建ぺい率、容積率とはなにか?家を探す人が知っておきたい土地選びの基礎知識

建ぺい率、容積率とはなにか?
家を探す人が知っておきたい土地選びの基礎知識

土地

同じ大きさの土地でも、建ぺい率、容積率によって皆さんが建てられる家の面積の大きさが違ってくるのをご存知でしたか?

建ぺい率40%、容積率80%ってなに?
結局、どんな土地を選べばよいの?
建ぺい率・容積率は大きい方がよいの?
カーポートや倉庫を作ったら、家はそのぶん狭くなるの?

こんなお悩みに丁寧にお応えします。皆さんの土地探しの役に立ててください。

※WELLNESTHOME創業者の早田が土地の選び方について解説している動画はこちら

contents

建ぺい率、容積率とはなにか?
「土地が広い」=「広い家が建てられる」は勘違い

建ぺい率、容積率について調べているということは、皆さんはいま家の購入を検討している最中でしょうか?家を買うならば、土地探しもとても大事になりますね。皆さんは、土地を探すにあたって、どのようなことを重視していますか?

  • 駅からの距離は近い方がいい
  • 病院や学校、スーパーマーケットが近い方がいい
  • 土地はできる限り広い方がいい

おそらく、上記のような利便性を重視して土地を選ばれていないでしょうか。
皆さんの気持ちはよくわかります。しかし、気をつけなければならないことが一つあります。実は、広い土地を買ったとしても、必ずしもそこに広い家を建てられるとは限らないのです。

上記のことを理解するにあたって必要なのが、建ぺい率、容積率です。建ぺい率と容積率をしっかり理解すると、どんな土地で、どれくらいの広さの家を建てられるのかをイメージできるようになります。

建ぺい率とはなにか?

建ぺい率とは、「土地の面積(敷地面積)に対して、どれくらい広く家を建てられるか(建築面積)」を表すものです。建ぺい率を計算式で表すならば、以下の通りとなります。

この式だけを見ていても、あまりピンとこないかも知れませんね。
もう少し噛み砕いて解説していきましょう。

皆さんが家を買ったとしましょう。家を真上から眺めてみてください。

きっと上図のようなイメージになるでしょう。敷地面積とは、皆さんが買った土地の面積になります。いっぽう、建築面積は土地の中で家が占める部分の面積になります。

例えば、敷地面積が100㎡だったとしましょう。もし建ぺい率が60%だったとしたら、この土地には建築面積60㎡の家しか建てられないのです。

「え、60㎡しか家を建てられないの?
どうせ広い土地を買うならば、そのぶん広い家を建てさせてよ!」

そういう不満の声も聞こえてきそうな気がします。そもそも、建ぺい率のような面倒くさい基準が設けられている理由は何だと思いますか?

いちばん大きな理由は、防火の観点からです。極端なはなし、すべての住宅が建ぺい率100%という形で、土地に対してめいっぱい広く家を建てたとしたら、どうなるでしょうか?
きっと、このように住宅同士が密集したような状態になるでしょう。

万が一、片方の住宅で火事があったとしたら、お隣さんの住宅はどうなってしまうでしょうか?
聞くまでもありませんね。お隣さんの住宅にも火が燃え移ってしまい、火災は広がってしまうでしょう。これが2軒だけならばまだしも、何十件、何百件と同じように住宅が隣り合っていたとしたら、どうなってしまうのでしょうか。あまり想像はしたくありませんけれどもね。

また、このように建ぺい率、容積率を定める理由には、都市や自然の景観を守るという理由もあります。この辺りは、都市計画法という法律で定められた13の用途地域を学んでいただくとわかります。
用途地域とは、住宅をメインで建てるエリア、閑静な住宅街を維持するエリア、工場の立地を促すエリアなど、日本のエリアを13の区分で定めることを意味します。

容積率とはなにか?

