断熱材の種類・断熱材の選び方を徹底解説します
断熱材を断熱性能だけで判断してはいけません。たしかに、断熱材のカタログを見れば熱伝導率も載っています。断熱材ごとの値段も調べることができます。しかし、断熱性能があるかどうか、値段が安いかどうかという単純な考えて断熱材を選ぶべきではありません。
「こんなはずじゃなかった」
「断熱性が高いと聞いていたのに、冬は寒くて仕方がない」
皆さんが住宅を買ったあとに後悔しないように断熱材の種類、特徴について正しい情報をお伝えいたします。
「WELLENEST HOME創業者 早田宏徳が語るシリーズ-内断熱?外断熱?断熱材の特徴と違い|セルロースファイバーとグラスウールとロックウール」では、断熱材のうち繊維系断熱材であるセルロースファイバー、グラスウール、ロックウールの特徴について、動画で詳しく解説しています。
※WELLNESTHOME創業者の早田がyoutubeチャンネルで断熱材について解説している動画はこちら
contents
あなたの家の寿命が短い原因は断熱性の低さにあり
皆さんは、この事実をご存知ですか?
日本の住宅の平均寿命は、世界的にみても圧倒的に短いことを。
まずは、下のグラフをご覧ください。
こちらのグラフを見て、どのようなことに気づきましたか?
そうです。日本の住宅だけが、やたらと平均寿命が短いのです。
アメリカやイギリスの住宅は、平均寿命が50年以上というのが普通なのに対し、日本の住宅はたった約30年という短い平均寿命です。
日本の住宅の平均寿命は、なぜここまで短いのでしょうか?
簡単に言うと、日本の家は腐りやすいからです。家の腐れを引き起こしている真犯人は、壁の中で生まれる結露(壁体内結露)です。そして、壁体内結露が発生するのは、家の断熱性が低く、家の中で温度差が発生するためです。
皆さんのご家庭では、エアコンを使っていますでしょうか?
エアコンを使っていないご家庭の方が珍しいくらいですよね。エアコンのおかげで、リビングや寝室が暖かく保たれています。ところが、浴室や北側にあるお部屋を暖かいと感じる方は少ないのではないでしょうか。
脱衣場で服を脱いだら寒くありませんか?
皆さんが寒いと感じているならば、皆さんの家では壁の中に結露が発生している可能性が高いです。
壁の中に結露が発生すると、カビが生えると同時に、木材を腐らせる菌が繁殖するようになり、長い年月をかけて家を腐らせていくのです。
断熱性の低い住宅に住み続けると、あなたの寿命も縮まる!?
断熱性の低い住宅に住み続けることは、家の寿命を縮めるだけでなく、冷え性(冷え症)やヒートショックなどによって皆さん自身の命にも影響する恐れがあります。
皆さんは、ヒートショックという言葉をご存知でしょうか?
ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所に移動するとき、温度差が身体に対して負荷をかけてしまうことです。最悪な事態としては、心筋梗塞や脳梗塞まで引き起こしかねない恐ろしい現象です。
ヒートショックは、リビングなどの暖かい部屋から浴室へ移動するときに起こりやすいものです。皆さんは、まだ若いご年齢だから何ともないのかも知れませんね。歳を重ねるほどヒートショックが身体にかける負担は大きくなります。こちらのデータをご覧ください。
上の統計データを見ていただくとわかるように、75歳以上の日本人の高齢者が浴室で溺死する割合が、諸外国に比べて圧倒的に高いのです。
冬になると取り沙汰されるヒートショック。日本では、交通事故の2倍近くの方がヒートショックで亡くなっていることをご存知でしたでしょうか?ヒートショック対策として、ヒーターを浴室などに導入される方も多いですが、家の断熱性・気密性を高めないと根本的なヒートショック対策にはなりません。ヒ ...
ヒートショックを防ぎ、家の中で快適に過ごすためには、家の高断熱化は欠かせないものです。
近畿大学の岩前研修室の研究データによりますと、高断熱の住宅に転居することによって、気管支喘息や喉の痛み、せき、アトピー性皮膚炎などが、転居前よりも改善の兆候が見られたのです。
ヒートショックの詳細は、ヒートショックの原因と対策は?寒い家で自宅が凶器!?シックハウスより怖い健康被害の記事にて解説しています。
家の断熱性は断熱材選びで決まる
家の断熱性を高めるカギは、断熱材選びにあります。
断熱材にもさまざまな種類があります。
例えば、繊維系の断熱材として、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、インシュレーションボードがあります。また、プラスチック由来の断熱材として、ビーズ法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームがあります。
いまご紹介しただけでも9種類もの断熱材があります。
皆さんは、数ある断熱材の中で、どの断熱材を使えば家の断熱性を確保できるか分かりますか?
