高気密高断熱は息苦しい?
気密性のメリットとデメリットを大公開
高気密、高断熱について調べると、
たくさんの意見が出てきます
「高気密は息苦しいからダメ!」
「気密性は高ければ高いほど良い!」
いったいどっちが正しいの!?
そんな錯綜した情報に皆さまが惑わされないために、
気密性に関するメリットとデメリットをまとめます
※WELLNESTHOME創業者の早田がyoutubeチャンネルで高気密高断熱について解説している動画はこちら
※記事の最後に、本記事の執筆者の今泉が気密について詳しく解説する動画を埋め込んでおります。ご興味が有る方は合わせてご覧ください。
contents
- 1 高気密・高断熱の住宅は息苦しい?
- 2 高気密が必要な8つの理由
- 3 「気密性が高いと息苦しい派」の主張は正しいのか?
- 3.1 1.「家づくりやうは夏をむねとすべし・・・」昔から日本では、夏向きの風通しのよい開放的な家づくりを大切にしてきた文化がある。閉鎖的な高気密高断熱な家なんて寒いヨーロッパの家で、温暖な日本にはなじまない。
- 3.2 3.ビニールで包まれた息苦しい空間で一生過ごすなんて、想像しただけでゾッとする。ビニールの服を直接来たら汗ばんで不快でしょ。せっかく木で家を建てたのに、ビニールで包んでしまったら木で建てる意味がない。木は呼吸しているのに、ビニールで包んじゃうと、息が出来なくなって木の寿命が縮んでしまう。
- 3.3 4.隙間風を防ぐために隙間を無くした結果、換気不足で換気扇を付けるなんて、矛盾している。機械に頼らないとならない不自然な状態をあえて作るなんてバカバカしい。
- 3.4 5.換気扇頼みで危うい、もし換気扇が壊れたら窒息するじゃないか。
- 3.5 6.高気密高断熱の家は空気が乾燥するからダメ。
- 3.6 7.石油ストーブが使えないなんて、なんて危険な家なんだ。
- 4 「気密性はソコソコが良い派」の主張は正しいのか?
- 5 「気密性は高いほど良い派」は正しいのか?
- 5.1 1.気密性が高いと換気が計画通りに行えるので、いつでも空気がきれい。
- 5.2 2.気密性が高いと高効率の熱交換換気が利用できるので、更なる省エネが出来るし、吸気した空気が冷たくなるコールドドラフトも起きずに快適である。
- 5.3 3.防湿層を隙間なく施工できるので、内部結露を起こさない。だから構造木材が結露で腐らず長持ち。
- 5.4 4.気密性能が高いと隙間風が少なくなるので、省エネ。
- 5.5 5.気密性能が低いと特に床の温度が下がって不快感が高まるので、快適性を考えるなら気密性能はしっかりと担保すべき。
- 5.6 6.高い気密性能を確保するために、腕の良い職人の育成に力を入れている。制度の高い施工能力と職人の技術が自社の強みだ。
- 6 高気密住宅のメリット
高気密・高断熱の住宅は息苦しい?