容積率とは、「敷地面積(建物を建てる土地の面積)に対する延べ面積(建物の床面積の合計)の割合」のこと。容積率を計算式で表すのならば、以下の通りになります。

さて、ここで「延べ床面積」という、よくわからない用語が出てきましたね。
混乱しないように、じっくりと説明していきましょう。まず敷地面積は、先ほども説明したように皆さんが購入する土地の面積です。
次に延べ床面積です。延べ床面積とは、家のすべての階の床面積を足したものを意味します。例えば、皆さんが2階建ての家を建てるとします。こんな形です。

家の床面積が、1階が60㎡、2階が40㎡としましょう。そうなりますと、この家の延べ床面積は60+40=100㎡となります。

では、ここで皆さんに質問です。この土地の敷地面積が100㎡で、容積率が90%で定められているとします。この土地に、延べ床面積100㎡の家を建てられるでしょうか?上に挙げた計算式に当てはめてみてくださいね。

もうお分かりかも知れませんが、正解は建てられないです。なぜならば、この条件では延べ床面積の上限は90㎡までだからです。規定よりも10㎡もオーバーしています。もしこんな住宅を選んでしまったならば、違法建築物または既存不適格の扱いになってしまいます。

「建ぺい率、容積率が大きければ大きいほど
居心地のよい家ができる」は間違い

建ぺい率、容積率の仕組みがわかりましたね。
では、建ぺい率と容積率は大きければ大きいほどよいものなのでしょうか。皆さんは、こんな風に思いませんか?

「大きな家を建てた方が広々過ごせるじゃないか」

建ぺい率、容積率が大きければ大きいほど、その土地に建てることのできる建物の大きさが大きくなるので、土地をより有効活用できそうですよね。

しかし、住環境は建物の大きさのみで決まるものではありません。先ほども申し上げましたように、敷地面積が大きすぎると、隣の家と密着した状態になってしまいます。そうなると、風通しをよくしたいのに、風がうまく通らずに空気がこもってしまいますよね。また、日光が部屋に入りづらくなるので、何だか部屋が暗く感じてしまうかもしれません。そうなると、部屋が広かったとしても、居心地が悪そうではありませんか?

例えば、建ぺい率が60%、容積率が80%で決められている場所で、100㎡の土地をもつとします。
もし建ぺい率、容積率ギリギリの建築面積、延べ床面積で家を建てるとしたら、イメージとして下図のような家が建ちます。

自分の家だけで考えてしまうとあまりピンと来ないかも知れませんね。しかし、お隣さんが同じような家を建てたとしたら、どうなるでしょうか?
イメージとしては、以下の図のような形になるでしょうね。

たしかに、これだけお隣さん同士が密着しすぎていると、見た感じとして風通しも悪いし日当たりも悪そうですね。建ぺい率60%ならばまだしも、建ぺい率80%になると尚更ですよね。大きめの建ぺい率、容積率が定められているからといって、土地いっぱいに家を建てるのはメリットばかりではないということです。そのような場合には、少し建築面積に少し余裕をもたせて家を建ててみるのも1つの手段かもしれません。そうなりますと、以下のような形になります。

お隣さんとの間に余裕を持たせることで、日差しがが家の中に入りやすくなったり、風が通るようになったりします。お互いに、生活音を気にしなくてもよいですよね。敷地面積に対して建築面積に余裕を持たせたとしても、トータルで考えれば暮らしの質が上がるイメージが湧きませんか?

「狭い家で我慢しろ」と言っているわけではありません。土地を選ぶ基準として、広い家が建てられるかだけではなく、景観や日射などの条件も考慮に入れる必要があります。さらに、皆さんが住んでいるエリアの近隣の住民の方々と良好な人間関係が築けるかどうかも、土地を選ぶにあたっては大事なポイントになります。

実際に、高級住宅街や、古くから財界人が住んでいるような由緒ある住宅地では、建ぺい率、容積率がともに低くなっています。このような住宅地は、都市計画上は「第一種低層住居専用地域」と言われているエリアに該当します。第一種低層住居専用地域では、建ぺい率は「30・40・50・60」、容積率を「50・60・80・100・150・200」の範囲で定めるように法律で決められています。

本来ならば、このような閑静な住宅地に住んだ方が安心だと思いませんか?