おそらく、分かるとはっきり答えられる方の方が少ないでしょう。
結論から申し上げます。9種類の断熱材の中で、WELLNEST HOMEとして使用を積極的におすすめしていない断熱材はあります。
たとえば、現場発泡式のウレタンフォームは大量に使っていません。なぜならば、ウレタンフォームは引火性が高い素材だからです。つまり、ウレタンフォームに火をつけたら比較的燃えやすいのです。さらに、ウレタンフォームは燃えたときに有毒のシアン化水素を発生します。
万が一、皆さんの家が火事になったとしても、引火性が高かったり有毒ガスを発生する可能性がある断熱材は使わないようにしています。
また、グラスウールは安価な断熱材として、多くの工務店で使われています。ただし、グラスウールのいちばんの弱点は、湿気に弱いことです。グラスウールが水でグショグショに濡れてしまったならば、たちまち断熱材として使い物にならなくなります。
一方で、使用をおすすめしている断熱材の1つにセルロースファイバーがあります。セルロースファイバーは、綿のような形をした断熱材です。これを壁の中に吹き込んで充填していきます。そのため、セルロースファイバーの方がボード状の断熱材に比べて高い精度で施工ができ、気密性も取りやすいです。セルロースファイバーは、水を吸ったり吐いたりできる呼吸する素材なので、壁の中の結露発生を防止でき、木材の腐れの防止にもつながります。
断熱材の種類や選び方について、次章以降で詳しく話していきますね。
断熱材とはなにか?
さて、ここまでお読みいただき、家の高断熱化の重要性を理解いただけましたか?
ここからは断熱材についてもっと具体的な話をしていきます。
断熱材とは、家の外皮(屋根・壁・床・窓をひっくるめて外皮という)を取り囲み、家の外と中の熱のやり取りをシャットダウンしてくれる材料のことです。洋服に例えるならば、ダウンジャケットのようなものです。
当たり前のことを申し上げるようで恐縮ですが、断熱材の性能でいちばん大事なのは、熱を通しにくいかどうかです。熱を通しにくいかどうかを表す指標として、熱伝導率があります。熱伝導率とは、厚さ1メートル・面積1㎡の断熱材を隔てて、両側に1℃の温度差があるとしたとき、1秒間にどれくらいの熱量が移動するかを表す数値です。熱伝導率の単位としては、[W/m・K]となります。
当然ながら、熱伝導率の低い断熱材の方が、断熱性能は高いです。この記事の中でご紹介する断熱材の熱伝導率を、以下の通り表にまとめました。
断熱材の種類(大分類) | 断熱材の種類 | 熱伝導率(W/m・K) |
---|---|---|
繊維系断熱材 | グラスウール(10K) | 0.050 |
繊維系断熱材 | グラスウール(32K) | 0.036 |
繊維系断熱材 | ロックウール | 0.038 |
繊維系断熱材 | セルロースファイバー | 0.040 |
繊維系断熱材 | インシュレーションボード | 0.052 |
発泡プラスチック系断熱材 | ビーズ法ポリスチレンフォーム(4号) | 0.041 |
発泡プラスチック系断熱材 | 押出法ポリスチレンフォーム(1種) | 0.040 |
発泡プラスチック系断熱材 | 硬質ウレタンフォーム(1種) | 0.029 |
発泡プラスチック系断熱材 | ポリエチレンフォーム | 0.042 |
発泡プラスチック系断熱材 | フェノールフォーム | 0.020 |
その他 | 木材 | 0.130 |
その他 | 鉄筋コンクリート | 2.300 |
その他 | アルミニウム | 200.000 |
熱伝導率の小さい材料ほど、断熱材として優れています。
グラスウールについては、繊維の密度が高いほど熱伝導率が小さくなります。数字の後ろについている「K」というのはkg/㎥のことです。つまり、密度の小さい10Kよりも密度の大きい32Kの方が断熱性能が高くなります。
上にあげた断熱材の中では、フェノールフォームの断熱性が圧倒的に高いですね。しかし、断熱材の性能を見る上では、熱伝導率以外の指標についてもしっかりと見なければなりません。断熱材の詳細については、これから詳しく解説していきます。
ちなみに、熱伝導率ってどのように決まるかご存知ですか?
