かります。何らかの化学物質が含まれている証拠だと思います。
家の中に潜む化学物質④:防蟻剤
防蟻剤は、シロアリによる被害を防ぐために木材などに塗布される薬剤のことです。家庭用の防虫剤として使用されることがあるピレスロイド系、有機リン化合物などがあります。
これらの防蟻剤も、注入してから少しずつ揮発してくるので、人間が吸い込む可能性だったあり得ます。防蟻剤が5年に一度のペースで再塗布が必要と言われているのは、防蟻剤が揮発してなくなる時期の目安が5年だからです。
シックハウスの被害がいやだから、いっそのことシロアリ駆除なんていらないという方もいらっしゃるかもしれませんが、そうなれば皆さんが住む家がシロアリの被害に遭うのも時間の問題です。
シロアリ対策についての詳細は、シロアリ対策予防工法のデメリットを比較!緑の柱はもう古い?【新築を建てる人必見】にて詳しく解説しています。
シックハウス症候群の不安のない健康・快適な家探しにまつわる誤解
家に使われている化学物質を取り上げてみましたが、いかがでしょうか?
この記事で取り上げたのは、シックハウス症候群の原因となる化学物質のほんの一部に過ぎません。
「家の中ってそんなに化学物質まみれだったの?」って驚かれるかもしれませんね。しかし、もし皆さんがシックハウス症候群の症状を訴えるならば、納得感もあるのではないでしょうか。
もちろん、医療機関で診断、治療してもらうのもありかもしれませんが、読者の皆さんの中には、シックハウス症候群の不安に怯えることなく、健康に暮らしたいと望まれている方もいらっしゃることでしょう。
しかし、そんな暮らしを実現するにあたり、多くの方が誤解していることが2つあります。それは、以下のようなことです。
- 「自然素材ならば大丈夫」という誤解
- 「家の高気密化がシックハウス症候群の原因だ」という誤解
上記のような誤解があるのは、私たちとしても非常に問題であると考えています。そこで、この2つのポイントについて、詳しく掘り下げて説明していきたいと思います。
①「自然素材ならば大丈夫」という誤解
「シックハウス症候群の不安のない家」と聞いて、「自然素材の家」を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか?
自然素材といえば、皆さんは何をイメージされますか?
- 無垢材
- 珪藻土
- 漆喰
たしかに、こうした自然素材を建築材料に使えば、化学物質は家からなくなるでしょう。非常に大事なポイントです。しかし、化学物質が家からなくなれば全てが安泰なわけではありません。シックハウス症候群のもう一つの原因となるカビ・ダニは防げるでしょうか?
カビ・ダニを防止するならば、結露の防止、室内の調湿は欠かせません。
- 室内の湿気をどれくらい吸放湿できるか?
- 断熱性・気密性が確保されているか?
上記のようなことを考慮した家づくりが必要になります。
②「家の高気密化がシックハウス症候群を招く」という誤解
シックハウス症候群の話をすると、うたい文句のように出てくるのが以下のようなフレーズです。
「家の高気密化がシックハウス症候群の原因だ」
「うちの家は気密性がそこそこだから、24時間換気は不要だ」
こんなことをドヤ顔でおっしゃる方もいるのですが、残念ながらこれは家づくりのことを全くわかっていない証拠です。
はっきり申し上げますが、シックハウス症候群の予防には、家の高気密化が絶対に欠かせません。何故ならば、家の気密性が高くなければ、換気によって家の中の汚染物質をうまく外に排出できないからです。
今回は化学物質が由来のシックハウス症候群を取り上げてきましたが、本来シックハウス症候群の原因になるのは化学物質だけではありません。カビ、ダニといったハウスダストもシックハウス症候群の原因となるのです。
24時間換気システムは、室内に溜まった汚れた空気を外に排出する側(排気)と、外の綺麗な空気を室内に入れる側(給気)の2つで成り立っています。もし気密性が低い(家中に隙間がある状態)ならば、給気側からの計画的な換気を行うことができず、隙間から入りたい放題となります。
これはちょうど、穴の空いたストローで吸い込むのと似たようなイメージですね。
隙間にはフィルターのような気の利いたものなどありませんから、花粉やPM2.5などの汚染物質も室内に入りたい放題の状態となります。
計画的な換気を行うならば、気密性の指標となるC値(隙間相当面積)はできる限り0㎠/㎡に近づける必要があります(つまり、隙間がまったくない状態)。