良い家を建てようと考えて情報を集めだすと、必ずぶち当たるのが、「気密性が高すぎると息苦しいのか?」という疑問です。
家づくりの指南書やインターネットの情報を見ると、「気密性が高いと息苦しい派」と、「高すぎても低すぎてもダメ、気密性はソコソコが良い派」そして、「気密性は高いほど良い派」に分かれています。
どれが正解なのでしょう?それぞれの主張には一理あるように感じて思い悩んでしまいますよね。
そこで、今回は良い家を建てるためには、気密性はどうするのが正解なのかについて、詳しく掘り下げてみたいと思いますので、お悩みの方はぜひご覧ください。
なお、高断熱について知りたい方はこちらをご覧ください。
「快適な家づくりを成功させる秘密は「断熱」にあり」
高気密が必要な8つの理由
まずは気密化する目的を学びましょう。
① 漏気を減らして省エネと快適性の向上(ランニングコスト低減)
② 壁体通気を減らして断熱性能の低下を防止(ランニングコストの低減)
③ 壁体内結露を防止(長寿命化)
④ 計画換気の性能保持(空気の鮮度維持)
⑤ 室内の上下温度差の解消(快適性の向上)
⑥ 安定した室内の湿度管理(快適性の向上、健康増進)
⑦ 外気汚染物質の侵入防止(空気の鮮度維持、健康増進)
⑧ 施工精度の確認(施工技術力の確認)
要約しましたが、気密化の目的は上記の8つです。どれが欠けても、ランニングコストや家の寿命、快適性などに大きな影響を及ぼします。
気密性について詳しくは「気密性」が必須な8つの理由【ハウスメーカー任せはダメ!】をご覧ください。
参照:そもそも、高断熱高気密住宅ってどんなもの? | 断熱住宅.com
「気密性が高いと息苦しい派」の主張は正しいのか?
まずは「気密性が高いと息苦しい派」の主張から確認してみましょう。
1.「家づくりは夏をむねとすべし・・・」昔から日本では、夏向きの風通しのよい開放的な家づくりを大切にしてきた文化がある。閉鎖的な高気密高断熱な家なんて寒いヨーロッパの家で、温暖な日本にはなじまない。
2.昔の家は気密なんかしなくても問題なかったが、高気密住宅が登場してから、「シックハウス」や「アレルギー」が増えた。だから気密性は百害あって一利なし。
3.ビニールで包まれた息苦しい空間で一生過ごすなんて、想像しただけでゾッとする。ビニールの服を直接来たら汗ばんで不快でしょ?せっかく木で家を建てたのに、ビニールで包んでしまったら木で建てる意味がない。木は呼吸しているのに、ビニールで包んじゃうと、息が出来なくなって木の寿命が縮んでしまう。
4.隙間風を防ぐために隙間を無くした結果、換気不足で換気扇を付けるなんて、矛盾している。機械に頼らないとならない不自然な状態をあえて作るなんてバカバカしい。
5.換気扇頼みで危うい、もし換気扇が壊れたら窒息するじゃないか。
6.高気密高断熱の家は空気が乾燥するからダメ。
7.石油ストーブが使えないなんて、なんて危険な家なんだ。
「息苦しい派」の主張は、気密性が必要な①~⑧の8つの理由と照らし合わせて考えてみると、多くの懸念は思い違いであることが判ります。
1.「家づくりやうは夏をむねとすべし・・・」昔から日本では、夏向きの風通しのよい開放的な家づくりを大切にしてきた文化がある。閉鎖的な高気密高断熱な家なんて寒いヨーロッパの家で、温暖な日本にはなじまない。
上記に関しては、歴史的思想を織り交ぜながら、気密性のを高めないほうが良いという主張であり、情緒的には理解できます。
ただし、専門的な観点からすると、開放的な間取りとなるかどうかは、気密性能ではなく窓の配置の問題です。開放的な間取りというものは、いかに窓を開けたときに風が抜ける間取りと窓の配置であるか、また、夏のギラつく日差しを直接入れずに部屋の明るさを確保できるか、という話であり、気密性とはあまり関係がありません。
本当の広さよりも広さを感じる家 住宅の購入を考えた時に最初に思い描くことは、「どんな大きさの家になるのだろう」といったことではないでしょうか。 まず最初に絶対何坪の家が欲しいとか何平米の家でないと住みづらいとか、スタート時点では面積にとらわれないことをお勧め ...