実は、熱伝導率は素材自体の熱の通しにくさだけで決まるわけではありません。素材の中に含まれる空気の移動(対流)、素材自体から発する遠赤外線などの電磁波(輻射)も影響します。
もう一度まとめますね。
断熱材の断熱性能を決めるのは、以下の三要素となります。
- 伝導:素材自体の分子運動によって熱が伝わること
- 対流:素材の中の空気の移動によって熱が伝わること
- 輻射:素材の温度に応じて発する電磁波などにより熱が伝わること
これらがトータルに影響することで断熱材の熱伝導率が決まります。
対流という意味では、断熱材の中に空気をうまく取り込むことも、断熱性能を高めることにつながります。発泡プラスチック系断熱材は、プラスチックの中に小さな空気の塊を無数に作ることで断熱性能を高めているのです。
ちなみに、単板ガラスの窓よりもペアガラス、トリプルガラスの窓の方が断熱性が高い理由をご存知でしょうか?
その要因としては、ガラスそのものの熱伝導率が低いからではありません。ガラスとガラスの間の空気が断熱材としての役割を果たしているからです。
素材の中に空気を閉じ込めることが、どれだけ断熱性に影響するのかお分かりいただけますでしょうか?
上の熱伝導率の一覧表に、参考までに木材、鉄筋コンクリート、アルミニウムの熱伝導率も一緒にのせておきました。アルミニウムの熱伝導率だけがやたらと高いですね。ご存知の方も多いと思いますが、アルミニウムといえばサッシに使われている代表的な素材です。日本の大半の住宅において、アルミサッシが使われています。冬に室内で暖を取っていたとしても、アルミサッシを触るとキンキンに冷たかったという経験をされた方も多いはずです。
それもそのはずです。アルミサッシを経由して、家の中の熱が外に逃げているからです。アルミサッシの窓は、住宅の断熱性を低下させる大きな要因となっているのです。
断熱材の種類は、繊維系断熱材と発泡スチロール系断熱材の2種類
断熱材の種類としては、素材によって繊維系断熱材と発泡プラスチック系断熱材の2つに分けることができます。繊維系断熱材と発砲プラスチック系断熱材を、素材ごとに細かく分けると、断熱材の種類としては9種類となります。まずは、繊維系断熱材と発泡系断熱材がどのような断熱材なのか、簡単に説明していきますね。
断熱材の種類①繊維系断熱材
繊維系断熱材は、細かい繊維の間に空気を閉じ込めることによって機能する断熱材のことです。上の画像で示すように、細かい繊維が複雑に絡み合っているのが繊維系断熱材の特徴です。繊維自体の太さや繊維の密度によって熱伝導率は異なります。細い繊維をギュッと密に詰めた断熱材ほど、熱伝導率は高くなります。
断熱材の種類②発泡プラスチック系断熱材
発泡プラスチック系断熱材は、プラスチック素材の中に無数の細かい泡を閉じ込めている構造の断熱材です。わざわざこんな風に書いたので察していただけると思いますが、発泡プラスチック系断熱材の断熱性は、プラスチック自体が熱を通しやすいかだけでなく、閉じ込めている泡の大きさや数によっても変わってきます。
繊維系断熱材4種類の特徴を比較
さて、ここからは断熱材の種類を個別に確認していきたいと思います。
まずは、繊維系断熱材の以下の4種類について解説していきます。
- グラスウール
- ロックウール
- セルロースファイバー
- インシュレーションボード
繊維系断熱材①:グラスウール
グラスウールは、ガラス(主にリサイクルガラス)を高温で溶かし、綿状にした細い繊維の集まりのことです。細い繊維同士が絡まり合うことによって空気を閉じ込め、軽量かつ断熱性の高い素材として活用することができます。
住宅においては、屋根・天井・床・壁用の断熱材として使用されています。
また施工方法も様々です。ボード状のものをカットして施工したり、吹き込みのタイプの施工方法もあったりします。
グラスウールのいちばんの特徴としては、繊維系断熱材の中でも価格が安いことです。だからこそ、多くの施工現場でグラスウールが使われています。
安くて断熱性の高い素材ならば、皆さんとしてもグラスウールを使った方が断然よいと思いますよね?