例えば、東京都の中でも高級住宅街として有名な世田谷区。世田谷区の第一種低層住居専用地域では、建ぺい率を40%、容積率を80%で決められています。建ぺい率が40%ですと、100㎡の土地の中に40㎡の建築面積の家しか建てられないことになります。せっかく高いお金を払って土地を買っても、狭い家しか建てられないと損した気分になりそうですよね。

そうなりますと、建ぺい率、容積率が大きいところに家を建てた方が得でしょうか?
同じ世田谷区の中でも、「第一種住居地域」における建ぺい率は60%、容積率は200%で決められています。数字だけをみると、こちらの方が広い家を建てられそうですよね。デベロッパーによっては、こういったエリアで50坪くらいの土地を買い、建築面積10坪の家を三軒建てて分譲していることもあるくらいです。建築面積10坪の家だと狭いと感じるかもしれませんが、容積率が大きく高さ制限が緩いエリアならば、家を3階建てにすれば面積を稼げます。このような家は、たしかに安く買うことができるかもしれません。けれども、そんな安い家を買う人同士が集まって、良好なコミュニティが形成されるかどうかはわかりません。

数値にとらわれず、周辺の建物とのバランスや、敷地と建物のバランスや、どんな暮らし方がしたいか、総合的に考えて計画したいですね。

WELLNEST HOMEでは、以下のようことをトータルで検討した上で、皆さんにとって最適な土地探しをサポートしています。

  • 将来人口が増えて発展するのか、減って廃れていくのか?
  • 地震や洪水などの災害が起こっても大丈夫なのか?
  • 土壌汚染の心配はないのか?

土地探しの詳しいノウハウについては、土地の賢い探し方|日本の人口減少から読み解く土地探しの新常識にて解説しています。

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建ぺい率・容積率のルール①
ベランダ、バルコニー、テラスは面積に含まれるか?

ベランダ、バルコニー、テラスが、日当たりのよいところにあったら気持ち良さそうですね。
雨、風をよけるために、軒や庇の設置も計画したいところです。

さて、これらの空間も建築面積、延べ床面積に算入されるのでしょうか。
もしベランダ、バルコニー、テラスが延べ床面積に算入されるならば、そのぶん室内の面積が狭くなってしまうので注意したいところですよね。ベランダ、バルコニー、テラスが、建ぺい率、容積率のルールの中で、どのような扱いになっているのかを解説しましょう。

建ぺい率・容積率のルール①:
ベランダ、バルコニー、テラスは「建築面積」に含まれるかどうか

まずは、ベランダ、バルコニー、テラスのスペースが建築面積に含まれるかどうかという議論です。
結論から申し上げます。外壁面からの突出幅が1m以下の部分は、建築面積に含まれません。この事実だけ言われても、何のことだかさっぱりですよね。順を追って説明していきましょう。

ベランダ、バルコニー、テラスは、上の図のように外壁から突き出ていますよね。もし突き出ている部分の幅が1m以下ならば、ベランダのスペースは建築面積の中に含まれません。ですから、そのぶん室内をより広く設計できるのです。
注意しなければならないのは、ベランダ、バルコニー、テラスが外壁から1mを超えて飛び出ている場合です。このような場合には、飛び出た部分の面積が建築面積の中に含まれます。
そうなりますと、「ベランダ、バルコニー、テラスが1mを超えないように注意しなければならない」と言いたくなるかも知れません。けれども、1mは意外と狭いですよ。洗濯物を干すだけならばまだしも、テラスでのびのびとお昼寝をしたり、友達を呼んでバーベキューをやったりとなると、1mではまったく物足りないくらいです。

ちなみに、バルコニーの下に柱を取り付けるとなりますと、柱の内側の部分がすべて建築面積の中に含まれます。つまり、1mを超えた部分だけでなく、ベランダの面積がまるまる建築面積に含まれるようなものです。

皆さんが注文住宅をゼロから設計される場合には、建築士の方に設計をお任せすることになると思います。しかし、すべてを建築士任せにするのではなく、最低限のルールをしっかりと理解した上で、理想の家づくりに臨んでもらいたいですね。

ベランダ、バルコニー、テラスは「延べ床面積」に含まれるかどうか

次に、ベランダ、バルコニー、テラスのスペースが延べ床面積に含まれるかどうかです。先ほどの建築面積の話を理解できているならば、話は早いですね。

外壁面からの突出幅が2m以下の部分は、延べ床面積に含まれません。そうなりますと、言いたいことは分かりますよね?2mを超えてベランダ、バルコニー、テラスが突き出てしまった場合には、2mを超えた部分だけが、延べ床面積に算入されます

建築面積と延べ床面積の違いが曖昧ですと、今までの話がまったく理解できないので、2つの定義の違いはしっかりと理解しておきましょう。

建ぺい率、容積率のルール②
出窓は建ぺい率、容積率の計算に含まれる?