吉田兼好法師の教えに従い、夏を中心に考え、風通しを大切にした家づくりをしているのは良いと思います。具体的には、窓から風を取り込む事を「通風」と言います。足下をスースーさせる想定外の「すきま風」を「漏気」と言います。コントロール出来ず、想定外で不快な「すきま風」が良いはずがありません。特に冬のすきま風の不快さと寒さは誰しもが経験しているので説明は不要かと思います。
また、想定外の「漏気」は、冷房や暖房でせっかく調節した室内の空気を室外に捨ててしまうので、大きなエネルギーロスを発生させます。そして、室内外で発生した湿気を壁の中に運ぶことで、壁の中にカビを発生させたり、木を腐らせたりします。
残念ながら「なんとなく気密は息苦しそう」、という誤ったイメージだけで、隙間だらけの欠陥住宅が数多く建てられています。気密の意味を理解していない建築関係者が未だに多いのが、日本の住宅が世界的に見ると低レベルであり、異常なほど寿命が短い要因の1つなのかもしれません。
2.昔の家は気密なんかしなくても問題なかったが、高気密住宅が登場してから「シックハウス」や「アレルギー」が増えた。だから気密性は百害あって一利なし。
確かに、換気不足の高気密住宅によってアレルギー疾患リスクが発生することはあります。ただし、現在の日本では高気密住宅の普及率は6%以下であり、95%の住宅は断熱も気密性も不足したものが大半です。
つまり、気密化が日本人の過半数にアレルギー症状が発生している理由とするには、高気密気密住宅の普及率が低すぎます。実は、気密性が高いことだけが原因でアレルギーが増えたのではなく、断熱気密不足の住宅でのエアコンの普及に伴う部屋間の室温差の拡大、ホルムアルデヒドを大量に放出する新建材の台頭、戦後一斉に植林したスギ花粉の大量発生、社会ストレスの増大など、複合的な要因からのアレルギー増加であり、気密だけに責任を押し付けて解決するほど、単純な問題ではありません。
3.ビニールで包まれた息苦しい空間で一生過ごすなんて、想像しただけでゾッとする。ビニールの服を直接来たら汗ばんで不快でしょ。せっかく木で家を建てたのに、ビニールで包んでしまったら木で建てる意味がない。木は呼吸しているのに、ビニールで包んじゃうと、息が出来なくなって木の寿命が縮んでしまう。
木の家づくりという観点から感覚的には理解できる主張です。ただし、もし仮にエアコンなどの暖房機器を使用するのが当たり前の現在、室内側から防湿層を排除して家を造ってしまうと、気密性を高める理由にある①(省エネ)、②(断熱性能の維持)、③(内部結露の防止)をクリアーできなくなります。特に暖冷房をおこなう現代の家では「木が腐る」ので、家の寿命を低下させてしまいます。もし本当に木に囲まれた家にしたいのであれば、壁で隠れてしまう構造材よりも、むしろ床や壁、天井などの内装材を木質化したほうが、より直接的に木の呼吸や香りを堪能できます。
4.隙間風を防ぐために隙間を無くした結果、換気不足で換気扇を付けるなんて、矛盾している。機械に頼らないとならない不自然な状態をあえて作るなんてバカバカしい。
なかなか的を射た疑問ですが、残念ながら「省エネ」の観点が抜け落ちています。
隙間風の多い家では、暖房も冷房も隙間風の分だけ、余計なエネルギーが必要となります。もしくは、暖冷房が効かずに、冬は寒さに凍え、夏は蒸し暑くてつらい日々を送ることになります。家を大切にするならば人が暑さ寒さに苦しむことになり、住む人を大切にする場合は莫大なエネルギーコスト負担と共に家の寿命が縮むことを覚悟しなければなりません。