カタログスペック上は、ロックウールやセルロースファイバーと比較して熱伝導率も大差はありません。
しかし、カタログ上のスペックが同じだったとしても、それだけで高い断熱性能が発揮できるとは限りません。グラスウールのいちばんのネックは、湿気に弱いということです。ですから、グラスウールが大量に水分を吸収してしまうと、水の重みでグラスウールが潰れてしまうのです。そうなると、壁の上部が断熱材のない隙間だらけになってしまい、壁が本来の断熱性能を発揮できなくなります。
グラスウールの施工後に気密シートを貼れば、湿気の問題は解決されるでしょう。しかし、皆さんが利用される工務店が、気密シートを貼ってくれるほど丁寧にグラスウールを施工してくれるのかどうか、しっかりと確認した方がよいですね。
水を吸ってしまうという弱点を補うために、グラスウールを袋詰めにした状態で施工することもできます。下の画像のようなイメージです。
引用:建材ダイジェスト
グラスウールを袋に詰めることによって、恐ろしい結露の脅威から守ることができるのです。そのため、グラスウールを袋から出しては絶対にいけません。
しかし、袋詰めのグラスウールにも問題があります。
今度は下の画像をご覧ください。
このように狭い隙間に充填する場合には、袋詰めのグラスウールでもカットして充填せざるを得ません。
袋詰めのグラスウールをカットすると、中のグラスウールがむき出しになります。むき出しになった部分にビニールを巻くなどの防湿対策をしなければ、そこから結露してグラスウールがぐしゃぐしゃになってしまいます。
(上記の施工事例では、ちゃんとグラスウールの上から防湿シートを貼っています)
グラスウールは安いというメリットがあります。しかし、湿気に弱いというデメリットを解消するような対策(グラスウールをむき出しの状態で施工しないこと)をしなければ、断熱材としての性能を発揮することができません。
また、グラスウール本来の断熱性能を発揮する上で、施工精度も大事です。グラスウールはボードの状態で工場から出荷されます。ボード状のグラスウールを、柱と柱の寸法に合うようにカットします。
カットした寸法が大きすぎても小さすぎても、グラスウール本来の断熱性能を発揮することができません。グラスウールが本来の高い断熱性能を発揮するには、職人による高精度の施工が求められるのです。
施工精度が出るように、ボード状ではなく吹き込みタイプのグラスウールもあります。吹き込みタイプであれば、ボードのカット寸法のずれなど気にする必要はないですよね。しかし、吹き込みタイプの場合にもグラスウールは剥き出し状態になっています。そのため、グラスウールにビニールシートを被せるなどの防湿対策を施さないと、グラスウールがビショビショに濡れて使い物にならなくなります。
グラスウールついてもう一つ懸念されるのが、空気汚染の問題です。実は、グラスウールはもともと繊維状になっているものを、接着剤でボード状に固めています。その接着剤の原料はホルムアルデヒドです。常温ではホルムアルデヒドが飛散することはありませんが、加熱することによって揮発して大量に飛散する可能性があります。グラスウールを燃やしてみると、石油のような匂いがします。それは接着剤成分のホルムアルデヒドが揮発して空気中に飛散している証拠です(なかなかグラスウールを燃やすことはありませんが、機会があれば試してみてください)。
グラスウールについて、かなり否定混じりの発言が多くて申し訳ありません。グラスウールは原材料自体が安価であり、輸送・施工コストも安いので、多くの住宅で手軽に供給される断熱材として普及したのはたしかです。
繊維系断熱材②:ロックウール
引用:ROCKWOOL社の公式サイトより
ロックウールは、その名の通り岩を原材料にして作られた鉱物繊維です。
ハワイ島マウナロア火山という場所で発見されたウール状の繊維がきっかけとなり、欧米を中心に岩石等の繊維化技術が始まりました。
ロックウールは、ケイ酸と酸化カルシウムを主成分とする鉱物を、溶鉱炉の中で1500〜1600℃で加熱し、遠心力などで吹き飛ばすことで繊維状にしています。原材料としては、玄武岩のような天然鉱物を用いる場合もありますが、鉄鋼スラグが原材料として用いられることもあります。つまり、日本においてはJFEロックファイバーなどのメーカーがロックウールの製造を行なっています。しかし、日本のほとんどのメーカーが作っているのは、原材料を鉄鋼スラグとするスラグウールです。
WELLNEST HOMEでは、同じロックウールでも、イタリアのROCKWOOL社による天然の玄武岩由来のミネラルウールを断熱材として使用しています。