次に、出窓についての話をしたいと思います。出窓とは、外壁から突き出た形で設置された窓のことです。出窓があると、そこに観葉植物や雑貨などを飾り、インテリアの幅が広がりそうですよね。
その出窓ですが、基本的に建築面積・延べ床面積には含まれません。だからといって安心してもらっては困ります。以下のような出窓の形状の場合には、建築面積・延べ床面積に算入されます。

  • 出窓の真下に物置を設置する場合
  • 出窓が屋根と一体になっている場合
  • 出窓部分の天井が、室内の天井よりも高い位置にある場合

このような基本的なことを知らない設計士はいないと思いますが、皆さん自身も知るべきことをしっかりと知っておき、設計の段階から工務店、ハウスメーカー、建築事務所に突っこんで聞いてみるとよいでしょう。

建ぺい率・容積率のルール③
敷地内に車庫を設置すると建物の面積は狭くなる

皆さんは、車をお持ちでしょうか?
もし車を持たれている方ならば、家の敷地の中に車庫があれば便利ですよね。すでに想像が付いていると思いますが、車庫があると車庫の面積分が建築面積・延べ床面積としてカウントされます

念のため、建築基準法を確認してみましょう。建築基準法では、建築物として扱われるものは、家でなくとも建築面積・延べ床面積に入れなければなりません。建築基準法においては、建築物を以下のように定義しています。

「土地に定着している工作物のうち、屋根及び柱もしくは壁を有するもの」

この定義に当てはめますと、車庫は立派な建築物の扱いになりますね。もちろん、車庫だけではありません。自転車置き場、その他倉庫であっても、屋根と柱があれば建築物としてあつかわれます。

そのため、敷地の中に車庫を設置すると、家自体の面積を狭くせざるを得ません。
例えば、車一台に必要な車庫スペースの目安は以下の通りです。

  • 天井高 2.1m以上
  • 屋根、柱のみの車庫:幅2.5m × 奥行5m → 約12.5㎡
  • 屋根、柱、壁のある車庫:幅3m × 奥行6m → 約18㎡

数字だけ見てもあまりピンとこないかも知れませんが、およそ6〜8畳分のスペースが必要です。けっこう広いですね!敷地内に車庫をもうけると、確かに便利ですが、そのぶん家が6〜8畳分狭くなるので、なかなか頭が痛いところです。

けれども、ガッカリするのは早いですよ。次の項目では、緩和措置について解説します。緩和措置の条件を満たすことによって、車庫の面積の一部分は建築面積・延べ床面積にカウントする必要がなくなります。

車庫における建ぺい率の緩和措置

まずは、建ぺい率の緩和措置について説明します。

以下の条件を満たす場合、車庫の柱から1mまでの部分は建築面積に算入されません。

  1. 外壁のない部分が連続して4m以上あること
  2. 柱と柱の間の間隔が2m以上あること
  3. 天井の高さが2.1m以上であること
  4. 地階を除く階数が1であること

屋根と柱のみで作られた車庫の場合、緩和措置の条件に当てはまりそうですね。例えば、下の図で示した場合ですと、左側の2つの車庫が該当します。

一方、同じ車庫でも、家の中に収める形の車庫もあります。いわゆる、ビルドインガレージと呼ばれるタイプのものです。このようなタイプの車庫の場合、車庫のスペースはすべて建築面積に算入される可能性が高いです。なぜならば、①との兼ね合いがあるからです。もし①の条件を満たそうとするならば、ガレージの幅だけで4m以上は必要という話になります。そこまで幅の広いガレージはさすがに要らないですよね。

以上の内容をまとめますと、外壁のない屋根と柱だけのカーポートの場合には、建築面積の緩和措置を受けられる可能性が高くなります。このタイプの車庫を検討されている方にとっては、ラッキーな話ですね。

車庫における容積率の緩和措置

次に、容積率の緩和措置について解説します。

敷地内に車庫を設けた場合、その敷地内の建物の延べ床面積の5分の1は、延べ床面積としてカウントされなくなります

たとえば、車庫も含めて敷地内の建物の延べ床面積が100㎡だったとします。そのうち、車庫の面積は20㎡です。そうなりますと、100㎡のうちの5分の1ですから、20㎡は延べ床面積としてカウントされなくなります。20㎡ということは、車庫の面積が丸ごと容積率の計算から外れることになるのです。

こちらの緩和措置は、車庫の形状・構造は関係なく適用されますので、ご自身の住宅の延べ床面積を計算して照らし合わせてくださいね。

敷地内に倉庫を建てたら、建ぺい率・容積率の計算に含まれる?