5.換気扇頼みで危うい、もし換気扇が壊れたら窒息するじゃないか。
もし停電したらどうなるのか、又は換気扇が壊れたら窒息してしまうのではないかと、確かに心配になりますね。ちなみに、マンションに住んだことはありますか?もし無かったとしても、マンションに住んでいる友人宅を訪れた経験ならだれもがあるのではないでしょうか。実は一般的なRC造のマンションの持つ気密性能がC値1.0c㎡/㎡ぐらいです。一般的な高気密住宅レベルと考えてよいでしょう。ところが、これまで私はマンションの部屋で気密レベルが高すぎて「窒息」して息が出来ない、という方にはお会いしたことがありません。また、気密性が高いといっても、完全密閉空間とは異なるため、人が数人いる程度で、酸素がなくなってしまうようなことはありません。
理系の方用にさらに突っ込んでみます。文系の方はスルーしていただいても構いません。
高校の物理で習う、呼吸の化学反応式は以下の通りです。
C6H12O6 + 6H2O + 6O2 → 12H2O + 6CO2
人間は食料から得たC(ブドウ糖)と、大気中のO2(酸素)を呼吸によって、CO2(二酸化炭素)に変換しています。人は呼吸1回で約0.5L、1時間当たり約450Lの空気を吸い込みます。そして吐き出す空気に含まれる二酸化炭素濃度は約3.8%程度のため、1時間当たりで約17Lの酸素を消費して約17Lの二酸化炭素を吐き出します。そこで、6帖の部屋(空気24,000L=酸素5,000L)で2人在室していたと仮定して計算すると、仮に完全密閉状態だったとしても、酸素の限界濃度18%に到達するのは21時間後となります。なお、二酸化炭素濃度のほうが先に活動限界点1.5%に達するため、実際には10.5時間が限界点と考えられます。とはいえ、高気密住宅といえども完全密閉にすることは不可能です。また、室内は全体的につながっており、わずかな隙間があれば、風圧などで緩やかに外気と空気の入れ替えを行うため、このようなことが起きることはありませんのでご安心ください。
6.高気密高断熱の家は空気が乾燥するからダメ。
暖房しても乾燥しなかったのは開放型ストーブと、エアコンで暖房する場合を比較していたからです。どちらもエアコンで暖房するのであれば、むしろ隙間の多い昔の家のほうが、室内の湿気が外に逃げてしまうため、より乾燥します。
7.石油ストーブが使えないなんて、なんて危険な家なんだ。
これに関しては、気密性というよりは開放型ストーブの問題です。その証拠に、隙間だらけの家であっても、必ず定期的な換気をしなければならないと石油ストーブの説明書には注意書きがあります。その暖房方式ゆえに一酸化炭素中毒のリスクを持つ、開放型ストーブの生産量は年々低下しており、2007年のシャープを最後に大手家電メーカーは全社撤退しています。隙間の多い家ではエアコンでは火力が足りずに、より火力の強い石油ストーブを使うご家庭も多かったと思いますが、現在の高気密・高断熱住宅では、エアコンでも十分に温かい空間を作ることが出来るため、命がけで暖房する時代ではなくなっています。
以上長々と書いてしまいましたが、「気密性は低いほうが良い派」は、冷暖房もないほど昔ながらの家づくりを行う工務店に多く見られる主張です。(古民家や神社仏閣、その他伝統建築などでかつ冷暖房を使用しない特殊な建物)注意点としては、暖冷房を使用する現代の住宅には、一部そぐわない考え方が存在しているのかもしれません。
「気密性はソコソコが良い派」の主張は正しいのか?