ロックウールのいちばんの特徴は、熱に強い・燃えにくいということです。600℃まで加熱しても燃えることなく、形状を維持することができます。そのため、WELLNEST HOMEにおいては、ロックウールを外張り断熱に使用することによって、家の断熱性を高めると同時に、火事に強い家にしています。
注意しなければならないのは、ロックウールはグラスウールと同様に湿気に弱いということです。
繊維系断熱材③:セルロースファイバー
セルロースファイバーは、回収した新聞古紙を主原料にして作られた、環境に優しい断熱材です。セルロースファイバーは、断熱材として高い断熱性能を誇るだけではありません。吸放湿性、防音性、防火性、防虫効果など、断熱以外に多くの性能を発揮してくれるスーパー断熱材です。
グラスウールやロックウールはボード状に成形された断熱材であり、施工現場で一定の寸法にカットして埋め込んでいます。そのため、カット寸法のずれによって隙間ができ、住宅の気密性の低下、断熱性の低下を招きます。
一方セルロースファイバーは、下の写真のように綿のような状態になっています。これを壁の空洞に吹き付けていくのです。したがって、グラスウールやロックウールと違い、隙間ができる可能性も低く、安定して断熱性を発揮することができます。
セルロースファイバーのメリットはそれだけではありません。セルロースファイバーは湿気を吸ったり吐いたりしてくれる呼吸する素材です。そのため、セルロースファイバーを断熱材として施工すれば、室内の湿度をコントロールすることができます。グラスウールには、セルロースファイバーのような調湿性能はありません。
さらに、セルロースファイバーの充填量にも注目してください。セルロースファイバーをたくさん充填するほど、より多くの湿気を吸収できます。
仮に、外皮全体をグラスウールで充填したとします。それでもグラスウール全体の充填量はせいぜい50〜100kgくらいです。しかし、セルロースファイバーを吹き込みで充填したらどうなるでしょうか?充填されるセルロースファイバーの重量はトータルで約1.5〜2トンくらいです。グラスウールの30倍近くのセルロースファイバーを充填できるのです。
私たちがセルロースファイバーを断熱材として使用する理由は、断熱性能だけではありません。湿気をコントロールすることにより、壁の中でカビや腐れ菌が繁殖するのを防ぐことにつながります。
〜プロも知らない家づくりに絶対失敗しないための断熱材の大切な話〜夏は涼しく、冬は暖か、健康を守り、お金がかからない家の秘密は「断熱材」にあり!新築住宅を建てるとき、皆さんは何に一番こだわりますか?間取り、デザイン、価格、室内整備などなど…。様々な答えがありますが、意外と知られてい ...
繊維系断熱材④:インシュレーションボード
引用:大建工業株式会社公式サイトより
インシュレーションボードは、細かく粉砕した木材を、一定の厚みで固めてボード状にしたものです。残念ながら現状では断熱材として使用されることはほとんどありません。いちばん大きな要因としては、木材ということでシロアリにやられやすいことがあります。さらに、熱伝導率もほかの断熱材に比べれば劣ります。インシュレーションボードは、養生材など、断熱材以外の用途で使われることが多いです。
木材のチップに対してアスファルトを添加したのがシージングボードです。シージングボードは、サイディングボードなど外壁用の下地として使われることが多い材料ですね。
木材を使用した天然の断熱材という期待感もあったのではないでしょうか。少し残念な気持ちになりますね。欧州では未来の断熱材として開発も進められています。WELLNEST HOMEにおきましても、断熱材として実用化されたインシュレーションボードを将来的に使うことになるかもしれませんね。
発泡プラスチック系断熱材5種類の特徴を比較
繊維系断熱材が細い繊維を素材としているのに対し、発泡プラスチック系断熱材はその名の通りプラスチック(=石油)が原材料となっています。発泡プラスチック系断熱材は、プラスチック素材の中に細かい無数の気泡を閉じ込めることで、断熱材としての機能を発揮しています。発泡プラスチック系断熱材には、以下の5種類があります。
- ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
- 押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
- ウレタンフォーム
- 高発泡ポリエチレンフォーム
- フェノールフォーム
発泡プラスチック系断熱材①:ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)とは、いわゆる発泡スチロールのことです。
発泡スチロールは、よく保冷容器として使われているのをご存知ですか?