WELLNEST HOMEでは、計画的な換気を担保する意図もあってC値の平均値として0.2㎠/㎡を実現しています。
高気密が必要なのは何も換気だけの問題ではありません。
室内の湿度、温度をコントロールする上で高気密化は必要不可欠なのです。この辺りの話をすると長くなりそうなので、別の記事に譲りたいと思います。
【湿度と気密性の関係についての記事】
【温度と気密性の関係についての記事】
まとめ:シックハウス症候群の不安のない家づくり3つのポイント
今回、(化学物質に起因する)シックハウス症候群について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
日本の医療機関ではまだマイナーなものの、エビデンスに基づいてシックハウス症候群を診断、治療してくれる医療機関はあります。しかし、いくら診断、治療方法があったとしても、シックハウス症候群の原因となる化学物質が家の中に存在する限りは安心できません。
- 壁紙
- 接着剤
- 断熱材
- 防蟻剤
家の中に数え切れないほどの化学物質が使われています。もはや、法律で規制するには限界があるくらいの量です。そのため、まずは化学物質を使わない自然素材で家をつくることが大事になります。
その上で、家の中の空気の入れ替えも必要なので、24時間換気も欠かせません。換気の効率を最大限に高める上で、家の高気密化は必須となります。
もう一度、ポイントをまとめますね。
- 家の建築材料として化学物質に依存しない自然素材のものを使用していること
- 家の高気密化を図る
- 24時間換気によって家の中の汚染物質を排出する
皆さんが、これからシックハウス症候群の不安のない家探しを行うならば、上記3つのポイントをおさえた上で家を探してみてください。
【参考情報1】シックハウス症候群に対する国の施策
国の施策ってたくさんあってわかりにくいんですよ。
念のため、上の通りまとめてみました。
そして、結論から言えば、法律で使用が規制されている化学物質は、ホルムアルデヒドとクロルピリホスの2つだけです。
ホルムアルデヒドについては、建築材料から放出するホルムアルデヒドの量に応じて、面積が規制されています。先ほどから何度か出てくるF☆☆☆☆(フォースター)と言うのがこれに該当します。詳しい話はあとで説明しますね。
クロルピリホスは、シロアリ駆除剤として使われている薬剤ですが、今では住宅のなかでは使用が禁止されています。
「家でたくさん化学物質使われているのに、規制されているのはたった2つだけかよ!」と突っ込みたくなるところですが、まさにその通りです。
国があげた施策の中で、化学物質を完全に規制するには限界があるのです。だからこそ、皆さん一人ひとりが、信頼できる家を作ってくれる工務店、ハウスメーカーを探す目を養っていく必要があります。
ここから先はあくまで参考程度ですが、シックハウス症候群に対して国がとる3つの施策について説明します。
①13化学物質に対する濃度指針値の設定【厚生労働省】
厚生労働省では、シックハウス症候群の対策として、13種類の化学物質について室内濃度の指針値を出しています。(数値はあくまで参考として載せただけなので、覚えなくても大丈夫です)
化学物質の種類 | 室内濃度の指針値 |
---|---|
ホルムアルデヒド | 100μg/㎡ (0.08ppm) |
アセトアルデヒド | 48μg/㎡ (0.03ppm) |
トルエン | 260μg/㎡ (0.07ppm) |
キシレン | 870μg/㎡ (0.20ppm) |
エチルベンゼン | 3800μg/㎡ (0.88ppm) |
スチレン | 220μg/㎡ (0.05ppm) |
パラジクロロベンゼン | 240μg/㎡ (0.04ppm) |
テトラデカン | 330μg/㎡ (0.04ppm) |
クロルピリネス | 1μg/㎡ (0.07ppb) |
フェノブカルブ | 33μg/㎡ (3.8ppm) |
ダイアジノン | 0.29μg/㎡ (0.02ppm) |
フタル酸-n-ブチル | 220μg/㎡ (0.02ppm) |
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | 120μg/㎡ (7.6ppb) |
問題なのは、これらはあくまで指針であって規制をかけるものではないということです。しかも、指針が出されているのがたったの13物質ですから、正直に申し上げて不十分と言わざるを得ません。
