私は早田宏徳と申します。中学を卒業して、高校は「陸上自衛隊少年工科学校」に入隊（進学）しました。しかし、左官業を営んでいた両親の影響もあり、18歳から建築業の仕事に関わることになりました。父方の祖父も母方の祖父も建築業を営んでいましたので、若くして社会に出て、建築業界に身をおくのは運命だったようにも思います。

職人として働きながら腕を磨き、21歳で独立し、外壁工事請負業を始めました。とにかく丁寧に、誰よりも一生懸命働くことを心がけ、1年間で800棟ほどのサイディング工事の販売施工管理を手がけるまでに成長しました。そんな時、ローコスト住宅業界で日本一といわれていた企業の社長に声をかけていただき、購買部部長として入社。24歳で統括部長に就任し、取締役営業本部長を務めるなど、6年間在籍しました。

その後、「本当によい家をつくりたい」という思いが強まり、仙台に拠点を置く、当時の日本でトップクラスの高性能住宅メーカーに移りました。年間300棟の販売責任者を務め、取締役として会社の未来を担っていた――その頃のことです。

日本で最高の家をつくっているという自負を抱いていた私は「世界はどのくらいすごいのか」を自分の目で確かめたいと思い、2007年に初めてドイツを訪れました。そこで目の当たりにした現実は、私の「最高の家をつくっている」という自信を木っ端微塵に打ち砕いたのです。

実は、世界最高峰だと思い込んでいた日本の家は、ドイツの建築基準を満たしておらず、「ドイツでは建てることができないレベルの性能の家」だったのです。日本の家は、家をつくるプロでさえも「冬は寒く、夏が暑くて湿度が高い」のが当たり前だと思い込んでいました。家を買う人たちもそれを当然と考えていたのです。

しかし、ドイツは違いました。冬でも夏でも、「家は快適な温度と湿度が保たれているのが当然」という考え方だったのです。夏も冬もエアコンをつけっぱなしにしないと暮らせないような家は、もはや家ではないと言わんばかりの違いに愕然としたことを覚えています。

そして、高性能なドイツの家は、気密性と断熱性に優れ、熱が逃げにくいため、冷暖房を始めとするエネルギー消費が非常に少なくすむのです。さらに、ドイツの人たちは省エネルギーや再生可能エネルギーにも非常に関心が高く、住宅はもちろん、生活の中に当然の仕組みとして浸透していました。

衝撃を受けて帰国した私は、日本で「よい家づくり」をする足がかりとして、各地で講演やセミナーを行いました。これまで家をつくってきた建築関係者や、家を実際に建てる職人たちにこそ、ドイツで見てきたことを知ってほしかったのです。

当時の日本では「よい家をできるだけ安く」つくることが主流だったため、最初は理解されないこともありました。しかし、実際にデータを示しながら、もっと快適な暮らしができること、家が原因になっている病気を予防できること、地震に強く、長持ちする家がつくれること、省エネルギーの家は長期的には非常に経済的なこと、などの話をして同志を集めていきました。

そんな中、2011年3月に東日本大震災が起こりました。電力が不足し、世の中は省エネルギーに意識を向け始めました。真剣にエネルギーと暮らしについて考えざるを得なくなったのです。加えて、エネルギー価格は年々上昇しており、それが継続すれば家計に大きな影響を与えることになるでしょう。化石燃料や原発に頼らない発電方法についても考えていかなければなりません。

「家を建てる」ということは、人生において最も高い買い物ではないでしょうか。私たちが理想とする高性能な家をつくるには、一般的なハウスメーカーの数倍もの断熱材を使う必要があります。そのぶん材料費は上がり、工期も長くなり、職人の人件費も増えます。さらに、職人の技術を高めるための教育にも投資が欠かせません。

ならば「まず私たちが、自分たちでやって見せよう！」そんな思いが日に日に強まり、同志たちと力を合わせて、2012年、四国・高松の地でウェルネストホームの前身となる「低燃費住宅」を立ち上げました。

まだ実績のなかった私たちを信じ、初年度から50組ものお客様にご依頼をいただきました。こうして、私たちが思い描いた理想の家が次々に形になっていったのです。お客様が心から満足してくださる姿を見て「私たちの目指した方向は間違っていなかった」と確信しました。

そして、「自分たちも最高の家をつくりたい」と、全国から志を共にする仲間たちが次々に集まってきました。こうしてウェルネストホームが考える「よい家」を実現するための基盤が築かれていったのです。

長くなりましたが、これが私が「日本の本当の家づくりを正したい」という思いで歩んできた道のりです。多くの家を建てられるようになり、広告に頼ることなく、口コミだけでお客様が来てくださるようになりました。建築費用は一般的な大手ハウスメーカーと同水準に抑えながらも、性能では圧倒的に優れているという自負があります。

日本の未来のために、そして未来の子どもたちのために、「よい家」という選択肢があることを、もっと多くの方に知っていただきたい。この思いと大切な情報が家づくりに関わるすべての人、そしてご家族に届くことを心から願っています。