例えば、発泡スチロールの容器の中に、釣ったばかりの魚を氷を入れて保存していますよね?
いわゆる魚箱です。魚を魚箱に入れておくことにより、鮮度を保ったまま保管しておくことができるのです。
ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)は、上の画像のようにボード状で工場から出荷され、施工現場でカットして使われています。
発泡スチロールを細かく見てみると、小さな白い粒々(発泡粒子という)がたくさん集まっています。その白い粒々は、原材料となるポリスチレン樹脂をビーズ状にし、そのビーズをさらに数十倍に膨らませて大きくしたものです。
発泡粒子の中に空気が閉じ込められています。この空気が断熱材としての働きを高めてくれているのです。
引用:EPS断熱建材総合サイト
上の画像のような発泡粒子を、金型で成形したものがビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)です。ちなみに、EPSは(Expanded Poly-Styrene)の略です。
ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)のいちばんのメリットは、値段が安いということです。さらに、水も吸わないし結露もできないことも特徴的です。
しかし、ビーズ法ポリスチレンフォームには、熱に弱いというデメリットがあります。したがって、万がいち火事があった場合には、外壁が無事だったとしてもEPS自体は熱で縮んでしまい、断熱材として機能しなくなります。
ちなみに、これから解説する押出法ポリスチレンフォーム(XPS)も、EPSと同じようにスチレンを原材料として作られています。EPSとXPSの違いについては、後ほど詳しく解説しますね。
発泡プラスチック系断熱材②:押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
押出法ポリスチレンフォームは、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)と同じくポリスチレンを原材料とした発泡プラスチック系断熱材です。押出法ポリスチレフォーム(XPS)は、押出機の中でポリスチレンと発泡材を混ぜ、押出機の外に押し出されたタイミングで発泡します。これを一定の寸法にカットしたものが、施工の現場で断熱材として使われています。
1943年にアメリカのダウ・ケミカル社が押出法ポリスチレンフォームを工業化し、その後日本においては「スタイロフォーム」という商品名で普及しました。日本では、カネカが「カネライトフォーム」、積水化成品工業が「エスレンフォーム」という商品名で、それぞれ生産を行なっています。
ポリスチレンという同じ原材料が使われていることから、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)と押出法ポリスチレンフォーム(XPS)が比べられることも多いです。
押出法ポリスチレンフォーム(XPS)の方が、一個一個の粒々の大きさが、EPSに比べて小さいです。そのため、押出法ポリスチレンフォーム(XPS)の方がビーズ方ポリスチレンフォーム(EPS)よりも断熱性が高いです。
水に強いが熱には弱いという特徴は、XPSもEPSも同じです。
発泡プラスチック系断熱材③:ウレタンフォーム
ウレタンフォームは、ポリイソシアネートとポリオールという成分を、発泡剤や触媒などと一緒に混ぜてできた材料です。
皆さんの身近では、ソファーのクッション材、まくら、食器洗い用のスポンジなどにウレタンが使われています。このウレタンを発泡させ断熱性能を高めたのが、断熱材として使われるウレタンフォームです。
ウレタンフォームには主に、工場で発泡しボードの状態で出荷する硬質ウレタンフォーム、現場でスプレーすると同時に発泡させる現場発泡式ウレタンフォームの2種類があります。
施工現場でよく使われるのは、現場発泡式ウレタンフォームです。なぜならば、現場発泡式の方が簡単に断熱材を充填しやすく気密も取りやすいからです。先ほども説明しましたが、ボード状の断熱材は、現場でカットして埋め込んでいかなければなりません。そのため、硬質ウレタンフォームですと、ボードの寸法が狂うと気密性・断熱性が損なわれてしまいます。
一方、現場発泡式のウレタンフォームは、スプレーすると同時にその場でウレタンが膨らむ(発泡する)のです。したがって、現場発泡式の方がボード状の断熱材に比べて隙間なく充填しやすくなります。