次の「気密性はソコソコが良い派」はここ10年ぐらいで発生してきた考え方です。
彼らの主張は以下の通りです。
1.気密性は髙すぎても息苦しいし、低すぎても快適性と省エネの問題がある。だからその間をとって、中気密が良い。
2.高断熱にするが、高気密までは必要ない。程よい気密性を保ち、昔ながらの風通しがよいように設計するので快適になる。
3.うちはセルロースファイバーを使用しているので気密性能は高いはず。セルロースの調湿効果で、夏は湿気を吸い、冬は湿気を吐き出してくれるから、室内にビニールを敷き詰める必要がない。
4.国の基準にも気密性能の基準は無くなっている。国が必要ないと言っているのだから、手間とコストをかけてまで高気密に拘る必要はない。
1.気密性は髙すぎても息苦しいし、低すぎても快適性と省エネの問題がある。だからその間をとって、中気密が良い。
1は、いかにも日本人らしい真ん中をとる発想がこの派の主張です。「昔ながらの思想も、快適性も、省エネも全部いいとこ取りしちゃおう」という考え方なのだと推察されます。言葉遊びとしては面白いですが、この主張をしている工務店の大半は、気密の目的の①(省エネ)だけだと考えていることに注意が必要かもしれません。気密化には他にも②(断熱性能の維持)、③(内部結露の防止)という観点、そして④(計画換気)という目的を忘れたままにしてはいけません。高気密・中気密で家を建てると②~④に不具合が発生してしまうので、それぞれに別途対策が必要となることを忘れてはなりません。もし忘れてしまうと、将来床下からキノコが生えてきてしまうかもしれませんので。
2.高断熱にするが、高気密までは必要ない。程よい気密性を保ち、昔ながらの風通しがよいように設計するので快適になる。
これも同じく②③④を忘れています。具体的に突っ込むと、高断熱化しても中気密だと②(断熱性能の維持)の通り、グラスウールなどの繊維系断熱材の場合は断熱材への隙間風の侵入によって断熱性能が低下してしまいます。つまり、せっかく分厚くした高断熱が気密レベルに応じて下がってしまいますので、勿体ありません。また、③(内部結露の防止)が必ず発生するので、キノコが生えるリスクの高い施工方法です。省エネ技術レベルが低い、又は設計力が未熟な会社によくあるパターンですので、この手の主張は特に注意が必要です。
底に穴の開いた魔法瓶をイメージしてみて下さい。穴の開いた魔法瓶で、中に入っている飲み物の温度を維持できると思いますか?温度を維持したい飲み物自体が穴からこぼれて無くなってしまいます。高断熱だが気密化はしない家は、この底に穴の開いた魔法瓶と同じです。飲み物でも空気でも、どんなに断熱性が高くとも、そもそも穴が開いていては中身を維持できません。
3.うちはセルロースファイバーを使用しているので気密性能は高いはず。セルロースの調湿効果で、夏は湿気を吸い、冬は湿気を吐き出してくれるから、室内にビニールを敷き詰める必要がない。
これは自然素材系の工務店に多い主張です。セルロースファイバーの持つ調湿性能に多大な期待をしていることがうかがえます。確かに、セルロースファイバーは非常に調湿性能の高い断熱材です。そのため、関東以南では、多くの地域でセルロースファイバーの調湿効果によって内部結露を防ぐことが出来ます。しかし、セルロースファイバーの能力を過信してはいけません。セルロースファイバーは湿気を吸収すればするほど、断熱性能は低下するという物的特性を併せ持っております。そのため、真冬にセルロースファイバーに室内の湿気を吸収させてしまうと、結露はせずとも断熱性能は大きく低下するため、快適性と省エネ性能が減少してしまいます。ゆえに、たとえ断熱材がセルロースファイバーだったとしても、その調湿機能は構造木材が湿気で腐れを起こさないための保険として使用するのが正解です。そして調湿は、内装の木質化やエコカラットや塗り壁などの調湿建材にゆだねたほうが、より調湿効果を満喫できます。ということで、たとえ断熱材がセルロースファイバーであったとしても、住宅のロングライフと断熱性能の低下を防ぐためにも、室内の防湿層(気密)は設けることをお勧めします。
4.国の基準にも気密性能の基準は無くなっている。国が必要ないと言っているのだから、手間とコストをかけてまで高気密に拘る必要はない。
プレハブ系住宅を手掛ける大手ハウスメーカーや、パワービルダーと呼ばれる建売系、ローコスト系、そしてデザイン系の住宅を手掛けるハウスメーカーに多い主張です。着工棟数の多いハウスメーカーやローコスト住宅系の共通の課題は、職人と現場管理者の人手不足(技術不足)です。ローコスト系はそもそも単価が低いため、腕の良い職人を起用することが出来ません。そして、ハウスメーカーも半工業化したシステム(プレハブ方式)のため、現場の手間と技術が不要な点が最大のメリットです。今さら職人の施工レベルが必要性な気密工事は、プレハブ化と矛盾してしまうという問題を抱えています。いずれにせよ、気密性を高めるためには、職人と現場管理者の技術力が必要なため、手間とコストがかかります。気密性を上げることに後ろ向きなハウスメーカーが多いのは、気密性を上げること=コストアップと、プレハブシステムの見直しが必要であることが大きな要因といえます。
ではなぜ、ハウスメーカーはなぜ気密性の向上に前向きではないのでしょうか?