荷物が入りきらない!
そのような場合には、「プレハブ倉庫をホームセンターで買ってこよう!」ということも検討されるでしょう。それでは、敷地の中に倉庫を設置する場合には、倉庫の面積は建築面積・延べ床面積にカウントされるのでしょうか?

倉庫についても、車庫と考え方は同じです。倉庫の分の面積は、建ぺい率・容積率の計算に含まれます。なぜならば、倉庫も建築基準法上は立派な建築物扱いになるからです。ただし、ここでいう倉庫というのは、中で人が作業をするような大規模な倉庫になります。たとえば、このような倉庫です。

さすがにフォークリフトで作業することはないと思いますが、イメージとしてはこのような感じです。それ以外の外から物の出し入れができ、中で人が作業できないような倉庫ならば、建築物として扱われません。つまり、こうした小規模な倉庫を敷地に設けたとしても、建ぺい率・容積率の計算に算入する必要はないということです。

家の面積が広くても、室内で広がりを感じられるとは限らない

「建ぺい率、容積率の関係で、買った土地を丸ごと家に使えるわけではない」ということがおわかりいただけましたでしょうか?しかも、ベランダ、テラス、車庫などを設けると、そのぶん家も狭くせざるを得ない場合もあるのです。

「初めに想像していたほど、広い家が建てられなくてガッカリ!」

皆さんはそのように思われていませんか?
しかし、一つだけ誤解してもらいたくないことがあります。それは、家の面積が広いからといって、家の中で皆さんが家を「広いと感じられる」とは限らないのです。

家の開口部の大きさ

例えば、窓の大きさが小さいと、いくら家の床面積が広かったとしても、窮屈感を感じてしまいます。窓が大きい方が開放感を感じることでしょう。

また、吹き抜けやロフトを設けることによって、縦方向の広がりをもたせることも、広がりを感じる上では大事です。

決して面積が狭くても大丈夫と言いたいわけではありません。しかし、建ぺい率、容積率の関係で、皆さんが想像していたよりも家の面積が小さくても、ガッカリする必要はないということです。限られた面積の中でも、室内で広がりを感じられる家をつくることは可能です。

空間に広がりをもたせるための吹き抜けや開口部の設計は、建築面積だけを眺めていても出てきません。WELLNEST HOMEでは、面積だけでなく、人間が「広がりを感じる」ことを別のものとして捉えて上で空間の設計を行なっています。

関連記事:広く感じる住宅の間取りとは?住宅設計のプロが教える5つのノウハウ

建ぺい率・容積率にまつわる2つの法律

建ぺい率・容積率のルールを定めている法律について、少し踏み込んで解説しましょう。

土地を探している時、土地が決まり家を設計している時、色んなタイミングで様々な法律・規則を知ることになります。

たくさんありすぎて、頭がこんがらがることでしょう。

その中でも、根本にある法律が、「都市計画法」と「建築基準法」です。この2つの法律にのっとり、各自治体が独自の規則を定めているのです。そこで、都市計画法と建築基準法について解説していきますね。

都市計画法

まず、都市計画法とはどんな法律なのかを見ていきましょう。

はっきり言って、条文だけ読んでも何のことだかさっぱり分かりませんね。
上の条文で言いたいことを簡単にまとめると、街づくりを無造作にやるのではなく、法律に則って計画的に行いましょうということです。

街づくりはそんなに単純なものではありません。なぜならば、未来を予測しながら計画を建てていく必要があるからです。将来、日本のどこのエリアで、人口がどのように推移し、交通網や病院などのインフラがどのように整備されていくのかを考えなければなりません。そういったことを想定しながら必要なルールを定めます。そして、ルールにもとづいて、整備、誘導し、住民が暮らしやすいように都市を発展させていきます。