ただし注意していただきたいのは、防湿対策を怠ってはいけないことです。ウレタンフォームは、発泡して膨らんだときに、柱からはみ出してしまう場合があります。はみ出した部分はカットしなければなりません。しかし、カットした部分に何の防湿対策も取らないと、断面から水を吸収してしまい、断熱性能が損なわれてしまいます。そのため、カットした後に気密シートを貼るなどの対応をしなければなりません。
ここまでの話を聞くと、「他の断熱材よりも現場発泡式のウレタンフォームを使った方がよいのではないか?」という意見も出てくるでしょう。実際に、湿気に弱いグラスウールよりも、ウレタンフォームをすすめる工務店もあるくらいです。
しかし、ウレタンフォームの最大の欠点は、燃えたときに有毒ガスであるシアン化水素を発生することです。つい最近、東京都内のオフィスビルで火災が起きて、5人の死亡するという事件が起きました。鉄骨の切断作業中に断熱材であるウレタンフォームに火花が引火したとのことでした。
朝日新聞DIGITAL「床の隙間に火花、階下の断熱材に引火 多摩ビル火災」
「火災なんて万が一にしか起こらないことですよね?」
そのようにお考えになられて、ウレタンフォームを良しとする意見も出てくるかもしれません。
しかし、あえて言わせていただきます。万が一、皆さんの自宅が火事になった際にも、私たちはガスで意識を失い逃げ遅れるようなことが無いようにしたいのです。火災によって亡くなる要因は、焼死だけだと思っていませんか?実際のところ、一酸化炭素中毒や窒息による死亡は焼死と同じくらい多いのです。
引用:消防庁
特に、住宅内部においてはこのような引火性があり有毒ガスを発生する断熱材を使用しないようにしています。カミナリや電気漏電によって引火する危険性もあるからです。
ウレタンフォームについて、否定的な発言が多かったですね。だからと言って、WELLNEST HOMEがウレタンフォームをまったく使っていないわけではありません。金物の結露対策として、必要最低限の量のウレタンフォームを施工しています。もちろん、ウレタンフォームをカットした断面に気密テープを貼るという防湿対策も施しております。
ウレタンフォームの施工には本当に注意が必要です。万が一、引火したときのことも考えて、ウレタンフォームを大量に施工するのが得策ではありませんね。
発泡プラスチック系断熱材④:高発泡ポリエチレンフォーム
高発泡ポリエチレンフォームは、原材料であるポリエチレンフォームに発泡剤を加えて発泡体にしたものです。ポリスチレンフォーム(EPS、XPS)やフェノールフォームのようなボード状の断熱材に比べ、高発泡ポリエチレンフォームの方が柔軟性が高く、壁や柱の間に充填しやすいという特徴を持っています。
発泡プラスチック系断熱材⑤:フェノールフォーム
引用:旭化成建材
フェノールフォームは、熱硬化性樹脂の1つ。熱硬化性樹脂とは何かと言いますと、簡単にいえば熱に強くて燃えにくい樹脂のことです。
(ビーズ法ポリスチレンフォームや押出法ポリスチレンフォームなどはその逆です。熱で簡単に変形してしまう熱可塑性樹脂といいます)
さらに、ウレタンフォームのように有毒ガスが発生したりすることはありません。ポリスチレンフォーム(EPS、XPS)のように熱で縮むこともないです。
フェノールフォームの熱伝導率は、他の断熱材よりも圧倒的に小さく、0.020W/m・Kくらいです。しかも、フェノールフォームは水を吸うこともありません。
WELLNEST HOMEでは、フェノールフォームの中でも旭化成建材のネオマフォームを採用しており、床下の断熱材として使用しています。
ここまで読んでいただきますと、フェノールフォームがまるで夢のような断熱材のように思えてしまいますね。フェノールフォームのデメリットを唯一あげるならば、他の断熱材よりも値段が圧倒的に高いことです。
さらに、フェノールフォームもシロアリに弱いですね。別にフェノールフォームに限ったことではありませんが、シロアリは発泡プラスチック断熱材も普通にかじるのです。
断熱材選び黄金のチェックリスト
断熱材は、単に熱を通しにくいかだけで選ぶべきではありません。
ここまで記事をしっかりとお読みになった皆さんならば、容易に理解できることでしょう。そこで、断熱材を選ぶときに最低限おさえておきたいチェックポイントを、以下の通りまとめました。
- 燃えにくいかどうか
- 燃えたときに有毒ガスを発生しないかどうか
- 湿気に強いかどうか
- 熱に強いか
- 施工時に気密が取れるかどうか
断熱材選びのチェックポイント①:燃えにくいかどうか
万が一、火事が起こったときのことを考えていますか?