断熱性を上げることは、断熱材の厚みを厚くするか、断熱材の熱伝導率を下げることで容易に実現できます。そして、実測方法が確立されていないため、施工精度を図るような現場での実測検査というものがありません。(明らかな隙間があっても現場検査をパスしてしまうことがあるぐらい)そのため、計算値=断熱性というのが一般的な状況です。つまり、建材の設計仕様に関するのが断熱性能であり、現場で作る職人の技術力や施工精度を高める必要がないので、現場施工精度に自信のないハウスメーカーでも、断熱性能は比較的取り組みやすい性能といえます。
一方、断熱性能と比べて、気密性能を上げるためには現場管理者の知識と技術力、そして狂いの少ない高い施工精度を叩き出せる腕利きの職人が必要となります。そのため、高気密住宅を施工するためには、長い工期がかるし、技術力がある単価の高い職人を投入する必要があります。この点が、ローコスト住宅やプレハブ住宅(工場であらかた作って現場でプラモデルみたいに作る)を得意とするハウスメーカーでは対応が難しい理由です。
「気密性は高いほど良い派」は正しいのか?
最後に、「気密性能は高いほど良い派」の主張をまとめてみましょう。
1.気密性が高いと換気が計画通りに行えるので、いつでも空気がきれい。
2.気密性が高いと高効率の熱交換換気が利用できるので、更なる省エネが出来るし、吸気した空気が冷たくなるコールドドラフトも起きずに快適である。
3.防湿層を隙間なく施工できるので、内部結露を起こさない。だから構造木材が結露で腐らず長持ち。
4.気密性能が高いと隙間風が少なくなるので、省エネ。
5.気密性能が低いと特に床の温度が下がって不快感が高まるので、快適性を考えるなら気密性能はしっかりと担保すべき。
6.高い気密性能を確保するために、腕の良い職人の育成に力を入れている。制度の高い施工能力と職人の技術が自社の強みだ。
1.気密性が高いと換気が計画通りに行えるので、いつでも空気がきれい。
⑦(空気の鮮度)の観点からも気密性だけでは足りず、合わせて高性能な外気フィルターがついている必要があります。
2.気密性が高いと高効率の熱交換換気が利用できるので、更なる省エネが出来るし、吸気した空気が冷たくなるコールドドラフトも起きずに快適である。
④(換気の確保)の観点からも正しい主張です。熱交換換気を使用する場合は、一般的な三種換気(排気が機械で吸気は換気口があるだけ)と比較して圧力のかかり方が違うために、気密性能が低い住宅では、三種換気よりも大量に隙間からの漏気が発生します。漏気抑制の観点から、熱交換換気を使用する場合は、最低でもC値1.0c㎡/㎡以下が望ましいです。
3.防湿層を隙間なく施工できるので、内部結露を起こさない。だから構造木材が結露で腐らず長持ち。
③(内部結露の防止)の観点から正しい主張です。
4.気密性能が高いと隙間風が少なくなるので、省エネ。
①(省エネ)の観点から正しい主張です。
5.気密性能が低いと特に床の温度が下がって不快感が高まるので、快適性を考えるなら気密性能はしっかりと担保すべき。
①(省エネ)、②(断熱性能の維持)、⑤(上下温度差)、⑥(湿度管理)の観点から正しい主張です。
6.高い気密性能を確保するために、腕の良い職人の育成に力を入れている。制度の高い施工能力と職人の技術が自社の強みだ。