具体的には、以下の3つの段階を踏んで、日本の土地をどのように都市化を進めていくかを決定していきます。

  1. 都市計画を実施していくエリア(都市計画区域)とそうでないエリアを分ける
  2. 都市計画区域内で市街化を推進するエリア(市街化区域)とそうでないエリアを分ける
  3. 上記で定めたエリアを、どういった目的で活用していくかを決定する(用途地域など)

まずは①ついてです。初めに、日本の土地は都市計画を推進するエリア(都市計画区域)、それ以外のエリア(準都市計画区域、都市計画区域外)に分けられます。

  • 都市計画区域 :計画的に都市づくりを進めるエリア
  • 都市計画区域外:それ以外のエリア。それほど人が集まっていないところなので、主だった規制はかけない地域。
  • 準都市計画区域:現在は田舎であるが、そのまま勝手に開発建設が行われると、将来都市としての整備をするときに支障が生じる恐れがある地域。

ちなみに、上記の都市計画は原則として都道府県知事で定めていますが、例外もあります。もし2つ以上の県にまたがってエリアを指定する場合には、都道府県知事の代わりに国土交通大臣んが指定することになります。

次に②についてです。都市計画区域をさらに以下の3つのエリアに分けます。この作業のことを線引きと呼んでいます。

  • 市街化区域:すでに市街地を形成している区域。または、今後10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。人や商店、ビルが多く、賑やかな地域ですね。
  • 市街化調整区域:市街化が進まないように抑える区域。農地や森林を守ることに重点を置いているため、原則として建物を建設することはできません。
  • 非線引区域:詳細な将来像が決まっていない地域。

ここまでの内容を一つにまとめると、以下のように形になります。

つまり、日本の国土は大きく5つにわけられるということになります。

都市計画はここで終わりではありません。市街化区域を、どのような目的で活用していくのかを決めなければなりません。それを具体的に定めたのが、以下に示す地域地区になります。

地域地区の分類は上記の通り別れていますが、基本的には用途地域で分類することによって、都市計画の具体策を決めていきます。

まずは、その用途地域について詳しくみていきましょう。

市街化区域の中の土地は、上記のような用途地域に分けられます。
用途地域は、大きく分けて住宅地、商業地、工業地の3つに分類されます。
さらにそれぞれを細かくして全部で13種類の用途地域に分類されます。

こちらの分類は、市町村が決定します。

住居という単語が含まれているものだけで8種類もあります。なんだか、複雑に感じますね。

しかし、そんな複雑に捉えなくても大丈夫です。たとえば、皆さんがこれから土地探しをするとします。その場合には、皆さんが気になるエリアが見つかったときに、以下の3つの手順を踏んで確認してみましょう。

その土地の用途地域がわかったら、あと一歩です。

都市計画では、住民の快適な生活のために、様々な分類が決められています。
さらに具体的な内容については、建築基準法の中で規定されています。

建ぺい率・容積率・高さ制限・建築可能な建物種別といった建物の設計に必要な具体的な条件は、建築基準法から確認しましょう。

建ぺい率・容積率にまつわる法律②:建築基準法

都市計画法は、都市の秩序ある発展に対する規制が書かれていました。

では、建築基準法とは、どのような法律なのでしょう。

建築基準法とは、建築物が満たすべき最低基準を定めている法律です。

建築物が満たすべき最低基準とは、建物自体の安全面に関することだけでなく、都市計画法により計画されている都市づくりの条件を満たしている必要があります。そのため、都市計画法と建築基準法は、密接に関係しているのです。

都市計画法では、「市街化区域を12種類の用途地域に分けますよ」というところまで定められています。しかし、都市計画法だけを眺めていても、建ぺい率、容積率がどのように絡んでくるかが分かりませんよね。

そこで、建築基準法の出番です。建築基準法のなかで、「第一種低層住居専用地域では、建ぺい率30%、40%、50%、60%とする」という形で、建ぺい率・容積率の具体的な数値が定められています。用途地域ごとの建ぺい率、容積率は、以下の通りとなります。

用途地域 建ぺい率 容積率
第一種低層住居専用地域 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
第二種低層住居専用地域 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
田園住居地域 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
第一種中高層住居専用地域 30・40・50・60 100・150・200・300
第二種中高層住居専用地域 30・40・50・60 100・150・200・300
工業専用地域 30・40・50・60 200・300・400
工業地域 50・60 200・300・400
第一種住居地域 50・60・80 200・300・400
第二種住居地域 50・60・80 200・300・400
準住居地域 50・60・80 200・300・400
準工業地域 50・60・80 200・300・400
近隣商業地域 60・80 200・300・400
商業地域 80 200・300・400
500・600・700
800・900・1000