残念ながら、ウレタンフォームのような燃えやすい断熱材を使ったならば、皆さんの家は火事が起きたら無事では済まないでしょう。
東日本大震災のような大きな地震を目の当たりにすると、「うちの家も耐震性を持たせるべきだった」と考えませんか?火災に対してもまったく同じです。万が一のような事態が起こっても、皆さんの大事な家族を守れる家が、家としての本来あるべき姿です。
WELLNEST HOMEでは、防火も考慮して外張り断熱の素材として玄武岩由来のロックウールを採用しています。
断熱材選びのチェックポイント②:燃えたときに有毒ガスが発生しないかどうか
断熱材に火がついたとしても、有毒ガスが発生しないかどうかもしっかりおさえておくべきですね。何故ならば、火災発生時の死因として、一酸化炭素中毒や窒息死は火傷と同じくらい多いからです。
例えば、ウレタンフォームが燃えると有毒ガスであるシアン化水素を発生します。シアン化水素を吸い込むと、最悪の場合、意識喪失あるいは死を招くこともあります。しかも、シアン化水素は皮膚からも吸収される可能性があるので、息を止めていても勝手に身体の中に入ってくるかもしれないのです。
上記のような考えから、WELLNEST HOMEとしては現場発泡式ウレタンフォームを大量に使うことをおすすめしておりません。
断熱材選びのチェックポイント③:湿気に強いかどうか
断熱材が水に濡れてしまったら、もはやその断熱材は断熱材として機能しません。
なぜならば、水の熱伝導率は0.582W/m・Kであり、この記事でご紹介した断熱材の10倍以上も熱を通しやすい物質だからです。
湿気に弱い断熱材の典型例がグラスウールです。グラスウールは、断熱性が高く安価に調達できる断熱材として、多くの住宅で使われています。先ほども申し上げた通り、グラスウールに適切な気密処理を施さなければ、グラスウールはたちまち水でぐしょぐしょに濡れてしまい、断熱材としての機能を損ないます。
断熱材選びのチェックポイント④:熱に強いかどうか
発泡プラスチック系断熱材の中でも、ポリスチレンフォーム(EPS、XPS)、ポリエチレンフォームは熱に弱い素材です。これらのプラスチックは熱可塑性樹脂という分類の素材であり、熱を加えることにより変形したり溶けたりしてしまいます。(フェノールフォームは熱硬化性樹脂であり、一度ボード状に成形したら熱を加えても変形することはありません)
仮に、皆さんの家の壁に押出法ポリスチレンフォーム(XPS)を充填したとします。そして、おとなりさんのお家が、不幸にも火事になったとしますよね?皆さんの家が延焼しなかったとしても、たくさん熱を浴びますよね。そうなると、壁の中に充填したXPSはどうなってしまうでしょうか?
せっかく隙間なく充填したXPSが隙間だらけになり、断熱性が落ちることも考えられますよね。
断熱材選びのチェックポイント⑤:施工時に気密が取れるかどうか
仮に断熱性の高い素材を使っても、気密性が低ければ何の意味もありません。
気密性を確保するならば、気密が取れるような断熱材の施工をしているかについてしっかりと考えなければなりません。
ボード状の断熱材を施工するならば、一定の寸法にカットする必要があります。カットする寸法がずれたならば、当然ながら断熱性・気密性は落ちます。皆さんが家を建てられる場合には、皆さんがお世話になる工務店にいる職人が、どれくらいの施工の技術レベルを持っているのかもぜひ聞いてみてください。また、気密測定をしているのかどうか、気密性の指標となるC値をどれくらいのレベルを目指しているのかも聞いてみた方が良いですね。
高気密、高断熱について調べると、 たくさんの意見が出てきます 「高気密は息苦しいからダメ!」 「気密性は高ければ高いほど良い!」 いったいどっちが正しいの!? そんな錯綜した情報に皆さまが惑わされないために、 気密性に関するメリットとデメリットをまとめます ※W ...
WELLNEST HOMEにおきましては、外張り断熱としてロックウールを採用しています。室内側にはセルロースファイバーを使用し、柱と柱の間に隙間なく施工を行なっています。
C値の平均は、WELLNEST HOMEの全棟で0.2㎠/㎡としています。C値0.2㎠/㎡とは、日本の中で一番の寒冷地である北海道における気密性の基準の10倍に及ぶほどです。