⑧(施工精度の確認)の観点から正しい主張です。一般的な住宅のC値は10~20前後であることが多く、建物全体の隙間を集めてみると1,000~2,000cm2(B4~B3用紙)ぐらいです。平成14年まで存在していた国のC値基準値は北海道でC値=2.0以下、その他の地域で5.0以下とされています。C値=2.0とは200c㎡(はがき1.3枚相当)、C値=5.0とは500cm2(はがき3.3枚相当)です。
ちなみに、ウェルネストホームの平均気密性能はC値=0.2です。つまり、100m2の住宅であれば20cm2(消しゴム1個相当)しか隙間の無い、最高峰の施工精度を保証しています。北海道基準の10倍もの超高気密性能を実現するために、ウェルネストホームでは、腕利きの職人を育成し、技術力向上のための研修を施しています。また、現場管理を行う現場監督の技術レベル向上のために、隔月で技術向上のための勉強会を2日間にわたって継続的に行っています。もちろん気密測定は中間と完成で2回必ず行うことで、高い施工精度を保証いたします。
高気密住宅のメリット
「息苦しい派」、「ソコソコ派」、「高気密派」と、いろいろな主張がありましたが、気密性能を確保するためには、高性能な建材、および高い職人の技術が必要となります。そのため、それぞれの施工技術力の差によって、主張するスタンスが異なっています。
気密性能は、家の快適性、光熱費などの省エネ性能、家の長寿命など、様々な機能に複合的に関係している極めて重要な性能です。個人的な印象を述べると、「息苦しい派」は伝統建築などで断熱気密以外では高い技術力を持っており、昔ながらの伝統技術を受け継いている老舗工務店としての強いこだわりを感じました。歴史的にも冷暖房設備およびエネルギーが安価で手に入るようになったのはここ100年ほどなので、伝統的な建築物からすると新参者の異質な存在なのかもしれません。
一方問題がありそうなのが、「ソコソコ派」です。断熱のみで気密を行わない場合の、内部結露や性能劣化に対する物理的な対策不足が散見されます。(建材メーカーの受け売り感が高い)こういったポジショントークに惑わされないためにも、正しい知識を身につける必要がありそうです。
最後に、もう一度高い気密性能が必要な理由、高気密化のメリットを記載いたします。どれも良い家を建てるのに欠かせない項目ですので、必ず忘れずに実施してください。
また、もし気密化を意図的に行わない場合、最低でも①~④については別途対策を講じること。そして快適性を捨てたくなければ、⑤~⑧対策も併せて行うことをお勧めいたします。因みに、①~⑧をすべてを別途対策するコストと比較すると、気密性を高めることが最もコストパフォーマンスが高くなることは、覚えておいても損はありません。
高気密住宅の8つのメリット
①漏気負荷を減らし省エネルギー化と室内温度環境の快適性向上を図る(ランニングコスト低減)
②壁体通気を抑制し、断熱性能の低下を防止する(ランニングコストの低減)
③壁体内結露を防止する(長寿命化)
④計画換気の性能保持(空気の鮮度維持)
⑤室内の上下温度差の解消(快適性の向上)
⑥安定した室内の湿度管理(快適性、健康性の向上)
⑦外気汚染物質の侵入防止(空気の鮮度維持、健康性の向上)
⑧施工精度の確認(ハウスメーカーの施工技術力の確認)
快適な住宅をつくるため、断熱性能とセットで欠かせないのが「気密性」です。 気密性とは、「どれだけ隙間のない家か」ということ。 「風通しの良い家の方が良いんじゃない?」とお考えの方もいらっしゃると思いますが、 すき間のある家は、温まりにくく、底冷えし、花粉や有害な科学物質が入 ...