建築基準法では建ぺい率、容積率の幅を持たせていますが、各市町村では「この用途地域で建ぺい率、容積率はここ!」と細かく定めいるので、各市町村に確認するとよいでしょう。先ほども少しお話しましたと思いますが、閑静な高級住宅街として知られる東京都世田谷区では、第一層低層住居地域における建ぺい率は40%、容積率80%で定めています。

ちなみに、上記で定められた建ぺい率、容積率はあくまでも原則です。次の項目で解説しますが、場合によっては例外として建ぺい率、容積率の緩和の対象となる場合もあります。

敷地が角地にあれば建ぺい率の緩和が受けられる

敷地が道路の2面に面しているような街区の角にある場合、建ぺい率の緩和措置が当てはまります。

なんと、建ぺい率が10%加算されるのです!

しかし、角地にあるからといって、すべての敷地に緩和措置されるわけではありません。
建築基準法53条3項二号をよく読んでみると、以下のように書いてあります。

「角にある敷地又はこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するもの内にある建築物」

つまり建築主事を置く市町村の指定する条件にあてはまらなければ、角地であっても緩和されません。

たとえば、神奈川県建築基準法施行細則(第20条第1項)の場合には、以下の通り定められています。

建ぺい率緩和が適用される場合、次の条件を満たす敷地であること。

  • 幅員がそれぞれ4m以上で、2以上の道路に接していること
  • 敷地境界線の3/10以上が道路に接していること
  • ただし、幅員が8m≦a+b<10mの場合については、角地に角切りを設け、道路状として改造した場合のみ、建ぺい率の緩和が適用される。

細かい条件があるんですね。これは、ご自身の敷地ある市町村の条件を要確認です。

建ぺい率・容積率をオーバーした家は
住宅ローンを受けられない!?

中古物件を購入しようとしている方、目星をつけている物件は違法建築物ではありませんか?違法建築物とは、「建築基準法で定められた建ぺい率・容積率をオーバーして建てられた住宅」のことです。

中古物件の場合、未申請の増改築により規定の建ぺい率・容積率をオーバーし、違法建築物となってしまった物件もあります。違法建築物の家に住んだとしても、罰せられることはありません。その代わり、そのような違法建築物を買おうとした場合に、銀行で住宅ローンが受けられないことがあります。

銀行が住宅ローンを組む場合、ローンを組んだ人が万が一、借金を返せなくなった場合を想定し、その人にお金を貸すかどうかを判断します。仮にローンの返済ができなくなった場合には、家と土地を差押えし、それを売り払って借金を肩代わりしようとします。ちょっと恐ろしい話をしてしまいましたが、あくまでローンを返済できなくなった場合のことです。

違法建築物の場合は、当たり前ですが建物に対する評価がゼロに近いので、安く売ることしかできません。そんな価値の低い建物で住宅ローンを組むことは、銀行の側からすればリスクでしかないのです。

そこまで理解した上で皆さんが違法建築物を買うならば、住宅ローンを組まずに一括払いで購入するくらいの覚悟は必要ですね。

住みたいエリアの建ぺい率・容積率は、自治体のホームページからチェックできる

皆さんが住みたいエリアの目処をつけているならば、そのエリアで建ぺい率・容積率がどれくらいかをチェックしてみましょう。チェックする方法は簡単です。各自治体のホームページを見れば、エリアごとの建ぺい率・容積率がすぐに分かります。

鎌倉市の場合を例にしてみましょう。

  1. 鎌倉市のHPの「都市計画」のページ中に「鎌倉市都市計画情報提供サーピス」という項目があります。
  2. 「用途地域等閲覧用参考図書」を開きましょう。
  3. 地図上に、都市計画の情報が描かれており、用途地域、建ぺい率、容積率等も表示されております。

あまり、難しい手順はなく、市町村が公開している都市計画の内容が反映されている地図を確認すればよいです。インターネット上で、わかりにくい場合は、市役所などの窓口で尋ねてみるとよいでしょう。すぐにわかります。

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