②住宅における6化学物質の濃度測定【住宅性能表示制度】
上記13物質のうち、6物質について(建主からの希望があれば)住宅の化学物質の濃度を測定することができます。
1999年に制定された品質確保促進法(品確法)のなかで定められた住宅性能表示制度になります。
- ホルムアルデヒド
- アセトアルデヒド
- トルエン
- キシレン
- エチルベンゼン
- スチレン
簡単に言えば、この制度は国土交通省がハウスメーカー、工務店に対して与えるお墨付きのようなものです。国のお墨付きをいただいた業者さんには、以下のようなマークをつけて住宅を建てても良いということです。(画像:国土交通省より)
皆さんにとって、この制度にメリットがあるかと言いますと、正直な話ほとんどありません。
「第三者機関のお墨付きが与えられている工務店さんだから安心なのかな?」と思うところもあるかもしれませんが、あくまで参考程度に見ておくくらいにして下さい。第三者機関からお墨付きをもらっているからといって、化学物質を使っていない家を売っているわけではないからです。
③シックハウス法による2化学物質の使用規制
2003年7月に施行されたシックハウス法によって、ホルムアルデヒドとクロルピリホスという2種類の化学物質の住宅での使用が制限されるようになりました。
クロルピリホスの使用は原則的に使用禁止となっています。
ホルムアルデヒドは、先ほども話に挙がったように、壁紙やフローリングの接着剤など内装の仕上げなどに使われています。
この場合には、ホルムアルデヒドの発散速度(mg/㎡・h)ごとに規格を定め、規格ごとに使える建築材料の面積が制限されることになります。
規格 |
ホルムアルデヒドの発散速度 [mg/㎡・h] |
使える範囲 換気回数0.5〜0.7[回/h] |
使える範囲 換気回数0.7[回/h]以上 |
---|---|---|---|
F☆ | 0.12 | 使用不可 | 使用不可 | F☆☆ | 0.02〜0.12 | 床面積の0.3倍 | 床面積の0.8倍 | F☆☆☆ | 0.005〜0.02 | 床面積の2倍 | 床面積の5倍 | F☆☆☆☆ | 0.005以下 | 無制限に使える | 無制限に使える |
先ほどから何度か話に挙がったF☆☆☆☆(フォースター)というのは、ホルムアルデヒドの発散速度がいちばん少ない建築材料につけられた規格なんですね。
F☆☆☆☆(フォースター)の建築材料は、ホルムアルデヒドの発散が少ないため、制限を受けることなくいくらでも使って構わないという感じです。
F☆☆☆☆(フォースター)が安全なわけではない
勘違いしないでいただきたいのは、F☆☆☆☆(フォースター)の建築材料が使われているから安全だというわけではありません。
発散速度が小さいだけであって、ホルムアルデヒドが使われているという事実に変わりはないからです。
シックハウス法の施行後、新築住宅におけるホルムアルデヒドの室内濃度が、先に示した厚生労働省の指針値を超える住宅はゼロになったという調査結果も出ていますが、それでもシックハウス症候群の患者数がゼロになったわけではありません。
どれくらいの濃度でシックハウス症候群になるかは個人差がありますし、ホルムアルデヒド以外の化学物質の影響、カビ・ダニによる影響などが複合的に絡んで現れることもあるのです。
【参考情報2】シックハウス症候群と化学物質過敏症の違い
シックハウス症候群と化学物質過敏症を、用語として使い分けている文献やWebサイトはたくさんあるものの、両者を明確に定義しているものがないのが現状です。
どちらかといえば、シックハウス症候群の方は、化学物質による症状、カビ、ダニのアレルゲンによるアレルギーの全てを含めた症状という意味で、化学物質過敏症よりも広く定義されるものと考えています。イメージとしては以下のような形です。
化学物質過敏症は、アレルギー反応と同じように、少量の化学物質に対して免疫が作用するという説もありましたが、今はWHOでも化学物質そのものの毒性によって引き起こされる疾病として認められています。
(あくまでWHOが認めているというだけであって、世の中的な認知はまだまだ浅いですが)
この記事では、化学物質に起因したシックハウス症候群だけを取り上げていますが、実際のシックハウス症候群は、カビ、ダニのアレルゲン、化学物質への暴露などが複雑に絡み合って発症しているので、これという原因をピンポイントに特定できないのが難しいところです。